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#1.表彰状


 僕は目を覚ます。

 ここは、病院?それとも、さっきまで居た銀行?いや、前者は可能性があっても、後者は可能性が低い。


 警察官の僕。

 銀行強盗の通報を受けて、犯人が立てこもった銀行に機動隊と突入して、従業員を人質に取っていた犯人とにらみ合い交渉して、その時に犯人の銃が不幸にも僕に当たって・・・・・・。


 そして、ここは・・・・・・。


 「目覚めたかね。」

 老人とその従者であろう、女性が立っていた。


 老人は僕と目を合わせ、紙を広げる。

 そして。


 「表彰状。林健太殿。貴方は、警察官として、罪もない銀行の従業員を助けるため、懸命に警察としての職務を全うして、殉職し、悲しくも、市民を守るという勇敢な最期を遂げました。

 右の善良な行いに栄誉を称え、ここに賞するとともに、褒賞として、【もう一度生き返る権利】、並びに【20階級特進】と【特別ボーナス】を進呈いたします。天の門番一同。」


 急に背筋が伸び、賞状を受け取る。


 パチパチパチパチパチ!!


 拍手が沸き起こる。

 といっても、老人と従者の女性だけなので、拍手としては小さいが。


 「素晴らしい、本当に素晴らしかった。」

 老人は感極まって泣いている。


 「あの・・・・・。ここは一体?」

 僕はこの沈黙を解くように言った。


 「ここはこの世とあの世の境じゃな。ホレ、儂の後ろに、扉が見えるじゃろ。そこからあの世に通じるのじゃ。つまり、お前さんは、銀行強盗に銃撃され、死んでしまったわけじゃな。しかも罪のない市民を助けようとして、銃弾に巻き込まれて、実に警察官としての職務を全うして。本当に、素晴らしい!!」

 老人は最後は涙目になった。


 そうか、僕は死亡したのか。だから全然知らない場所に居るのか。

 うーん。いろいろとやり残したことがあるが、仕方ないか・・・・・・・。


 今までの人生を僕は振り返る。

 結局、優秀な兄や姉たちにいつも比較され、両親にはそれで冷たくされ、結局最後は、伯父の進言で、

 「俺と同じ、警察官として、一から鍛えなおす。覚悟しろ!!」

 と言われるがままに警察官になって、何も結果を残せないまま、終わってしまった。

 せめて、一度は自由を楽しみたかったし。強制的に敷かれたレールの上で、歩んだ人生だったな。

 結局、頑張って、両親や兄や姉を見返したかったができなかったなあ。


 そんなことを考えながら、ぼんやりしていると。


 「どうしたのだ?」

 老人が僕に問いかける。


 「いえ。何でもないです。警察官として、そして、僕として、将来のある罪のない国民が一人でも助かったのであれば、後悔はありません。僕は生きているだけでも、常に・・・・・。」

 言葉が出なかった。上手く言葉で、一言では言えなかった。


 「その銀行の従業員の皆さんが幸せになってくれることを祈ります。それではあの世への扉を開けていただけますでしょうか。」

 少し深呼吸して、言葉を発した。



 「一体君は何を言っているのかね?」

 老人が聞いてくる。


 「と、言いますと。ここはそういうところなのでは?」

 僕は老人に聞き返す。老人は首を振る。


 「普通であれば、多くの魂はここの存在に気付かない。なぜならば、儂らはすぐに門を開いて、あの世に送り出し、ここはすぐに無意識のうちに通過してしまうため、門の向こうで意識が気づく人がほとんどなのだが、特例があってな。」


 「特例・・・・・・。」


 「その通り。いろいろとやり残した人や、君みたいに、人を助けるために殉職した人、誰かに殺された人、長時間労働で何もできずに後悔ている人、など、様々な理由で、非業の死を遂げた人をサポートする役目も儂らは担っておる。

