【18話】友人としてキミに問う
「カフェオレって美味しいの? 僕、飲んだこと無いんだけど」
「飲めば病み付きになるぞ、きっと」
「へえ……。じゃあ僕も飲んでみようかな……」
鵜飼が自販機に金を食わせようとした、その時、
「休み時間ですか?」
と、女子が声をかけてきた。鵜飼は反射的に素早く、藤井は缶を片手にゆっくりと、それぞれのタイミングで振り向いた。
その先には、セーラー服を着た小柄な女子……神崎チカがちょこんと立っていた。神崎の所々跳ね上がったボーイッシュな短髪は、まるで接着剤で固定されているかのように、いつ見ても同じカタチだ。
「あ、神崎……」
「どうも、鵜飼さん」
神崎は鵜飼に対して軽く一礼し、藤井の方にも笑顔で会釈。
「前に来たときも思いましたが、やはり最近の学校は設備が整っていますね。広いし、また迷子になりそうでしたよ」
関心するように校舎を眺める神崎。その様はまるで、便利な料理道具に関心する姑のようだ。
「僕らが通う高校なんて、最近じゃ普通の方でしょ?」
「いえ。私が通う高校は、もっと狭くて殺伐としてます」
「はは……殺伐って……」
どう返せばいいか分からず、鵜飼は苦笑いしかできなかった。
「神崎チカさん、一つ訊きたいことがあるんだが、いいかな?」
言いつつ藤井はカフェオレの缶を捨てた後、神崎に歩み寄った。
「何でしょうか?」
神崎は首を少し傾げた。
「単刀直入に訊く。鵜飼穂苗は本当に蘇るのか?」
「ちょ、ちょっと藤井?」
けんか腰に感じたので、鵜飼は止めようとしたが、
「大丈夫。余計なことは言わないから」
な? と藤井が後押ししてきたので、鵜飼は引っ込まざるを得なかった。
「さて、神崎チカさん。もう一度訊くよ? 鵜飼穂苗は本当に蘇るのか?」
「ええ、確実に」
神崎は即答した。自信に満ちた表情で。
しばらく、藤井は真剣な顔つきで、神崎は微笑みながら、何かを探り合うように見つめ合っていた。
「分かった、信じてみよう。だがもしそれが嘘だと分かったら、俺は君を許さないよ。鵜飼の友人としてね」
「大丈夫ですよ。どのみちあなたは――」
キーンコーン……と学校のチャイムが鳴り響き、神崎の言葉が遮られた。
「どうやらここまでのようだな。機会があれば、またお話ししよう、神崎チカさん」
藤井は校舎の方へ歩いていった。
「じゃあ、僕も行くよ。またね、神崎」
「待って下さい鵜飼さん。これからあなたには、説明しておきたいことがあるので」