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DIY生活

 (なろう小説によると)その辺の草からロープを作るのは、慣れればどうということはないらしい。


1. 筋っぽい草を集める

2. 葉を落とし、茎の皮をむく

3. むいた皮を叩いたりこすったり水につけたりして、繊維だけ取り出す

4. 細かく裂く

5. 束にして端っこを結ぶ

6. 束を2つに分けて、それぞれを同じ方向にねじる

7. 2本を絡み合わせて逆方向にねじる


 基本的にはこれだけでいいらしい。繊維を絡ませながらねじっていけばいくらでも長くできるし、できた紐を3本あわせて三つ編みにすればより丈夫な縄になるという。


 まずはあれこれ草を集めた。種類はよく分からないから、森周辺と川岸に生えているもののうち長いやつやツルっぽいやつ、固そうなやつといろいろ採ってきた。草刈り鎌か高枝切りバサミがほしくなった。


 草をしごいて葉を落とす。軍手もほしい。


 皮をむく。うまくむけないやつは捨てた。


 むいた皮を軽く結んでみる。しなやかに結べないやつはロープに向かないらしい。半分以上を捨てた。


 残りを石でこすって水洗い。ヘラがほしいな。


 足の指にひっかけてねじる。おお、何か紐っぽくなってきた!

 継ぎ足しながらどんどんねじっていく。これでいいのか? 小説だと写真がないから正解が分からない。ちゃんとネットにつながるスマホがほしい……。


 途中から何となくコツがつかめてきた気がする。集めた植物の大半はダメだったが、いい感じの草が1種類あったので、それを使い尽くすまで紐を編んだ。1メートルほどの紐ができた。ピンと引っ張っても切れない。素人でも意外にできるもんだ。


 腹がへったが、興が乗ってきたので水だけ飲んで作業を続けた。また材料の草を採ってくる。さっきの感じだと、川岸にたくさん生えてる草がいちばん良さそうだった。大量に抜いてくる。


 葉を落とす。皮をむく。ほぐす。結ぶ。ねじる。つなげる。何度も繰り返す。ひたすら繰り返す。


 手を止めたときには、細い紐が5本と、紐を三つ編みして作った丈夫なロープが1本できあがっていた。どれも3メートル以上はある。


 疲れたし手も痛いが、すごい達成感だ。特にロープを作り上げたときは感動してしまった。これがあれば崖登りだってできそうだ。


 ……。

 …………。


 そもそも武器を作るためにロープを作ったんだった。つい調子に乗って、ロープ製作だけで1日が終わってしまった。何をやってるんだ俺は……。


 スマホを見ると時刻はもう18時前だ。日も沈みそうだ。せめて今あるもので何か武器を作れないだろうか。


 急いでなろう小説を読んでヒントを探す。


 ダメだった。ゆっくり探せば石斧の作り方とかも見つかるのかもしれないが、5作ほど大急ぎで目を通したやつはどれもこれも、ナイフを拾ったり、”魔物素材”のツノや牙を武器にしたり、果ては魔法で武器を召喚したりしていて何の参考にもならなかった。


 いや、魔物素材なら一応おれにもあったのか。昨日の獣の骨でも取っておけば良かったのかもしれない。でもおれ、解体とかできそうにないしな。そもそもナイフすら持ってないわけで。


 とにかく自分で考えるしかない。


 ええと、ロープならある。ロープで作る武器……ヌンチャク? いやあんなもんで戦える気がしない。カンフーの修行してる暇はない。


 石を結んで振り回すのはどうだ? 当たれば攻撃力はありそうだ。いけそうな気がする。RPGにもトゲトゲ鉄球を振り回す武器があるよな。モーニングスターとか言ったか。ああいう風に、棒の先に紐で結べば使いやすいんじゃないか?


 急いで川原で石を探す。森の周りで棒も拾う。適当に紐で結び合わせる。できた。振ってみよう。


 ぶん、すぽっ!


 遠心力が強すぎて石が棒からすっぽ抜けた。滑り止めがいるのか。


 しばらく考えて、細い枝を10本ぐらい、紐で縛って束ねることにした。これなら先端に紐を絡めやすいし、棒部分の強度も上がる。

 紐をまるまる1本使い、枝の束をグルグル巻きにして束ねていく。手で持つ部分は何重にも巻いて持ちやすくした。先端部分は、枝分かれした細い部分を絡め合うようにしながら固く巻く。そこにもう一本の紐で石を括り付けていく。

 石はなるべく球形に近い、それでいて紐が引っかかりやすそうなゴツゴツしたものを選んだ。直径は8センチぐらいか。紐が切れないようすっぽ抜けないよう、絡めたりねじったりしながら、石と棒の間を3往復ぶん結びつけた。


 完成だ。少なくともさっきの試作品よりずっと丈夫そうだ。棒が太すぎる気もするが、持てないことはない。試し振りする。


 ぶおんっ

「うわっ!」

 ガツッ!


 すごい遠心力だ。身体ごと引っ張られ、地面に浅く穴が空いた。

 思ったより勢いがついたが、手製の紐は切れなかった。すげえ。腕の筋肉は切れるかと思ったが。


「これ、かなりの威力なんじゃ……」


 川原に大きな岩があったので、その上に平べったい石を置き、今度はしっかり両手で構えたお手製モーニングスターを叩きつけてみた。


 当てるのが難しい。練習が必要だな。5回ほど振ってやっと直撃する。


 がちゃっ


「痛でっ!」


 置いた方の石が砕け散り、足に当たる。噛まれた部分に当たらなくて良かった。


 よく見ると、モーニングスター側の石も少し欠けてしまっていた。そりゃまあ鉄球じゃないもんな。石どうしぶつけりゃ割れるか。欠けたのは少しなのでまだ使えそうだ。

 そしてこの威力なら、昼間の獣がまた出ても一撃で倒せそうな気がする。むしろ自分に当たらないように気をつけないとやばいな。

 砕けた石の尖った破片を見て、明日は石槍も作ってみようかなと思った。


 ……。


 18:57、日は今にも沈もうとしている。ロープと武器ができた。一歩進展だ。


 だが晩飯を食っていない。


「あー、明るいうちに火起こししとけば良かった〜!!」


 今夜は冷えそうだ。

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