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香揚
ああ、香るな
これが失意の香りなのか、
何もかもを投げ出してしまいたくなった人の香りだ
君はどんな香りがするのかな、
悲しみか、憎悪か、憤怒か、
楽観か、希望か、
深い深い眠りの中で、
わずかに香る
私の、私自身から漂う香りだ
それが現実の
本当の香りだと私は理解している
それでも見て見ぬふりをして、
この深い酩酊の中で、私は別の香りを探る
記憶に刻まれた臭いを辿って、
夢の中にある、私の気持ちを探して
気が付けば、たどり着くのは同じ現実
失意の中に眠る私が漂わせる
怠惰の香り
何かしなくちゃと漠然とした恐怖に襲われ
何もできないと諦めて
何でもいいから明日が来るのを待つ、
そんな怠惰な香りだ
それが、私を眠りに誘う。
静かにではない、心躍る眠りに。
仕事でやらかした時は寝るに限る




