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横壁の調査結果

さっきから四方の壁を調べている。疲れた。

床と違って高さがある分、総面積が大きすぎる。


とりあえず、スマホのライトでそこそこ明るく照らせる範囲、地面から2メートルぐらいまでに限って調べた。どうせ何も見つからなければ上に登るしかないわけだしな。


分かったこと。


まず、グラついてる石はない。少なくとも地面から手が届く範囲にはない。腹が立つ。

見た目もしっかりミッチリ組んであるし、触れる限り触ってみたが、抜けてる石も動く石もなかった。残念だ。


それから壁の低い部分を一通り、力を込めて押したり蹴ったりもしてみた。実はグルっと回るタイプの扉だったりしないかなと。名前は分からないけど忍者屋敷とかにありそうなやつ。

ダメだろうとは思ったが、やはりそんな都合のいいギミックはなかった。


ここまでで約1時間が経過。時刻は9時近い。相当疲れてきた。喉もかわいた。そう言えばここはかなり乾燥している。冷たい石壁なのにまったく結露していない。

このまま脱出できないと餓死の前に……えと、何て言うんだ? 渇き死に? つまり脱水症状で死ぬかもしれん。


……。


怖い。

死ぬのかおれは。

こんな誰も読まない投稿が遺書になるのか?

一生彼女もできないまま死ぬのか?

ふざけんなふざけんなふざけんな!

いったいおれが何をしたってんだ。

クソクソクソクソクソクソ!

許さねえ。

脱出ゲームの主催者をぶん殴りたい。

なんでこんなゲームを始めたんだ。おれはこんなのやりたくねえよ。同意取れよ。ちゃんとルール説明しろよ。食い物飲み物ぐらいよこせよ。何なんだよちくしょう!


……。

…………。


主催者(仮)への憎しみでちょっと落ち着いた。

スマホの表示は21:12。バッテリは42%。ひどい状況だが、まだあきらめるには早い。死ぬにしても壁を登る悪あがきぐらいはしよう。ゲーム主催者を殴るためにも。


「そうだ……ゲームか」


ふと思った。

脱出ゲームならヒントがあるはずだ。


スマホのライトを点け直す。なるべく遠目にして、壁全体と、あと床も照らして、全体を眺める。何か文字が書かれていたり、石の並びが暗号になっていたりするかもしれないからな。


何もない。

何もないけど、違和感がある。


……。


そうか。壁の一面だけ質感が違う。


左側の壁。いや右も左もないんだが、用を足した床の隙間を正面としたときの左側だけ、他の三面より石がなめらかだ。ザラザラしてるけど大きな凹凸はない。レンガじゃないが、平らに加工した石だ。


他の壁とよく見比べる。

うん、こっちの三面は床と同じ造りだ。さまざまな大きさの不ぞろいな石を大量に積んで、隙間を何かで埋めてある。ちょっと日本の城の石垣みたいな感じにも見える。


石の種類は左側と同じかもしれない。暗くてよく分からないが灰色か何か薄い色だ。だがとにかく、左の壁よりゴツゴツしている。素人のおれが手や足を引っかけて登れそうなレベルの凹凸じゃあないが。


つまりどういうことだろう?


ここが地下室だとして、ゴツゴツしてるほうの床と壁で作った部屋がまずあって、後からザラザラした壁を追加した……?


じゃあ左のザラザラ壁は仕切り板みたいなもので、他の壁よりもろかったりしないか?


試してみよう。


……。

…………。


ダメだった。

蹴っても押してもビクともしない。

当然、ザラザラ壁とゴツゴツ壁の継ぎ目にも隙間は一切ない。


もう本当に疲れた。

もう9時半だよ。バッテリも39%……


「はあ……」


ザラザラの壁にもたれる。


「クソっ! 登れるかこんなもん!」


やけくそになって叫ぶ。

ちょっと響くが、反響音はおれに何も教えちゃくれない。別に何のスキルもないしな。


「クソっ、ふざけんな!!」


力なく、正面の壁を蹴る。


……。


…………?


一方の壁にもたれた状態で、反対側の壁に足が届いてる……?


…………!


脚をつっぱれば、このまま上にズリ上がれる……のか?

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