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夢の中の誘拐事件  作者: 灰色坊や
第4章∶先の未来へ
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【3話】 はじめまして


「さて……」


 鵜飼(うかい)は下駄箱ではなく、校舎裏に歩いていった。人気の無い校舎裏には、セーラー服を着た少女が居た。ぱっと見、中学生ぐらい。小柄で、あどけなさが抜けていない愛らしい顔立ち。短髪をワックスか何かで所々跳ね上げて、ボーイッシュにセットしている。


「鵜飼……さん……。いつ私に気付きました?」


 神崎(かんざき)チカは、とても驚いた様子だった。


「学校に着いたとき、かな?」


「……そうですか」


 神崎は驚愕の表情を静かに和らげてから、納得するように頷いた。


「もしかして僕に対するお詫びのつもり? だったら逆効果だよ」


「お詫び……とは?」


「この夢のことだよ」


 神崎は難しい顔をした後、アッと声を上げた。


「もしかして鵜飼さん、ここが夢の中だと思ってます?」


 鵜飼にはその言葉の意味が解らなかった。


「……どういうこと?」


「失礼しました。そういえば、まだお伝えしていませんでしたね」


 すると、神崎は鵜飼に一礼した。


「直接申し上げるのは、()()()()()()になります。私は厚生労働省の自殺(じさつ)予防(よぼう)総合(そうごう)対策(たいさく)センターに勤める神崎チカという者です」


 神崎は咳払いを挟んだ。


「鵜飼直道(なおみち)さん、あなたは選ばれたのです。自殺者を救う、厚生労働省の戦士に」


「……ごめん……どういうこと?」


「まあそうなるでしょう。実はあなたは、中学を卒業して、高校に上がったりはしていないんですよ。ええと、こう言っても……やはりまだ分かりませんよね?」


「あ、うん……ごめん……」


 ふむ、と神崎は唸った。


「では最初からお話しします。鵜飼さんは数年前から『厚生労働省が手を組むべき人物』の一人にリストアップされていました。そして中学三年生になる前日……鵜飼さんは、夢の中で自殺者を救う戦士に抜擢されたのです」


「中学三年生になる前日?」


「ええ。その日に、私は鵜飼さんにある仕掛けをしたんです」


「……仕掛け?」


 神崎は頷いて、


「『家族や友人が自殺する』という夢を見るように、私が仕掛けたのです」


 神崎は一旦、間を空けた。


「つまり、鵜飼穂苗(ほなえ)が自殺して、藤井(ふじい)一輝(かずき)も自殺し、あなたが見郷(みごう)紫乃(しの)を救いに行った経緯まで、全て夢だったのですよ。ここまでは、ご理解いただけましたか?」


 頭の整理がつかず、鵜飼は混乱した。

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