【27話】終局へ
「今夜で最後……か」
藤井はカフェオレの缶を放った。缶は綺麗な放物線を描いて、ゴミ箱にゴールイン。直後、キーンコーン……と学校のチャイムが鳴った。五時間目の予鈴だ。
「見郷さん、あれから来ないな。入院してるのか?」
「分からないよ……。僕、あれから会ってないし……」
鵜飼はゴミ箱にカフェオレの缶を捨てた。
「会えるはずもないよ……」
「……そうか……」
藤井は極めて小さな声で言った。
「神崎チカとはどうなんだ?」
「そういえば神崎とも会ってないよ……。連絡先も知らないし……。これが最後だっていうのに、どうしたのかな……」
鵜飼は右手人差し指に巻かれた黒いテープに目をやった。
そのテープこそ、全てが始まった証だ。始まっていなければ、失うものこそ無かったが、得られるものも無かった。
「もう、後戻りはできないよ……」
鵜飼は右手をギュッと握った。
「鵜飼……」
藤井は鵜飼の真正面に立ち、目と目をしっかりと合わせた。
「何が正しいのか、俺にはまだ分からない。だが、これだけは言っておく」
藤井は、一旦間を空けた。
「勝てよ」
「……うん」
鵜飼は目を瞑り、ゆっくりと頷いた。
【第2章 終わり】