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死体

「ひっ!?」


 飛び起きる。ガイコツだ!


「熱ちっ!?」


 左手を焚き火に突っ込んでしまった。あわてて川に飛び込んで手を冷やす。良かった、大した火傷じゃない。服がガッツリ濡れてしまったが。


 川の中から遠目に確認する。やはりガイコツだ。それも動物じゃなくて人間の死体だ。上半身だけが見えている。これ、岩と岩の間にはさまってるのか?


 近寄って見てみる。まちがいない。おれがコケの生えた岩だと思っていたものは、コケの生えた岩にはさまれた、コケの生えた人体だったようだ。

 ガイコツの頭部、ドクロの下は、革鎧のようなものを着ているようだ。そこにもまばらにコケが生えている。それで茶色っぽい岩だと思ってしまったのか。


「この人も……ゲームの参加者なのか?」


 おれの知る限り、革鎧は現代人の服装ではない。この死体が何百年も前のものでない限り、おれと同じ【プレイヤー】の成れの果てだと考えるのが自然だ。


「いったい、いつからここに……?」


 死体が白骨化してコケまで生えるのに、何年かかるのだろう。森の中の生態系については何も分からないが、数日とか数週間でないことは確かだろう。


 仮に十年でこうなるとして、じゃあこの意味不明なデスゲームは十年以上続けられてるのか? そんなに長いこと警察や国から見つからないで済むものなのか?


 やっぱりここは、日本じゃないような気がする。どこか外国の私有地、たとえば大富豪の所有する無人島のような、治外法権がまかり通る場所なんじゃないか。 


 隔離された【ゲームフィールド】に大勢の【プレイヤー】が拉致されてきて、RPGの登場人物のように剣や鎧を持たされ【モンスター】と戦わされ、死んだら死んだでこうやって放置されているのでは。というか、おれがここに連れてこられたのも、こういう【ゲームオーバー】になったプレイヤーの補充要員としてなんじゃ……


 ぶるぶるっ


 急に寒気が止まらなくなった。おれたちは何に参加させられてるんだ。とんでもないスケールの犯罪だ。こんな危険な場所には、どこからも助けが来ないんじゃないか。下手すればいつかおれもこんな風に……。目の前の死体が他人に見えなくなってきた。


 おれは彼(彼女かもしれない)を埋葬してやることにした。

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