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夢の中の誘拐事件  作者: 灰色坊や
第1章∶動き出す希望と、目覚める本能
19/73

【19話】誘拐犯側の勝利条件とは


 誰も居ない図書室にて。

 鵜飼うかい神崎かんざきは机を挟んで向かい合うかたちで座っていた。


「こんな時間にすみません、鵜飼さん。授業もあるでしょうに」


 向かいで神崎が申し訳なさそうに言った。


「ううん、気にしなくていいよ。神崎も忙しいんでしょ? それに、穂苗ほなえが蘇るためなら、授業の一つや二つぐらいどうでもいいし」


「そうですか」神崎はホッとした様子を見せた。「では早速、説明させていただきます」


 神崎は向かいの席でしっかりとした表情を作った。


「今日は先日に説明できなかった、夢の中の戦闘についてお話しさせて頂きます。誘拐犯との戦闘について、です」


「誘拐犯……」鵜飼は深く思い出して、「誘拐犯ってさ、上下青のジャージ姿で、虹色の変な覆面を被った男……であってるよね?」


「はい。今からその誘拐犯との戦闘について簡単な説明をします」


「やっぱりアイツが誘拐犯か……」


「ええ。あなたがその誘拐犯に勝利する条件は、誘拐犯を倒すことです。逆に誘拐犯があなたに勝利する条件は、誘拐した人の魂が入った『黒塗りの棺桶』を、何らかの武器か手刀で破壊することです」


「黒塗りの棺桶……。あっ、そういえば誘拐犯の近くに置かれてたかも……」


「はい。誘拐犯側は、それを破壊すれば勝利となるのです」


 ん? と鵜飼は声を漏らした。


「じゃあ、僕が来る前にあの棺桶を壊してれば、誘拐犯はわざわざ僕と戦闘する必要無いんじゃないの? この前の誘拐犯は何でそうしなかったの?」


「それは『救出者である鵜飼さんのような人物が接触してくるまで、誘拐犯は動けない』というルールがあるからです」


 が、と神崎は繋げて、


「その代償として、誘拐犯側には『救出者を倒さなくとも、棺桶を破壊すれば、如何なる場合でも勝利できる』という強みがあります」


「……なるほど……そういえば……」


 虹色の覆面を被った男(誘拐犯)は鵜飼が触れるまで動かなかったこと。


 鵜飼より棺桶を優先にしていたこと。


 そして、誘拐犯が手刀で棺桶を破壊した後、強制的に夢から覚めたこと。


 以上のことを、神崎の説明を聞いてから、鵜飼は順に思い出していた。


「全部そういう決まりがあってのことだったんだね……」


 それらのことを、鵜飼は脳に深く刻んでおいた。


「では次の説明を――と言いたいところですが、次の説明は実際に体験した方が早いと思うので……」


 神崎は向かいから身を乗り出してきた。

 神崎はそのまま四つん這いで机の上を進み、吐息がかかるほど鵜飼と顔を近づけてきた。

 フワッと、女の子独特の良い匂いが、鵜飼のもとに届く。


「な、何?」


 鵜飼は体を仰け反らして顔を離した。


「ちょっと失礼しますね?」


 神崎は鵜飼の額にポンと軽い掌底を放った。

 静かな勢いとは裏腹に、鵜飼の額にはガツンとハンマーで叩かれたような強い衝撃がきた。


 脳を揺るがすほどの衝撃に鵜飼はグラッとし、そのまま椅子から床に倒れ落ちてしまった。




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