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第三百八十五話 極小の世界 ~検討 後編~

 病院に到着すると、翔一が速やかに探知を行う。その結果、高藤は『毒性の何かを服用させられた』らしい事がわかった。それは能力に依るもので有り、能力は『物質をナノレベルまで小さくする事』で有った。


 但し、高藤は遼太郎によって昏睡と結界の魔法をかけられている。通常ならば、手出しが出来ないはず。それに関しても、探知が威力を発揮した。


 結界を壊したのは、有った物を存在ごと打ち消す『事象の改変』とも言うべき能力。そして、病院内に侵入したのはコピーの能力者が有する『インビジブルサイト』の能力。そして、『事象の改変』の能力者に関しては、未明に起きた八王子市内の事件にも関わっている。


 これ等はペスカの再現魔法により、事実である事を示していた。

 

 ほぼ同時刻に、冬也とアルキエルが刑事に協力して、ワープ能力者である菅谷を追っていた。菅谷を捕らえる事自体は、そんなに時間がかからなかった。それより重要なのは、アルキエルが示した『能力の封印』であろう。


 そして、八王子警察署内において、菅谷と久木の能力が封印される。その後、両者の尋問が始まる。しかし、両者共に『命じられた犯行を行った』と証言しており、黒幕に繋がる様な重要な情報は知らない様子だった。


「今の所、情報はこんなだが。誰か他に有るか?」

「先輩。現状で黒幕は何人位なんですかね? 久木と菅谷は別として、高藤を殺した奴、洗脳、コピー、後は事象の改変、他に居そうですか?」

「これは俺の予想だが、遠くからこっちを監視してる奴がいるはずだ」

「それで東郷さんは、工藤君に周囲を見張らせてたんですね?」

「そうだ。佐藤、署内に黒幕側のスパイが紛れ込んでる可能性は有る」

「そうですね」

「ただ、翔一や俺が狙われた時の状況を考えると、監視してる奴が存在する可能性は高い」

「考えられなくはないけど、全く持って厄介ですね」

「遼太郎さん。町田での通信障害は、どう考えますか?」

「空。それも、能力の一種だと考えても良いかも知れない」

「そうすると、情報を混乱させる能力者もあっちには居るって事? こっちにはリンリンさんが居るのに?」

「空殿。拙者は完璧ではござらんぞ」

「何を言ってんすか。リンリンさん程のハッカーが世界の何処に居るんすか?」

「居るかも知れませんぞ。それに、情報を制御する様な能力者が居たとしたら、拙者では太刀打ちできませんぞ」

「雄二、リンリンさん。それよりも、黒幕側がこれから何を仕掛けて来るのかが問題じゃないですか?」

「あぁ、その通りだ翔一。奴等は簡単に高藤を殺す連中だ。今後、もっとヤバい事を仕掛けて来てもおかしくねぇ」

「空ちゃん。そっちは、何も無かったか? 翔一の次に狙われるのは、空ちゃんかも知れないぞ」

「ええ、特に問題は」

「安西殿、周囲にもおかしな気配は感じませんでした」


 ここに集まる多くが表情を強張らせていた。部屋には独特の緊張感が漂っていた。


 インビジブルサイトだけでも、かなり危険な能力だ。それ以外にも危険な能力を持つ連中が存在している。その連中が何かを起こそうとしたら、東京どころか日本、いや世界全体を揺るがす大事件になるかも知れない。


