【5話】交わされる握手
「思いっきり泣いたら、何だかスッキリしたよ」
鵜飼はウンと背伸びをした。と、ここで、キーンコーン……とチャイムが鳴り響いた。
「あー、記憶がグチャグチャだから、これからどうすればいいのか分からないよ……」
鵜飼は頭を掻き乱した。
「クラス替えの発表は、もう終わった時期だよね……。僕の教室って何処だったかな……。職員室に訊きに行こうかな……」
「その必要はありませんよ」
神崎はポケットからメモ帳を出し、あるページを開いた。
「ええと、あなたの教室は南の校舎です。そこの下駄箱から入って三階に上がり、最奥にある教室が、あなたの教室ですよ」
言うと、神崎はメモ帳をポケットにしまった。
「ありがとう。用意周到だね」
「どういたしまして」
鵜飼と神崎は、微笑みを交わした。
「そういえば、さっきの返事してなかったよ」
鵜飼は神崎に向かって右手を差しだした。
「僕、君たちと共に自殺者を救うよ」
鵜飼は、しっかりとした表情を作った。
神崎は二、三度頷いた後、鵜飼と握手した。
「えっと、僕は救出者になるってことだよね?」
「はい。あなたとの契約は、本日、学校が終わってからにしようかと思います。その時に仲間も紹介させていただきます」
「仲間……」
仲間、というキーワードを自分で口にして、鵜飼はハッとした。
「ね、ねえ、もしかして……」
鵜飼の先を読むよう、神崎は笑顔で頷いた。
「あなたの言わんとしていることは分かります。二階堂さんも居ますよ?」
「やっぱりそうなんだ!」
鵜飼は思わず笑みを溢した。
「性格は相変わらずですけどね。夢と違って、こちらの世界ではまだ高校一年生ですが」
「へえ……。楽しみだな……。どんな感じなんだろう……」
鵜飼が胸を躍らせていると、神崎が「あの……」と声をかけてきた。
「もうすぐ一年生の入学式と合同の始業式が始まりますよ? 教室に行かなくてもいいんですか?」
「そっか……」
鵜飼は照れ隠しに頬を掻き、神崎はクスッと笑う。