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#6.魔王の軍隊


 シスター=カノンに案内されたのは、このギルド跡地の地下だった。

 地下には孤児院の生活スペースがあり、そこで、子供たちは暮らしているようだ。

 一部の子供たちがすでに食事の支度をしている。

 そこに、カノンと、レオが合流して、食事を作る。


 戸惑っていた子供たちは、2人が合流したことにより、てきぱきと食事の準備をこなしているようだ。

 そうして運ばれてきた料理は、簡単で質素ではあるが、広場で見た食材よりマシだった。


 カノンはシスターらしく、食事の祈りを唱える。

 皆も心を合わせて祈る。


 そうしてお祈りが終わると、一斉に。

 「「「いただきます。」」」

 そういって、皆が食事を食べ始めた。


 本当に美味しい、夕食のひと時だった。

 「美味しいですね。この食材。広場のゴミの山のような食事とは大違いです。」


 「はい。今日は、ケンさんが来たので特別です。普段は私たちも・・・・・。」

 「も、申し訳ない、こんなにしてもらって。」

 僕は謝るが。


 「ええ。良いのです。貴方様からの寄付があれば、しばらくは暮らせます。私は、一時期、6大国の一つ【サンフィレノ永世中立国】の修道院でシスターの修業をしていましたから。魔物に襲われてすぐ、修道院の院長先生に手紙を届けて、物資などは、そっちの転送陣で送ってもらえるようにしているのです。

 金貨があれば、かなりの食材や物資が手に入ります。」


 そうだ。しまった。僕も僅かな食べ物と、いくらかのお金しかもっていなかった。

 ここまで廃れた町である。


 お金の流れ、流通も麻痺している。

 そしたら、お金ではなく、物を寄付すればよかったかなと思ったが、シスターの【転送陣】という言葉に救われた。

確かに転送陣があれば、いろいろな物資が届く。金貨のおかげで、しばらくは安泰だろう。

 その後は、しばらくここの子供たちとの会話を楽しんだ。

 本当にたくましい子供達だった。


 「ここにいる子供たちのご両親の多くが、かつて、ここのテイマーギルドの上位ランクのテイマーたちでした。」

 シスター=カノンの言葉には重みがある。

 こうして、魔物に襲われて2年間、この孤児院を守り抜いたシスター=カノンに敬意を表したい。


 食事の後は皆で食器を片付け、しばらく団らんの時は続いた。

 本当に楽しく遊ぶ子供達。


 だが・・・・・。

 ドーン!!


