第1話
人類の約8割が男性の世の中。
少子化を止める為、世界の医療機関が発明した性転換装置【TSM 】
日本にもTSM が導入され、希望者を募っていっている。
瑞希「僕、女の子になるよ。」
敦士「は?」
オレは高校2年の蒼井敦士。
数十年前から日本の‥世界の男性人口が増えてきている。
原因は分からないが何故か世界各国で男の子しか産まれていない。
そこで日本の医療機関が性転換装置【TSM】を海外から取り寄せ、施設の大きい病院に設置し性転換‥つまり女性になってもいい人を募集している。
そして1ヶ月前‥
弟の瑞希がTSM を受けたいと言い出した。
敦士「本気で言ってるのかよ‥?」
瑞希「うん。色々優遇されてるみたいだし。」
敦士「確かにそうだけど‥」
女性とTSM を受けた人は国が生活支援をしてくれる。
家は確かに裕福な暮らしをしてる訳ではなかった。
敦士「‥親父は?」
瑞希「うん。ok貰ったよ。」
敦士「‥もしかして学費のこと気にしてんのか‥?」
瑞希「‥まぁ、それもあるかも。それに受けるなら早い方がいいかなって。」
TSM を受けられるのは15歳からで、瑞希は中学3年生で条件を充たしていた。
中学を卒業した後はオレと同じ高校に通う予定だったが‥
瑞希「卒業したら兄ちゃんと同じ高校いくよ。女子生徒も募集してたよね?」
敦士「まぁ、あるけど‥」
一応共学の学校ではあるけど、女子生徒は別館で授業を受けている。
そして人数も極少数だったはず。
別館を作ったのは男子生徒と問題にならないようにするため。
それだけ「女子」というのは希少な存在になっていた。
それから数日が過ぎ、瑞希は中学を卒業し春休みを利用して病院でTSMを受けに行った。
瑞希が病院に行ってから一週間経った。
入院してる訳ではないみたいだが、TSM を受けた人と面会することができないと病院のスタッフに言われた。
オレは少し心配になっていたが、春休み最終日に瑞希から連絡がきた。
「今日帰るね。」
そして夜中、オレは父と瑞希の帰りを待っていた。
父も事情を知っていて、一緒に待つことに。
「ピンポーン」と家のインターホンが鳴り、オレは急いで玄関に向かった。
扉を開けるとフードを深々と被った男が立っていた。
オレはてっきり瑞希とばかり思い込んでいて思わず、
敦士「え?‥誰?」
フードの人「あっ、ごめん。フード取るね。」
その男がフードを取ると髪の毛がパサッと降りてきた。
肩下ぐらいのキレイな髪を見て、
敦士「お、女の子‥?」
フードの人「ふふ、だから女の子になるって言ったじゃん。」
女の子はオレの反応を見て笑っていた。
敦士「瑞希‥か?」
瑞希「うん。ただいま。」
瑞希の声が少し高くなってると思った。
元々童顔だった瑞希は女の子になると可愛く見えて、思わずドキッとしてしまった。
瑞希は荷物を床に置くとリビングの椅子に腰掛けた。
瑞希「はぁ、疲れたぁ。久々の我が家♪」
敦士「ビックリしたよ。なんでフードを?」
瑞希「病院のスタッフの人に夜は危ないから顔隠しなさいって。」
敦士「‥そっか。」
親父も驚いた表情していたが、
親父「身体の方は大丈夫なのか‥?」
瑞希「うん。あ、そうだ。これ検査結果ね。」
瑞希は持って帰ってきた荷物から検査結果の紙を見せてきた。
身長、体重、視力、聴力など細かく表記されていた。
すると親父がボソッと、