 そう考えると震えが止まらない。誰もがそう感じていたはず、ただ二柱を覗いては。


「おぅ、ペスカぁ」

「わかってるよ」


 アルキエルは睨みつける様な視線を送る。その視線を受けて、ペスカは少し溜息をつく。それから徐に、ペスカは口を開いた。


「あのさ。ちょっと聞いて欲しいんだけど」

「なんだ? 言ってみろペスカ」

「パパリンはさ、もう感付いていると思うけどさ。東京に糞ロメが潜んでるよ」

「あぁ? なんだと!」

「お兄ちゃん、声が大きい! お兄ちゃんもわかってたんじゃないの?」

「いや……。でも、あり得んのか?」

「まぁね。一度こっちに来た時に分霊体を産みだしていた可能性は有るよ」

「良いじゃねぇか、冬也ぁ。分霊体だろうが本体だろうが、どの道残りはここに潜んでる野郎だけだ」

「本体って? あの野郎の本体は、ペスカが消滅させたんじゃねぇのか?」

「あれか? 残り滓みてぇな野郎の事か? あれが本体だとでも思ったか?」

「いや、だってよ。なぁ、ペスカ?」

「その辺りの真相はさぁ。アルキエルが反フィアーナ派の神格を、みんな壊しちゃったしね」

「死人に口無しって事か」

「言いたい事はわかるけど、使い方が間違ってるからね。お兄ちゃん」

「人でもねぇな。滓だが、一応は神だしな」


 それまで深刻そうな表情を浮かべていた面々は、ペスカ達の話しを聞いて一様に驚いた表情に変わっていた。それもそのはず、概要的な話しは聞いていたけれど詳しい情報を知らされていない。それに、分霊体だの神だの言われても、それこそ現実感がまるでない。


「あのさ、冬也君。いや、ペスカちゃんに聞いた方が良いかな? 詳しい説明をしてくれないか?」

「良いよ、佐藤さん。みんなもそんな顔をしてるしね」


 そして、ペスカは自分が転生した経緯から、冬也を連れて異世界に言った事。それからの戦いを伝えた。


 何せ異世界での出来事だ、話し半分に聞いた方が現実的だ。それが、どれだけリアルであってもだ。

 但し、その話しを証明する様な存在がここには居る。圧倒的な威圧感を持つ男が。誰も敢えて触れようとしなかった。ただ、アルキエルという男の存在感は、人間と同じとは思えない。


「と言うと、そもそも能力者が東京に産まれたのは、異世界の悪神が原因って事かい?」

「そうだよ。それと、糞ロメは未だ東京に潜んでる」

「潜んでるって何処に?」

「それがわかれば、今頃は全て解決してるよ」

「君の言う所によると、能力者が存在する限り悪神の力が増すって事だね?」

「そうだよ」

「仮に、悪神を倒したとして能力が消える事は有るのかな?」

「無いよ。糞ロメの因子は魂魄に融合しているからね」

「それなら、その因子を悪神が強引に奪ったとしたら?」

「間違いなく、全員死ぬね」

「これは……。参ったね」

「能力者の問題じゃないよ。ロイスマリアで起きた出来事が、地球で起きないとは限らないんだから」


 その言葉は、一同を青ざめさせた。ロイスマリアという異世界を混沌に陥れ、多くの生物を犠牲にしたのと同じ存在が、この地球で同様の事を企んでもおかしくはない。

 世界中からどの位の命が失われる事になるだろう。それは、第三次世界大戦など比較にならない大惨事である。


「まぁ、今は黒幕連中を止める事だね」

「あぁ……。それもそうかも知れないね」


 考えれば考える程に、恐ろしい考えは浮かんで来る。しかし、それだけに囚われていては、現実に直面した数々の問題は一向に片付けられない。そうして、話し合いは続く。そして、その裏ではまた別の話し合いが行われていた。


 ☆ ☆ ☆


「そうか。高藤は始末出来たか。それで、誰にも見られていないだろうな?」

「見られてはいないし、探知の対策もした。今頃は偽の情報に踊らされてるだろう」

「偽の情報とは?」

「結界を壊したのと病院に侵入したのは、複数という様に見せかけた」

「ほう。案外、こういうチープなトリックの方が嵌りやすい。所で、通信の支配はどうなっている?」

「まだ時間がかかる。林の存在が厄介だ」

「林か。俺が殺して来ようか?」

「それは止めておけ。あそこにはもっと厄介な奴が居る」

「東郷遼太郎か?」

「いや、その子供達だ。高尾の事件を解決したのは、東郷の子供達だ」

「通信の支配が駄目なら、次の手か?」

「そうだな。例のブツは完成したか?」

「あぁ。末端が抑えている能力者が完成させた」

「それなら、先にそれをばら撒こう」

「ようやく、遠藤の本領発揮って事か」

「所で、その遠藤は今どうしてる?」

「インビジブルで作った亜空間に隠してる。そこなら警察や特霊局の連中にもばれないはずだ」

「どの道、これが終わったら遠藤も用済みだ。使い倒せ」

「わかったボス」

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