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この世で一番軽い恋  作者: 神田柊子
エピローグ
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エピローグ

「セリーナが……、ついにこの日が……」

 ぶつぶつと呪文のように唱えている父ウォーレンの隣で、セリーナは上機嫌だ。

「お父様、結婚しても私は侯爵家にいるのですから」

「そうだな。セリーナの言う通りだ。……いや。しかし……」

 入場の合図があると、そんなウォーレンもしゃきっと背筋を伸ばした。

 父の腕に手をかけて、セリーナは教会の中に入る。

 王都で一番格式高い教会にはたくさんの人がいた。

 その中からセリーナは身近な顔を探す。

 先に結婚したナディアとグレゴリー。ふたりの近くには王太子妃の侍女になったキャシーとリリアン。それから、ケントやバーナードなど、グレゴリーの側近はアリスターの同僚でもある。

 魔塔からは師匠のグレタに加えて、主席のフランクも参列してくれている。

 フォレスト公爵家の席に座っているのは、義父のハワード。チャーリーとシャロンの間には二歳になる彼らの長男もいる。

 セリーナはウォーレンと一緒にゆっくり歩き、アリスターの元にたどり着いた。

「娘をよろしく頼む」

「もちろんです、義父上」

 セリーナはウォーレンから手を放し、前に向き直ったアリスターの腕を取った。

 父が母ベリンダの隣に座るのが見える。

 セリーナとアリスターは、並んで一歩を踏み出した。

 セリーナは隣を歩くアリスターをちらっと見上げる。

 白いタキシードが黒髪に映えている。一重まぶたのすっきりとした目元。黒い瞳はまっすぐ前を見ている。薄い唇は凛々しく結ばれていたけれど……。

「まだ浮くのは早いよ」

 セリーナに囁いた。

 身長が伸び、しっかりした身体には、出会ったときの華奢な様子はない。

 セリーナは顔を合わせるたびにときめいて浮いてしまうのだ。

 今も爪先立ちだった。

(これからは、毎日アリスター様と顔を合わせるのだわ。いえ、今までもほとんど毎日お会いしていたけれど、今日からは毎朝毎晩一緒なのよ。アリスター様が帰ってくる場所が我が家になるのよ。……はあ、どうしましょう。幸せすぎるわ……。私、大丈夫かしら……)

 心配したベリンダが、セリーナたちの寝室を吹き抜けに改造してくれた。おかげで天井に当たる心配は限りなく低くなった。

 そんなことを考えながらも、式は進む。

 ふたりは誓いの言葉を述べ、指輪を交換。結婚証明書にサインをして、最後はキスだ。

「それでは口づけを」

 神父がそう促し、セリーナたちは向かい合う。

 アリスターがセリーナのベールを持ち上げた。

 緊張している様子のアリスターが顔を近づける。

 目を閉じると、そっと唇が触れ合った。

「ここに新しい夫婦が誕生いたしました」

 神父の言葉に皆が拍手を贈ってくれた。

「セリーナ、好きだよ。愛してる」

「私も愛しています」

 そう答えると、アリスターは花が開くように笑った。

 セリーナはアリスターの笑顔が大好きだ。

 ずっとふわふわ浮いていたセリーナは、アリスターに飛びついた。

「アリスター様! 好きです! 大好き!」

 本格的に浮き上がったセリーナをアリスターが抱きかかえる。

 一生に一度の大事な日だから、浮いてもスカートが広がらないように、マーメイドラインのドレスを選んだのだ。浮いた瞬間にアリスターがセリーナを抱き上げる練習もばっちりだった。

(ナディアには「浮かない努力をしなさいよ」って呆れられたし、お師匠様には大爆笑されたけれど、練習して良かったわ!)

 頭上よりも高く浮いた状態でキスをする新郎新婦を皆が囃し立てた。

 セリーナの魔法や体質は、今はもう秘密ではなくなっている。

「教会は天井が高いから安心ですわね!」

 セリーナがそう言うと、アリスターは「気にするのはそこなの?」とため息をついた。

「まあ、でも邪魔が入らないのは良いね」

 ふふふ、とセリーナが笑うと、アリスターはぎゅっと強く抱きしめてくれたのだった。



終わり

最後までありがとうございました。

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