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夢の中の誘拐事件  作者: 灰色坊や
第3章∶全ての真実
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【10話】 行かなきゃ


 結局、鵜飼うかいは学校に行くこともなく、昼過ぎまで寝ていた。


 ボーッとする頭を抱えながら、鵜飼は何気なくテレビを点けた。映し出された画面に傷はあるが、何ら支障なく観ることができた。

 テレビでは丁度、緊急ニュースが流れていた。女性キャスターが緊迫した表情でニュースを告げている。


『えー、朝から今も尚、謎の黒いフィールドと、謎の集団が現場の高校を取り囲んでいる状態です! それでは空からの模様をお送りします! ご覧下さい!』


 パッと上空のヘリコプターからの映像に切り替わった。見覚えのある学校の校舎が、上空から映し出されている。鵜飼が通う高校だった。


「……何だ?」


 鵜飼の高校は、ドーム状の薄黒い光に覆われている。光の内側には、大勢の人が徘徊している。小さくてよく見えない……そう思った矢先、映像が光の内側で徘徊する人にズームインされた。ズームインされて明らかになった人々の正体を見て、鵜飼はギョッとした。


「何で……」


 光の内部で徘徊する人々は、全員が中肉中背の男で、上下にジャージを着ている。薄黒い光によって、ジャージの色は正確に判別できない。


 ジャージ姿の男たちは、奇妙な覆面を被っている。その覆面には、目や鼻や口の部分に穴が無く、まるでフェンシングの選手がするマスクのような形をしている。


 覆面には無数の横線が引いてあり、それらは数センチほどの隙間が空いている。その隙間ごとに色が塗られているようだが、薄黒い光によって、全ての色が正確には判別できない。


「誘拐犯……」


 鵜飼は生唾を飲んだ。誘拐犯の姿が映し出された次に、ドーム状の薄黒い光の前で立ち往生するスーツ姿の軍団にカメラは向けられた。その中に、一瞬だけ神崎チカの姿を確認できた。そしてカメラはズームアウトし、再び上空から写し出された学校の映像へと切り替わる。


 最前線にスーツ姿の軍団、そこから少し離れた外側でパトカーが待機、そこから更に外側にマスコミが大勢居る状態だ。


『ご覧下さい! 現場の高校は謎のフィールドに囲まれており、その中で謎の集団がぞろぞろと! 校舎に残された全校生徒たちの安否は不明! 特殊部隊が対策を練りだしている模様です! 彼らは一体何者で――』


 ヘリコプターに乗った男性キャスターが、必死でレポートを続けている。


「何なんだ……何であいつらが……」


 画面越しに誘拐犯を見て、鵜飼は思い出していた。


 始まりから、終わりまでの、全てのことを。


「何なんだ……」


 見れば見るほど嫌な記憶だけが蘇る。だからこれ以上、彼らを見たくない、関わりたくない。しかしそれ以上に、もう何も失いたくない。


『学校で、ずっと待ってるから……』


 見郷みごうを……自分の大切な繋がりを……もう失いたくない。


「見郷……学校に居るんだよね……」


 自分がどうこうできるわけではないが、鵜飼は寝間着姿のまま、学校に向かった。

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