表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の中の誘拐事件  作者: 灰色坊や
第2章∶蘇りの代償
25/73

【3話】同じ境遇の仲間と出会う


 校門を出てすぐそこに、黒のリムジンが一台止めてあった。外から車内が見えないよう、窓が黒塗りになっている。


 後部座席のドアの前には、スーツを着た女性が立っている。


(あの人は一体……)


 女性の年齢はパッと見で二十代、若しくは十代後半。


 身長一七〇センチの鵜飼うかいよりやや低い程度。女性にしては背が高い。体型がスラッとしているため、スーツがとても似合っている。


 銀縁の眼鏡を掛けていて、ポニーテールの先端が腰まで届いている。


「どうも、お待ちしており……ました……」


 ぎこちなく丁寧に言うと、メガネを掛けたスーツ姿の女性は後部座席のドアを開けた。


「お先にどうぞ」神崎かんざきは車の方に手を添えた。


「うん……」


 スーツ姿の女性を横目に、鵜飼は車内に入った。その時、女性の右手人差し指に、黒いテープが巻かれているのを確認していた。


(僕と同じ……なのかな?)


 リムジンの座席は向き合う形で配置されており、鵜飼はトランク側の座席に座った。座ったとき、フワッと高級感のある座り心地を感じた。


 神崎は鵜飼の隣に座り、スーツ姿の女性は向かい側の座席に座った。


「重要なお話しの前に、私の部下を紹介します」神崎は、向かいの座席に座るスーツ姿の女性に目をやった。「二階堂にかいどうさん、自己紹介をして下さい」


「は、はい!」


 二階堂と呼ばれた女性は、慌ただしく眼鏡のズレを直した。


「私は二階堂優奈(ゆうな)です、ヨロシク。ええと、う……う……何でしたっけ?」


 向かいの座席で、二階堂優奈は斜め上に視線を泳がせた。


「僕は鵜飼、だけど……」


「そ、そうでした!」二階堂は顔を青ざめながら、両手で頭を抱えた。「忘れててごめんなさい!」


「う、うん……。別にいいけど……」


 二階堂はホッと息を吐くと、力尽きるように背中から後ろへもたれた。


(何だか騒がしい人だな……。神崎とは真逆かも……。ていうか二階堂さんの声、どこかで聞いたことあるような……)


 気のせいかな、と片付けようとした時、鵜飼はハッと思い出した。


「ねえ。二階堂さんってさ、もしかして、僕の家に訪問したことない?」


「私が鵜飼クンの家に訪問……ですか?」


 二階堂は中指で眼鏡を押し上げながら、視線を斜め上に泳がせた。


「二階堂さん、あの日の朝のことですよ、きっと」


 神崎がそう言うと、二階堂はアッと声を上げた。


「思い出しました思い出しました! 鵜飼クンが警察署に行く前の……ですよね?」


「うん……。やっぱりあの時の人?」


「は、はい! ご、ごめんなさい! そのことも忘れてました!」


 二階堂は顔を青ざめながら、両手で頭を抱えた。


「別に謝らなくてもいいよ? 全然気にしてないから」


「そう……ですか?」


 二階堂はホッと息を吐き、力尽きるように背中から後ろへもたれる。


「騒がしくてすみませんね、鵜飼さん」神崎は声をヒソヒソさせて、「二階堂さん、まだ新米なもので」


「ううん、気にしてないよ」鵜飼も声をヒッソリさせる。「あともうちょっとだけ落ち着いた方がいいとは思うけどね……」


「ええ、そこが問題なんですよ……。新米とはいえもう二十歳なので、年相応に落ち着いてほしいのですが……」


 やれやれといった感じで、神崎はため息を吐いた。


「あのさ、神崎。二階堂さんも、僕と同じなの? 右手人差し指に黒いテープが巻かれてるようだけど……」


「ええ。彼女も夢の中で自殺者を救うことができ、あなたと同じ境遇の人です。詳細はいずれ、彼女の方から聞くことになると思いますよ?」


「……そうなんだ……」


 同じ境遇ということは、彼女にも自殺した家族が居るのだろうか。


「まあ、余談はここまでにしておきますか」


 神崎は声のボリュームを戻した。


「では鵜飼さん、本題です。心の準備はよろしいですね?」


「あ、うん……」


 鵜飼は顔を引き締め、緊張感を高めた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