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寝床を求めて

 来た道を戻る。少し薄暗い。時刻は18:17、もう夜だ。ここが日本でなければ大して意味のない目安だが。


 今夜はスタート地点、つまり塔と回廊に戻るつもりだ。あそこには屋根と壁がある。雨風や他のプレイヤーから身を守りやすいはずだ。もう一度あそこで一夜を明かそうと思う。


 川から塔までは平坦な土地が続く。目印も分かりやすい。見通しがいいから誰か近づいてきてもすぐ分かるだろう。黙々と歩きながら考える。


 おれがあの塔(の横の隙間)に連れてこられたのは何か理由があると思う。やはり、見渡す限りの広い荒野の中にポツンと高い塔がそびえ立つのは意味ありげだ。見落としているだけで、ゲーム(仮)攻略のヒントがあったのかもしれない。あるいは、川ではなく山や森に向かえばアイテムや道、ゲームの案内役が見つかったりするのかもしれない。


 とにかく今のままではただのサバイバル生活だ。そういうジャンルのゲームもあるとは聞いたことがあるが、それにしても何か競争要素があるはずだ。貴重な金属資源を奪い合うとか、仲間を集めて集落を作るとか。このまま一人で魚を捕って食うだけじゃクリアにいたれないだろう。無理やり参加させられたゲームの攻略なんかどうでもいいが、何とかして脱出はしたい。そのためにはゲームのルールを知る必要があるだろう。


 幸い今は食料もある。一晩屋根の下で寝て体力を養い、朝食も食べてから、塔の再調査なり別方面への偵察なりをするのがいいはずだ。昼過ぎまで調べて結果が出なけりゃまた川に戻れば最低限の食料と水は手に入る。これを毎日繰り返せば徐々に情報が集まってくる。


 気になるとすれば他のプレイヤー、特に塔に血の跡をつけて脱出し、おれより先に宝箱の中身を持ってったやつだな。あいつはまだ近くにいるかもしれない。ふいに出逢った時にどうするべきだろう。話しかけて情報を引き出せるといいが、信用していいか分からない。むこうが最初から敵対的だと困るな。食い物を交渉材料にすることはできるだろうか。


 考えているうちに塔の近くまで来た。だいぶ暗くなったな。入り口は南側(暫定)だから反対側だな。左に回り込む。


「!?」


 回廊の窓から明かりが見える。誰かいる!


 やばいやばい、噂をすれば影、別プレイヤーかもしれない。どうしよう。まだ覚悟ができてない。


 塔までは10メートルぐらいある。早めに気づいて良かった。どうするにせよ先手を打てる。よく観察する。明かりにゆらぎがあるから、おそらく建物内で火を焚いてるな。東(暫定)側の窓近くだ。あっちも火種を持ってるのか。マッチとかだったら分けてほしい。 とにかく、焚き火をしてるなら、今夜は回廊で寝るつもりなんだろう。考えることは同じだな。


 人影は見えない。回廊の窓は高めの位置にあるので、座るか寝るかしているなら見えないだろうな。さてどうするか。


 やはり交渉というか、情報交換ぐらいはしたほうがいい気がする。もしいい人だったら、あるいは火種や食料を持ってるなら、仲間にしてほしい気もする。まあそのへんは相手の態度や人数しだいだな。慎重に近づいてみよう。


 回廊の外壁、漏れ出る明かりから少し遠い窓を目指して忍び足で進む。中をのぞこうとして気づく。スマホの光が邪魔だな。切ろ…うぴゃ

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