親父「‥胸囲86か‥」
オレも検査結果を見せてもらい、
敦士「そっか。問題なさそうで良かった。」
瑞希「うん。」
検査結果を見てから親父は瑞希の胸をずっと見ていたような気がした。
敦士「そういや、名前どうするんだ?」
瑞希「名前は‥このままでいいよ。」
性別が変われば戸籍の名前を変更することができるみたいだが、瑞希はそのままにしとくようだ。
瑞希「名前変わったら呼びにくいでしょ?w」
敦士「たしかになw」
オレは時計を見て、
敦士「もうこんな時間か。明日入学式だし早く寝ろよ。」
瑞希「うん。」
瑞希は荷物を持って2階の自室へ戻った。
オレも親父も自室へ戻った。
オレはベットに横になり、さっきの親父の視線が気になっていた。
敦士(‥たしかに瑞希の胸膨らんでたけど‥あんなに見るか‥)
オレは携帯電話で「父親、娘の胸を見る」と検索してみた。
(娘の成長を感じ、親としての視線なので気にしなくていいです。)
などのコメントもあったが、
(娘を女として見ている。)
(今の世の中じゃ、近親相姦もありえるかも。)
敦士「き‥近親相姦‥。まさかな‥」
オレは少し気になり瑞希の部屋に様子を見にいくことにした。
敦士「瑞希。ちょっといいか?」
部屋のドアを開けると、ブラジャー姿の瑞希が着替えをしてた。
オレは咄嗟に顔を逸らした。
敦士「わ‥悪ぃ‥」
瑞希「え?どしたの?」
瑞希は恥ずかしがることもなく着替え続けた。
敦士(‥見てしまった‥)
初めて女の子の着替えを見てしまい心臓の鼓動が早くなった。
敦士(‥いやいや。身内で、しかも弟だぞ。なんでドキドキしてんだ‥)
少し冷静になり気持ちを落ち着けた。
瑞希「どしたん?」
敦士「え、あ‥いや。」
着替え終えた瑞希の顔を見て、
敦士(‥やっぱり可愛いな‥)
敦士「‥今日帰ってきて、いきなり明日から学校って‥大丈夫かなっと思って。」
瑞希「大丈夫だよ。多分‥」
敦士「なんかあれば言えよ。」
瑞希「うん。」
少し沈黙が続き何か話題を考えていると、
敦士「‥そういや、病院から持って帰ってきた荷物って何が入ってんだ?」
瑞希「えっと、女の子用の服と小物と‥あと下着とか。」
敦士「した‥‥そっか‥。」
瑞希「他にも何か必要なら連絡してこいって。ホント便利だよね♪」
敦士「ふーん。」
瑞希はベットに座って、
瑞希「はぁー、明日から高校生かぁ。」
敦士「そうだな。」
瑞希「明日、制服姿見せてあげるから楽しみにしててよ。」
敦士「お‥おう。」
オレは瑞希の部屋を出て自室に戻った。
瑞希は女の子になったことを楽しんでるようだった。
家の為にTSM を受けてくれてオレは罪悪感があったが少し救われた気がした。
翌日。
オレは7時前に起きると、台所で瑞希が朝食を作ってくれていた。
瑞希「おはよ。」
敦士「おはよ‥。」
親父は朝早く出勤したようだった。
いつからか家事はほとんど瑞希がやってくれるようになっていた。
悪いと思いながら任せていた。
敦士(‥今、2人きりか‥)
変なことを考え頭を横に振った。
瑞希「食べたら食器流し台ね。着替えてくる。」
敦士「ん‥ああ。」
瑞希は小走りで部屋に戻った。
寝ぼけていた頭を起こし、オレは朝ご飯を食べ始めた。
敦士(‥瑞希の制服姿か‥)
少し期待しながら朝ご飯を食べ終え歯磨きしてリビングで待っていた。
けど、なかなか部屋から出てこなくオレは瑞希の部屋の前に。
