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雨鏡
鏡が降ってくる。
小さい小さい、鏡が。
私はそこに映っているのに、
私はそれを見ることができない。
私には見えない鏡が、
たくさんの鏡が私を見ている。
一つ落ちては弾けて消えた。
十落ちては地面に刻んだ。
百落ちて、私は気が付く。
千も落ちれば奏でる足音。
鏡が奏でる、私の足音。
私が逃げる、鏡から逃げる。
透明な膜が私を守る。
冷たい鏡から、私を守る。
大きな鏡が膜に触れた。
弾ける音、
儚き音、
でも、どこか楽しげに刻んだ音。
鏡が降る。
歪んだ私を映して、空を覆う。
私はそれを見守っている。
私はそれを聞き惚れる。
暗い世界に輝く光が鏡を飾る。
一つ一つが私を飾る鏡
万落ちて、天が泣き
億と落ちて、恐怖を煽り
兆よ花よと落ちて、また詩になる。
私が映る、私の雨音。
私が歌う、あなたの詩
傘が雨を弾く音はどこか聞き心地がいい
ビニール傘に風情はなくとも、そこから見える景色は確かに魅力がある。
夜の街灯の下、雨の中で見る、傘越しのそらは、歪んで輝いて見えていました。