回廊の調査
降りる前に未練がましく屋根を回る。【前】側にコンビニの袋が残ってたので一応回収してきた。食い物はもうないが、袋だけでも何かに使えるかもしれない。
……。
…………。
降りたよ。降りた。塔を取りまくロの字の建物の屋根から、いちかばちか飛び降りた。
痛てえよ。痛い。足を傷める心配はしてたが足じゃなくて手が痛い。屋根につかまって飛び降りる時に尖った石で切ったよ。左手から血が出てるよ。
でもまあそんな大した怪我じゃない。ばい菌入らなきゃたぶん平気。水もないからペロペロ舐めてきれいにする。ちくしょう、おれは犬か。鉄くせえ。でも死ななくて良かった……
気を取り直して今飛び降りた建物を見る。やっぱ屋根と同じ石でできてる。レンガ積みよりは石垣に近い感じの不ぞろいな石の壁だ。窓っぽい四角い穴がちょこちょこ空いてる。ガラスとかはない、ただの穴だ。ここから入れそう。建物の高さはやっぱ5メートルってとこか。
窓の一つにそっと顔を近づけて斜めからのぞき込む。薄暗い。これ照明とかないな。完全に石だけの建築物って感じだ。新しくもなさそうだし、遺跡の類なのか?
いくつか窓を替えて覗く。中は石の廊下って感じ。ところどころ柱がある。当然石柱だ。塔の周りをグルっと廊下が囲んでるんだな。回廊とでも呼ぶか。
しばらく偵察したが、回廊には誰もいないようだ。壁の厚みは1メートル近くありそうだ。窓は小さくて50センチないぐらいの正方形。高さはおれの肩ぐらいあるから、怪我してる今はあまり登りたくない。ほかに入口はないかぐるっと回る。
あった。アーチというのか、半円状に形成された入口らしき穴が見つかった。やはりただの穴だ。門扉なんかはない。方角的にここはたぶん建物の【前】側だな。
迷ったが、入らないわけにもいかない。他に今できることがない。そっと足を踏み入れる。
閉じ込められてた空間にそっくりだ。広いのと柱があるのと、窓という光源があるところが違うが、建材は同じだ。入り口が崩れてまた閉じ込められたりしないだろうなと、つい早足になる。
回廊は部屋には区切られていないようだ。ずっと一本道で、柱以外は特に何もない。内側つまり塔の側には窓も扉もない。塔を取り囲んでるだけで繋がってないんだな。おかしな建築だ。塔とは少し壁の質感が違ったし、回廊は塔の入り口をふさぐために後から建てたんだろうか。
一周してしまった。誰もいないし何もなかった。おれと同じ脱出者が待ってるか、せめてゲームの攻略ヒントでもあるかと思ったんだが。拍子抜けだ。
塔にも入れそうにないし、ここを出たら周囲には荒野しかない。もう少し探してみよう。内側の壁には何もなかったから、回廊の外側、窓際の壁を重点的に、柱も含めてチェックしてみる。
「……!」
入り口の反対、【後ろ】側の窓のすぐ下にそれはあった。逆光のせいでさっきは気づかなかったようだ。
「これって、宝箱、だよな……」