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実験動物になった気持ちだ

「え?」


 レベルが上がった? 今の殺戮で?


 ……。

 …………。


「は?」


 じゃあ何か? どう見てもただの野生動物としか思えなかったさっきのアレが実は、運営の管理する【モンスター】だったとでもいうのか? あいつら、そんなことまでしてくるのか?


 確認のため、通知メッセージをタップしてみる。すぐに『異世界ポータル』アプリが起動して、メニュー画面が表示された。


【ステータス】(New!)

【バトル】(New!)

アイテム(準備中)

マップ(準備中)

フレンド(準備中)

コレクション(準備中)


「うわぁ……。新機能がアンロックされてる……」


 やっぱさっきの獣撃退が、ゲーム内の戦闘行為として扱われたっぽいな。それで【バトル】機能が開放されたのか。ドン引きだ。


 先に、もともと見られていた【ステータス】の方を確認してみる。こっちにもNewマークがついてたからな。


名前:斎藤竹光

職業:無職

レベル:2

HP:49/100


「強くなってねえじゃん…」


 レベルの数字が変わっただけで、最大HPは100のままだ。というか残HPはむしろ下がっている。確かに噛まれて怪我はしたけども。

 ……え? じゃあさっきの”バトル”の一部始終を監視されてたのか? 獣が死んだのは体内センサーか何かで分かるとしても、おれが噛まれたかどうかなんか実際に見てなきゃ分かんないよな。


 怖くなって周囲を見渡す。誰もいない。見える範囲にはドローンも飛んでない。えっ、どうやって見てんの? スマホカメラでも無理だろ。監視衛星か? 獣の体内にカメラが埋め込まれてた?


 心底ゾッとする。まず動物虐待だろ。殺してしまったおれが言うのも何だが、組織的に調教した動物を野に放って人間にけしかけてるとしたらとんでもないやり口だ。”クリア”までにどれだけの命を犠牲にする気なんだ。

 しかも戦闘行為をカメラだか盗聴器だか、何らかの方法で監視している。Wi-Fiのこともあるし、いったい金いくらかかってんだ。ひょっとしたら大富豪がリアルタイム殺戮ショーとして観賞してる可能性すらある。おれたち人間も、けしかけられた動物も、娯楽コンテンツ扱いか。こんなことを何度も繰り返させる気なのか?


 恐怖と怒りで震えながらスマホを操作し、【バトル】の方を確認する。画面が切り替わる。


【バトル履歴】

コマンド(準備中)

サーチ(準備中)


「うえっ、やっぱRPGの戦闘って感じだな……」


 準備中になっている【コマンド】は、戦闘中に魔法やスキル、アイテムを使う機能だろうか。でも動物とターン制バトルなんかできるのか? それともリアルタイムで猛獣から逃げまどいながらスマホ操作させられるのか? いずれにせよろくでもないな。

 もう一つの【サーチ】は何だか分からないな。戦闘中に何かを探すのか? あるいは敵キャラそのものを探す機能か? もしそうなら危険回避に使えるかもしれないな。いや、運営がそんな性格いいはずないか。どうせろくでもない機能だ。

 唯一選べる【バトル履歴】を押してみる。画面が変わる。


・ダークラクーンが襲いかかってきた。

・ダークラクーンを倒した。斎藤竹光はレベル2になった。


 これだけ表示されている。特に操作できる項目はない。戦闘ログみたいなものか。

 ダークラクーンというのがさっきの獣の名前なのか。実在する動物なんだろうか。ダークは闇とか暗いって意味だろう。確かに黒っぽかった。ラクーンは分からんが、トータルで見ると何となく中二病くさい名前だと感じる。あの動物本来の名前じゃなくて、設定上のモンスター名じゃないかと思う。まさか品種改良までしてないだろうな……


 とにかく、さっきのを殺したことでレベルが上ったことはこれで確定だ。動物大量虐殺ゲームだな。

 レベルが上がると何が変わるのかはっきりしないが、やっぱ攻撃力とか魔力みたいな隠しパラメータがあって、その値が上昇してるのか? ゲーム設定上の攻撃力が上がってもさっきみたいなリアルバトルで役に立つとも思えないが。

 あるいは、こうやって少しずつアプリの機能が開放されること自体がレベルアップの効果なのかもしれん。どちらにしても、攻略のためにはどんどん動物を殺していく必要があるわけで、実に嫌な気分だ。人でなしの運営め。


 あえて良い面を探すのなら、これが”モンスター”を倒す設定のゲームであれば、人間どうし殺し合うことまでは強要されない可能性が出てきたところか。昨日襲ってきた女プレイヤーも、あくまでモンスター討伐用に剣や鎧を支給されていただけってことなら、少しは救いがある。正直あいつには二度と会いたくないが、他のプレイヤーとなら協力できるかもしれない。


 ……。


 モンスター役の動物は、また襲ってくるに違いない。積極的に戦いたくはないが、集団で来られたらやばい。夜の襲撃も怖い。

 今日は食料の確保よりも先に、武器を用意したほうがいいような気がする。石はいくつか持ち歩くとして、できれば刃物、無理でもせめて槍みたいなものがあると勝率が上がりそうだ。動物相手なら落とし穴みたいなものも使えるな。


 まずはなろうでサバイバル作品読んで、武器や罠の作り方を調べるか。


 ……。

 …………。


 見つけた。


 ……。

 …………。


 これ面白いな。


 ……。

 …………。

 ………………。


 あ、やばい、時間が、飛んでいる。


 とり急ぎ、草からロープを作ろうと思う。作り方がわりと詳しく載ってたから。ロープがあれば、石槍や石斧作りに役立つらしい。あと、薪をたくさん運んだり、ベルト代わりにしたり、罠を作ったりと、ロープはサバイバルの基本らしい。知らなかったぜ。

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