部屋のドア越しに、
敦士「瑞希ー。着れたか?」
瑞希「んと‥一応‥。」
敦士「入っていいか?」
瑞希「うん。」
オレはゆっくりドアを開けた。
チェックの膝上スカートに白のブラウス。瑞希の制服姿はオレの期待値を大きく超えていた。
敦士(‥可愛い)
瑞希「‥どうかな。」
敦士「いいんじゃないか‥。」
瑞希「う~ん‥。」
何故か納得できていない様子で、オレは瑞希の制服をよく見てみた。
敦士「瑞希。ブラウス、サイズ小さくない?」
瑞希は苦笑いしながら、
瑞希「はは‥やっぱり‥?女の子になったから肉付きが良くなったのかなぁ‥」
前の瑞希は確かに痩せている方だった。
敦士(‥けどウエストも太くないし‥)
敦士「瑞希。後ろ向いてみ。」
瑞希「うん。」
瑞希が後ろを向くとスカートがフワリと浮いた。
オレは瑞希の後ろ姿を見て思わず声が出た。
敦士「あ‥。」
ブラウスが背中にピッタリ張り付いて、ブラジャーの線が浮かんでいた。
瑞希「え?なに?」
瑞希は正面に向き直り、オレは言葉を濁しながら話した。
敦士「えっと、瑞希の言う通り肉付きがよくなってるかな‥その‥特に胸の辺りが‥」
オレは瑞希の胸元をチラリと見た。
ブラウスのボタンが今にも跳びそうなくらい胸が窮屈そうだった。
瑞希「‥そっか。」
すると瑞希は自分の胸を両手で鷲掴んだ。
瑞希「もう少し小さくならないかなぁ。」
敦士「‥なにやって‥」
瑞希「ん?胸押し潰してる。」
瑞希にとっては何気ない行動だが、オレにはエロく見えた。
当たり前だが押し潰した胸は元に戻っていた。
瑞希「ダメかぁ。」
敦士「い‥痛くないのかよ?」
瑞希「全然。やってみる?」
敦士「ばっ‥‥か。なに言ってんだよ‥」
瑞希「ははw。‥でもしょうがないかぁ。ちょっとキツいけどこのまま学校行こ。」
敦士「ああ。ブレザー着ればそんなに目立たないだろ。」
瑞希「なにが?」
敦士「い‥色々だよ。」
瑞希はようやく準備を終え、一緒に家を出た。
外の冷たい風に、
瑞希「うー‥スカート寒すぎ。」
敦士「逆に夏は快適なんじゃないか?」
瑞希「あ、そっか。」
敦士「風に気を付けろよ。」
瑞希「はーい。」
思っても無いこと言ってしまった‥本当は見たいのに‥瑞希のスカートの中を‥
強い春風を期待していたが吹くことはなく学校に着いてしまった。
敦士「場所、分かるか?」
瑞希「うん。じゃ行ってくる。」
瑞希は小走りで校舎の別館に向かった。
敦士「ふぅ‥。」
瑞希は女の子として入学、そしてオレも今日から3年生。
敦士(出来ればフォローしてやりたいけど、別館だしな‥)
すると後ろから、
男子生徒「蒼井ー。」
敦士「よぉ。沼男。」
大沼「誰が沼男だw。大沼だ。」
中学からの同級生、大沼和男。
通称:沼男
大沼「さっきの女の子、誰?」
敦士「‥ちょっと道を聞かれただけだよ。」
大沼「ふーん。新入生かな?」
敦士「多分ね。」
大沼「顔、見えなかったけど可愛かった?」
敦士「‥えっ‥うーん。まぁまぁ。」
身内だからというわけでなく‥
誰が見ても可愛いと言いたかった。
‥けど、周りに知られると面倒なので言わなかった。
大沼「今年は何人ぐらい入るかなぁ。去年は1人だったからなぁ。」
敦士「そうだったかな。」
校内の女子は少ないため、男子の大半は女子の人数を把握していた。
