表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/49

隙間その2の調査

 また這いつくばった姿勢で、【後ろ】側の隙間に顔を出してのぞき込む。


 うん、暗くて何も見えない。そりゃそうだわな。


「おーい、誰かいますかー?」


 呼びかけてみる。


「おーい! おーい!」


 声を大きくするも、反応はない。音もしない。誰もいないんじゃなかろうか。時間のムダだったか。


 立ち上がろうとして顔を上げる。


「……ッ!」


 塔の壁に、うっすら血の跡があった。いや、血液かどうかは分からない。しかし縦にこすれたような形で、赤茶色の汚れが、隙間の中から屋根付近まで続いているようだ。


……。

…………。


 これは血の跡だ。背中から出血したんだ。まちがいない。同じ形の隙間から脱出したおれだから分かる。


「もう一人、反対側に閉じ込められてたんだ……」


 衝撃の事実。この意味不明な謎の空間、塔の壁際にできた2箇所の隙間に、それぞれ1人ずつ、人間が閉じ込められていたのだ。


 血の跡をよく見る。おれと同じ方法で、背中を塔の外壁につけたままずり上がってきたのだろう。それほど多い出血じゃない。おそらくかなり登ってから服がすり切れたのだろう。命の危険まではないんじゃないか。

 そして、乾いている。俺より先に屋根に上がったのだろう。それが何日か前なのか、ついさっきなのかは分からないが。屋根の上には誰もいないから、いま下の建物や塔の中にいるのかもしれない。あるいは荒野を歩き去ったのかも。


 なんだか複雑な気持ちだ。何者かにさらわれて閉じ込められた【仲間】がもう一人いることになる。心強いような気もするが、2人の人間が同様に閉じ込められていたいたのなら、今の状況があきらかに人為的なものだということを意味している。つまり脱出ゲームだかサバイバルゲームだかの【主催者】がいるってことに他ならない。注意して行動しなくてはならない。


 そして、このお仲間さんは、ゲーム(仮)においておれより先んじている。彼、または彼女が敵対的なプレイヤーだった場合、あるいは先着一名しかクリアできないケームの場合、スタートダッシュの遅れがおれの不利につながるということも考えられる。


 急いだほうがいいかもしれない。


……。


 それから30分ほどかけて、建物の周囲のようすを見て回った。【右後ろ】の地面が、他より少し屋根に近い感じがする。しかも比較的やわらかそうな砂地だ。

 ちょうど屋根の角につかみやすそうな出っ張った石があるから、両手で屋根にしがみつきながら足を下にぶら下がれば、おれの身長分は高さが稼げる。そこから落ちれば、地上までは3〜4メートルぐらいだと思う。これなら何とかなるんじゃないか。少なくとも、隙間を登ったときよりは危険が少ないはずだ。


 時刻は15:40。バッテリーは54パーセント。腹がへった。日も陰り始めてきた。しかたない、やるか……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