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生きてる!

 わずかに風を感じる……星空が見える!


 おれは登りきった! 奇跡だ!


 ……。


 現状を報告しよう。


 今、夜中の3時。


 結論から言うと、無事に壁の一番上まで登れた。何メートルあったかは分からないが、まちがいなく10メートルよりは長かったと思う。途中一回落ちそうになって、ポケットの中の自転車の鍵を落とした。スマホだけは何とか死守した。高さと不安に泣きそうになりながら登った。というか最後のほうは黙って泣きながら登ってた。


 登り切る直前に、そこまでずっと1メートルぐらいの幅があった空間が急に狭くなった。前方の壁がせり出す形になってて、背中側、つまり頭上にだけ40センチぐらいの隙間が残ってた。恐る恐るそこから腕を伸ばしたら(へり)に手が届いたから、渾身の力を込めて身体を引っ張り上げた。ここまでほぼ脚の力だけで登ってきたから、まだ腕は疲れきってなくて何とか持ち上げられた。


 登った先は平らな石の上で、けっこう広そうに見えた。最初は、建物の上の階に着いたのかと思ったが、仰向けになって休んでたら星が見えることに気づいた。石でできた屋根に寝ていたらしい。つまり外に出られたんだと分かった。脱出、成功だ。


「やった…!」


 小さな声でつぶやくと、今登ってきた穴から遠ざかるように少し転がった。また落ちたらしゃれにならない。


 がさっ


 そこに何かあって、ぶつかった。ライトを向けてみた。白いレジ袋だった。何か入ってる。起き上がって、中を見た。焼きそばパンとサラダ巻きとペットボトルのオレンジジュースだった。おれが昨日、いやおとといの夜コンビニで買って、朝飯にしようと枕元に置いてたやつと同じメニューだ。おれの財布に入ってるレシートの明細と同じメニューだ。どう考えても俺が買ったやつだ。


 なんでこんなとこに落ちてるのか? そこを考えるより空腹が勝った。食った。飲んだ。


 酢飯はちょっと固くなってたけど旨かった。オレンジジュースの水分と糖分が沁みた。考えてみりゃ24時間以上ぶりの飯だった。


 落ち着いた。命があることに喜びの念がわいてきた。改めて達成感を覚えた。


 寝っ転がって、頰に微風を感じて、スマホを取り出して、これを書いた。


 さすがに限界だ。少し、寝る……

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