大沼「3年は3人、2年は1人、1年生は何人くるだろ。」
敦士「さぁ‥。」
大沼「そういやお前の弟も今年高校じゃなかった?」
敦士「え、‥ああ。」
大沼「どこの高校?」
敦士「‥えっと、どこだったかな‥」
オレは空を見上げて惚けた。
大沼「なんだそれw。」
オレと大沼は談笑しながら校舎に入った。
廊下の掲示板に新しいクラスの名簿が貼り出されていた。
大沼「お、また一緒だな。」
敦士「ああ。」
クラスに入りHR が始まった。
そのまま授業が開始され、1限目が終わった。
敦士(‥もう入学式終わってるな。瑞希大丈夫かな‥)
瑞希を心配しながらも淡々と時間が過ぎ昼休みになった。
大沼「はぁ、やっと昼休みか。」
敦士「長~‥。」
すると廊下の方が騒がしくなっていて教室の入り口で聞き覚えのある女の子の声が聞こえてきた。
「あの、蒼井敦士ってここのクラスですか‥?」
廊下にいた男子に聞いて、瑞希が顔を覗かせていた。
敦士「なっ‥!みず‥‥」
思わず名前を呼びそうになったがギリギリで止めた。
オレは慌てて瑞希に駆け寄った。
敦士「ど‥どしたんだ‥?」
瑞希「うん、先生に聞いてきた。朝渡すの忘れてて。はい、お弁当。」
敦士「あ‥おう。」
朝、バタバタしていてすっかり忘れていた。
瑞希「じゃあ僕‥‥じゃなくて私帰るから。4限目までだし。」
敦士「‥ああ。」
瑞希は周りの男子に軽く頭を下げて戻っていった。
すると周りの男子が一斉に問い詰めてきた。
「え?メチャ可愛くない?」
「誰?妹?」
すると大沼も、
大沼「どういう関係‥?‥弁当って‥」
敦士「‥まぁ、妹‥かな‥。」
男子「えー。うらやまー。」
男子「あんな可愛い子が妹に‥」
大沼「‥お前、妹いたっけ?」
大沼には家族構成がバレていたので小声で事実を伝えた。
大沼「え‥TSM ‥」
敦士「内緒な。説明するの面倒だから。」
大沼「お‥おう。」
教室に女の子が来たことでクラスが始終ザワザワとしていた。
オレは昼休みに貰った弁当を食べ、午後の授業を終えて家に帰った。
家に帰ると瑞希が制服姿でお茶を飲んでいた。
瑞希「あ、おかえり。」
敦士「‥なんでまだ制服着てんだ?」
瑞希「私もさっき帰ってきたとこ。3年と2年の先輩たちが歓迎会してくれて。」
敦士「そうなんだ。3年の女子達は授業なかったんだ。」
瑞希「そうそう。先生達も協力してくれて。」
敦士「そっか。」
オレは鞄を置いてリビングの椅子に座り一息ついた。
すると瑞希が少し申し訳なさそうに、
瑞希「‥あのさ、クラスに行ったの迷惑だった?」
敦士「え?なんで?」
瑞希「3年の先輩が、1人行くなんて危ない。獣ばかりなんだからって。」
敦士「ははっ。獣かw。まぁ、瑞希が戻った後にクラスのやつに色々言われたよ。」
瑞希「なんて‥?」
敦士「可愛い妹だねってさ。」
瑞希「えへへ、可愛いだなんて‥」
瑞希は嬉しそう照れていた。
敦士(‥可愛い‥。)
瑞希「そっか。酷いことでも言われたのこと思った。」
敦士「大丈夫だって。」
瑞希「あ、もうこんな時間かぁ。夕食の準備するね。」
敦士「ちゃんと着替えこいよ。」
瑞希「はーい。」
瑞希は自室に着替えに戻った。
敦士(‥なんとか初日は乗り切ったな‥)
瑞希が女の子として登校して馴染めるか心配だったけど、3年の女子達と仲良くなれて良かった。
瑞希がうちのクラスに来たのは想定外だったけど‥