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10.ルシアナ、閃く(2)

 翌日の昼前に、ケイリー王子一行がルミナリア公爵邸に到着した。

 両親と姉とで馬車から降りてくる王子を出迎えると、中から現れた発光物にルシアナの目がチカチカとした。


 うひゃあ、これは凄いわ。


 少し癖のある髪はごく淡い金色。優しげな目元はルシアナとよく似た青リンゴ色で、上がった口角がいかにも人好きのする顔立ちだ。

 2つ年上だと聞いたが、背はルシアナとあまり変わらなさそうに見える。


「ケイリー王子、ようこそいらっしゃいました。家族一同歓迎致します。私はルミナリア公爵の息子サーマン・スタインフェルド、それから妻のオリビアに長女のベロニカ、そして次女のルシアナでございます」

「急な訪問にもかかわらず礼を言うよ」


 エクボがちょこんと出来るこの笑顔を見せられたら、ほとんどの人はコロリといってしまいそうね。

 キラキラとしたエフェクトでもかけたかのようなケイリーと握手を交わす父は、「滅相もない」と顔を綻ばせている。


「1、2週間ほど滞在したいと従者から連絡が来ましたが?」

「当初は通り道として一泊だけの予定だったけれど、折角の機会だからしばらく滞在させてもらうことにしたんだ。色んな場所に行き、多くを学んでくるようにと父も賛成してくれました」

「左様でございましたか。長旅でお疲れでしょうから、夕食までまずは、部屋でゆっくりとおくつろぎ下さい」


 よしっ!

 という事は夕食までは自由時間だ。

 街へ出掛けようとモニカに声をかけていると、部屋へと向かったはずのケイリーが横からひょこっと現れた。


「ケ、ケイリー様。どうなさいましたか? お部屋はあちらですが」

「ルシアナ嬢だよね? 君、変わった髪型をしているね。そんなに短くしている貴族の令嬢と会ったことないよ」


 ああ、この髪のことか、とルシアナはふっと息をついた。


「長く伸ばすだけなんてつまらないですわ」

「つまらない……?」

「ええ。この髪型の方がよりわたくしの魅力を引き出せるかと思ったので、自分で切りましたの」

「自分でだって?」


 目を丸く見開いたケイリーは、次の瞬間には腹を抱えてくすくすと笑いだした。


「あはは……き、君、変わってるね!」


 ルシアナの冷たい視線に気づいたケイリーが、涙を指でぬぐって笑いをおさめると、眉を八の字に下げた。


「ごめん。気を悪くさせちゃったかな。いや、侮辱してるわけじゃないんだよ。僕の周りにはそんな突拍子もない発想をする人が居なくてさ。うん、それにその髪型、とっても似合ってるよ」

「そうですか……。わたくし、街へ行く用がありますので、これで失礼しますわ。また夕食の時に」


 セルフカットなんて、まず貴族の娘がする事じゃないから笑うのも無理ないわよね。

 貧乏極まれり。って思われたかも。

 まあ実際、財政難にあることには違いないからいいわね。

 気を取り直して出掛けようとすると、ケイリーがまた横から出てきた。


「街へ出るのなら僕も一緒に行っていいかな? さっきは馬車の中から見ただけだから」

「先程着いたばかりでお疲れでしょうから、宜しければ後日ご案内しますが」

「いや、全然疲れてないよ。むしろ早く色んな所を見てまわりたくてウズウズしてるくらいさ」


 暗に「来てくれるな」と言ったつもりだったが通じなかったらしい。そんなウッキウキの瞳で見つめられてしまっては流石のルシアナも断りきれず、仕方なく首を縦に振った。


「分かりましたわ。という訳だから、護衛宜しくね」


 ルシアナの外出についてくる護衛騎士に声をかけると、「はっ!」と歯切れのいい返事が返ってきた。


「うわぉ! 公爵家の騎士もまた、すごい頭してるね。もしかしてこの人達もルシアナ嬢がカットしたの?」

「ええ、そうですわ」

「なんて言うか、先進的だね」

「お褒めの言葉だと受け取っておきますわ」

「もちろん」


 こうもにこにこと屈託のない笑顔を返されると、ルシアナも言い返す気にはなれず、言葉通りに受け取っておくことにした。


 煌びやかな格好をした美少年が街を歩いたらとんでもない事になるので、簡素な服装に、ちょっと暑いけどローブのフードを被ってもらってキラキラオーラを物理的に抑えてもらい、いざ、出発!

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