 大きな音が鳴った。


 「「きゃー!!」」

 「へ?何?何?」

 「怖いよぅ」


 子供たちの悲鳴が上がる。


 僕は急いで、音が鳴ったほうに向かう。

 「皆、ここを動いてはいけない。じっとしていろ!!」


 僕は一目散に地下室から、駆け上がり、建物の1階部分へ。


 「待ってください、ケンさん、私も行きます。」

 「ケン兄ちゃん。僕も。」


 カノンとレオが僕についてくる。

 その、カノンと、レオに呼応したのか、一度は悲鳴を上げた子供たちも、一斉についてくる。

 さすがは、レオが言っていた、【フィルドランド少年盗賊団】と言われる子供達だ。


 戻りなさい!!と言いたかったが、それができなかった。

 先ほどは警察官という立場で、一気に駆け上がったが、階段を駆け上がるうちに、僕自身が、知らない異世界で不安も駆られた。

 さらには、子供たちの勇気に心を打たれた。ここは彼らの居場所だ。一緒に守って戦おうという勇気を尊重しなければならない。


 だがそれでも所詮は子供とシスターだ。

 階段を駆け上がるとすぐに立ち止まり。


 「ここで、待ってろ、合図を出すまで、出てきてはいけないぞ。」

 僕はそう子供たちに言い聞かせ、彼らは頷く。


 僕は呼吸を整え、音がした箇所と思われる場所に突入する。

 そして、辺りを、確認するまでもなかった。


 骸骨で剣を持った魔物騎士。それが数体。

 そして、彼らの隊長と思われる、甲冑を被り鎧などの重装備で、目の部分から赤い光を放つ人型の魔物が勢ぞろいしていた。


 「ほう、やっぱりここにいたか。昼間、金持ちのような、妙な格好をした男がうろついていたからこっそり見張っていたのだが・・・・。」

 なんと、僕が原因でマークされていたというのか。ごくっと喉を鳴らす。


 「隊長、あいつ、うざいですね。」

 「うざいですね。」

 「始末しますか?」

 配下の骸骨騎士が声をそろえて言う。


 「ああ。マジでうざい。俺らの奴隷町民が、俺らの主、いや、俺達よりも、よさそうな装備をしているところがマジでうぜぇ。」

 隊長の魔物が言う。そして、彼らは剣を抜く。


 「お前ら、奴を殺せ。そして、あいつの荷物は全て取り上げろ。」

 隊長の号令の下、骸骨騎士たちが一斉に動き出す。


 「それはどうかな。」

 僕は低い声で言って、剣を抜いた。

 僕は全てを察した。

 奴らこそ魔王の軍勢。レオ達を、そして、この王都をあんな風にさせた、本物の悪い奴らだ。遠慮はいらない。本気で叩き切る。


 僕は剣に力を込めて、襲い掛かってきた骸骨騎士に剣を振る。

 勢いよく、骸骨騎士は倒れて、そのまま、魔石と、落とし物だけになる。


 「なっ、なにっ?」

 隊長の魔物は一瞬は戸惑ったが。


 「次は誰だ。速くかかって来いよ。」

 僕は魔物たちに合図を出す。


 「ええい。全員かかれ。とっとと始末しろ!!」

 僕は剣を振る。

 そして、魔法陣を作り出し、一気に【ファイアーボール】を連発する。

 魔力をさらに込める。


 次々と倒れていく骸骨騎士たち。


 「悪いな。悪い奴らには加減というものを、僕は知らないんだ。」

 隊長の魔物は後ずさりするが。


 「ヒーッ、ヒッ、ヒーッ。おいお前!!そこを動くんじゃねえぞ。さもなければ・・・・・・。」

 しまった。


 骸骨騎士の一人が、カノンと、レオを含む子供たち全員を、隊長の魔物の前に連れ出す。


 「おお、でかした。良く見つけたな。」

 隊長の魔物は甲高い声にかわる。


 「そして、隊長、こいつ、なかなかの大玉ですぜ。清楚でピッチピッチな肌、そしてよく見ると、とんでもない大きな胸のふくらみ、シュッとした、プリプリなお尻、献上すれば最高ですぜ。」

 骸骨の魔物はカノンの髪の毛を引っ張る。


 「きゃーぁぁぁ。」

 カノンの悲鳴。


 「おお、こいつは上等だぜ。こんな奴がまだ、王都にいたとはな・・・・・。」

 隊長の魔物の、ニヤニヤした声が響く。


 「おい、お前、こんな上等な女を匿っていたとはな。お前はもう、死刑確定だ。そして、そいつを殺し次第、この女は奴隷に献上する。おーっと、動くなよ。動いたら、ガキどもの命もねえからな。」


 骸骨騎士たちは一斉に僕に向かって突撃してくる。

 子供とカノンが人質に取られた。迂闊に動けない。


 ピュン!!


 弓矢が一斉に飛んできた。

 弓矢はわずかではあるが、骸骨騎士たちにダメージを与え、彼らを若干ひるませた。


 「ケ、ケン兄ちゃん、僕たちは大丈夫。僕たちも戦える。なんたって、フィルドランド少年盗賊団だから。それに、俺たちもシスターは、渡さない。」

 レオ、そして、子供たちは震えながら立っていた。その言葉も緊張しているようだが、声には力がある。

 勇気ある少年盗賊団だ。

 その言葉に救われ、僕は魔法陣を一気に発動させる。

 複数の【ファイアーボール】を発動させ、一気に敵を他をしていく。


 残りは、隊長の魔物だけ。

 ふと、新しい魔法陣が、思いつく。


 「おのれ。よくも、俺の部下たちを。許せん。」

 「それはこっちのセリフだ。」


 僕は一気に新しい魔法を発動させる。

 光属性の攻撃魔法。【ライトニング】だ。


 「ライトニング」


 光の中に隊長の魔物は包まれる。


 「ぬ、ぬ、ぬわーっ。」


 隊長の魔物も倒れ、魔石と、魔物の落とし物だけが、そこに残る。


 僕は辺りを見回す。

 どうやら、ここを襲撃してきた魔物は居なくなったようだ。


 僕はカノンの元に駆け寄る。


 「だ、大丈夫ですか?シスター。」

 「は、はい。」

 シスターはポカーンとしている。


 「お前たちも、本当によくやったぞ。」

 僕はレオ率いる少年盗賊団にも、一人一人握手をする。


 「あ、ありがとう。僕たち、勝ったんだよな。」

 レオも何が起きたのかわからない状況。


 「ああ。勿論だ、勝ったよ。」

 僕は少年たちにそう言った。


 「ヨッシャ―!やったー!!」

 「わーい。」

 と、飛び上がる子供たちもいるが。

 レオと一部の少年盗賊団は、少し勝った実感がわかないのか、キョトンとしている。

 そのような表情をしている子供たちは、身長が大きければ大きい子供たちほど、そういう表情をしている。


 そう、実際には、そういう表情をしている子供たちの方が正しい。

 「ただ、喜ぶのはここまでだな。敵にここを知られた以上、逃げなければならない。」


 僕は喜んでいる子供達の方の眼を見て言う。

 だが、しかし、レオは首を振っていた。


 「ち、違うんだ。確かに逃げなければいけないんだけど。その、それ以上に、ケン兄ちゃんが凄すぎて・・・・・・。」

 レオの言葉に疑問が浮かび上がる。


 「は、はい。その、本当に何とお礼を言っていいのやら、あの魔物が現れたとき、私たちは終わりだと思いました。あなたが、剣を振った瞬間、私たちは希望が湧いてきたのです。だから、レオ達も、戦ってくれました。」

 シスターがそう言う。そして、シスター=カノンはさらに続けた。


 「単刀直入に申し上げます。ケンさん、貴方は一体?」

 シスターからの質問が来る。


 「ああ。ただの、旅のものです。ここに来る前は、違う大陸で、警察、うーん、警備兵をやってました。」

 さすがに異世界から来たとは言えない。そういうことにしておきたい。


 「そうですか。その。鑑定を受けたことはありますか?」

 カノンの言葉に、首を横に振った。


 「そうしたら、少し待っていただいてもよろしいですか?」

 僕は首を縦に振る。







ご覧いただき、ありがとうございました。

まだまだ序盤なので、どうなるかお楽しみに。

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