#4.少年盗賊団
レオに案内された場所は、これまで見たことがないくらい一番大きな建物だった。
おそらく、城以外で、王都でいちばん大きい建物だろうか。
少なくとも、この周辺で見た建物の中では一番大きい。
だが、目立つのは大きさだけで。
屋根がはがれている、壁には穴が開いる、レンガが崩れている。
少なくとも、もともとの建物の大きさはこの倍以上あったのだろう。
崩れている箇所がたくさんある。
レオはまだ使えそうな場所の建物の扉を開ける。
当然、扉も相当大きいが、子供の力で、余裕で開けるほど扉の固定部分が緩んでいる。
そして、その使えそうな場所の建物も、雨風を最低限防げそうな機能しか残っていないようだ。
「みんな、だっだいまー。」
レオの元気なあいさつがある。すると。
「うぉーレオ。お帰り。」
「レオ、どうだった?」
たくさんの子供たちの声が聞こえる。
「へへっぇー。大収穫だぜー!!」
レオは子供たちに、僕が渡した、リンゴと、金貨3枚を見せる。
「「「うっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉー!!」」」
地響きが鳴るような子供たちの声。
「レオすげぇぇぇー。」
「さっすが、俺たちのおやぶんだぁぁぁ。」
親分という言葉に反応する。
確かに、ここにいる子供たちの中で、一番身長が高いのはレオだった。
そうなると、レオが一番最年長になるということだ。
だが。
「レオ。リンゴはともかく、その金貨は一体どうしたの?」
大人の、アルトの声が響く。
そのアルトの声にレオは勿論、子供たちも黙る。
レオは急に涙目になる。
「ぐすん・・・・。し、シスター。ごめんなさい。みんな、本当にごめん、実は・・・・・・。バレちゃった。」
レオは僕に視線を送る。
それの一部始終を遠目で見ていた僕は、レオと子供達の元へ近づく。
すっかり日もくれたこの場所。
近くで見て状況が分かった。
そこには、20人くらいの子供たちと、僕と同い年くらいの、黒い服を着て、十字架のネックレスを下げ、清楚な顔をした、1人のシスターが、そこに立っていた。
僕の眼とシスターの綺麗な瞳が合う。
その瞬間、全てを察したシスターは。
「レオ!!あなた、なんてことを・・・・・。ああ。ああ。」
シスターは歩み寄り。
僕に跪いた。
「申し訳ありません。彼らの罪は私が被ります。どうか、彼らに手出しだけは。」
必死に頭を下げ、祈るシスター。
「ご、ごめんなさい。でも、僕らフィルドランド少年盗賊団は・・・・・。」
「黙りなさい、レオ。確かに、落ちているものは拾っていいと言いましたが、人を襲えとは、言ってません、むしろ、人を襲ってはいけませんと言ったはずです。ああ、どうか、どうか、私は、どこへでも行きます。どうか、子供達だけは。」
シスターは必死に目を閉じ、祈る。
「落ち着いてください。僕は、城の兵士とかではありません。ただの、旅のものです。」
僕は、シスターに落ち着いてもらいたくて、ゆっくり、ゆっくり喋る。
「あの、えっと、城の人ではないのですか?」
「はい。皆さんに危害を加えるつもりもありません。ただ、彼の、うん。彼の。状況は明らかに良くありません。説明をしていただけると。嬉しいのですが。おそらく、また人を襲うかと。」
「ああっ。神様・・・・・。」
シスターは涙目になる。やがて、呼吸が落ち着くのを僕は見届ける。
傍の椅子に、シスター、そして、レオを座らせる。
「あの、旅のお方、ありがとうございます。レオだけでなく、私たちまで救っていただいて。」
僕はシスターの言葉に首を横に振る。
「レオ、あなたも、お礼を言いなさい。」
「・・・・。あ、ありがとう。えっと。」
レオは名前を聞いてくる。
「ケンタ=ハヤシ、皆からはケンと呼ばれているよ。」
といっても、僕がこの世界に転生してからの最初の自己紹介だ。老人たちの言われた通りに、名前から先に名乗り、あだ名を伝える。
「あ、ありがとう。ケン兄ちゃん。」
レオの表情は少しだけ柔らかくなる。
「僕の、父ちゃんと、母ちゃんは、城の兵士と魔物に、殺された。ここにはそういう子供たちが、大勢集まっている。仕事もない、だから僕はこの町で・・・・。仲間と一緒に、フィルドランド少年盗賊団として・・・・・。」
盗みをしていたというわけか。
やはり、原因はレオの心ではなく、この町、この国自体に原因がある。
レオは正直に話してくれた。この年で、説明するには十分すぎる説明だろう。
彼が盗みを働いていた原因が、レオ以外のところにあるとわかると、それ以上、レオに質問できなくなった。
「この国は一体?中央大陸にある、6大国の一角ではなかったのか?僕はそう聞いているし、ここは【芸術の都】とも呼ばれる、王都だったのでは・・・・・・。」
僕は疑問が残る。
確かに、天の門番たちからはそう書かれていた。6大国の一つだと。
「ここからは私が答えます。」
そう言ったのはシスターだった。
ご覧いただき、ありがとうございました。
まだまだ序盤なので、どうなるかお楽しみに。
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