 特に君の場合、職務を全うし、人の命を優先しての殉職した人に該当するため、一番手厚い待遇でサポートすると決めた。

 ほら、君の表彰状に書いてあるじゃろ。【もう一度生き返る権利】と、【20階級特進】と【特別ボーナス】と。」

 老人は言った。僕は受け取った表彰状に目を通す。


 確かにここには【もう一度生き返らせる権利】と、【20階級特進】と【特別ボーナス】と書いてあった。

 僕の胸は高鳴る。


 「あ、ありがとうございます。」


 おお、なるほど。これは素晴らしいが。

 ん?と僕の頭の中に疑問が残る。

 というよりかは、どこかで聞いたことのある展開だ。これはつまり・・・・・・・。


 「ただし、1つ条件として・・・・・・。」

 老人が続ける。


 「「異世界に行ってもらう。」」

 僕と老人の声がハモる。


 「おお、おお。なんと、君もかあ。」

 と老人はとても感心したように言った。


 「と、言いますと。」


 「本当に最近の若者は、『異世界に行く』という動作に何の抵抗もなく、むしろ君みたいにすべてを予測したかのように、呑み込みが早い人が多くて非常に助かっている。特に、地球という場所の日本というところから来る人、ほぼ全員にそれが見られて本当に早く対応できて助かっているのじゃ。現に、昨年の暮れに儂が担当した、海外ボランティアで活躍していた日本人の薬剤師さんもそうだった。一体何がそうしているのじゃろうか。」


 ああ。確か、正月くらいにニュースになっていたな。

 そうか、その人も、ここに来て転生してもらったのか。

 僕は頷く。


 「まあ、その人とは違う異世界に行ってもらうが。安心してくれたまえ。君の行く異世界にも・・・・。」


 「「魔法は使える。」」

 再び、僕と老人の声がハモる。


 「おお、これも知っていたか、すごいなあ、凄いよ。特別ボーナスということで、魔法は全属性に適性があることにしておく。

とりわけ君は警察官ということだったので、攻撃魔法系の全属性のスキルを最高ランクのSにしておく。

 そして、警察官として、警察学校にて、剣道と柔道をやっていたそうだから、剣術と格闘術のスキルも最高ランクのSにしておく。攻撃魔法と組み合わせて上手く使うがいい。君の行く異世界はそういう世界だ。ランクA以上になれば、該当する加護も付くので、それも付与しておくからの。他のスキルに関しても、君が今まで勉強してきた事柄に関しては、全てランクを上げておこう。頑張ればランクSも夢じゃないぞ!!」

 老人はそう言いながら、嬉しそうに説明する。


 「あ、ありがとうございます。頑張ります。」

 僕はそう言って、頭を下げる。


 「では、具体的にどのようなスキルを振り分けるか検討するので、この紙にいろいろ書いてくれ、書き方は分るはずじゃ。」

 そういって、手渡されたのは履歴書だった。


 僕は老人の指示通り、履歴書を書く。持っている資格、学歴などだ。

 すべてを記入し、老人に手渡す。

 老人は一つ一つ確認する。


 「やっぱり、君はものすごく優秀だな。」

 老人は確認する。


 「いえ。東大に入った兄たち、音楽を極め、上野にある芸大に入った姉、と比べれば僕なんか、両親にいつも比較されて・・・・・・。」

 老人は僕の肩に手を乗せ。


 「何を言っている。履歴書にある、君の大学も十分すぎるくらい優秀だ。そこも君の才能だ。考慮しよう。」

 老人は笑って、納得した。

 少し元気が出る僕。老人の言葉に頷く。


 「そしたら、はい、これをどうぞ。」

 従者の女性が袋を手渡される。


 「君が日本で使っていたものをこの袋の中に入れておいた。君の収納魔法でいつでも取り出せるし、何なら、この袋にはもっとたくさんの物が入るから好きに使ってくれたまえ。痛みにくい材質でできているからね。耐久性もばっちりだよ。」

 老人にそう言われながら、僕は袋の中身を確認する。

 確かに、使っていたものが一色入っており、さすがにネットにつながる情報機器は使えないと説明を受けるが、スマホやPCも、ワードやエクセルなど、ネットにつながないでできるものであれば、使えるそうだ。


 しかし、そう言ったもの以外に、真っ先に確認しておきたいものが僕にはあった。


 その確認しておきたいものがこの袋の中にあったので、安心する。

 僕は、それに該当する、ノートを取り出す。


 中身を開きページを確認する。間違いない。


 「これは?」

 老人が聞かれると。


 「日記です。親が厳しいので、つけろといわれてつけていたものです。異世界では学ぶこともあるので、毎日つけたいと。」

 僕は老人に応える。


 「そうか、それはよかった。それではそのノートに必要なものを書いておこうかの。」

 そうして、老人はそのノートに魔法をかけて、必要事項を書いてくれた。


 「その袋の中には地図帳とか、辞典も入っていたので、全て、君が行く世界の地図や言葉に書き換えておいた。履歴書を確認したが、学歴も大変すばらしい。ボーナスの一つとして、文字が読めるようにしておくからな。そうだな。まずは名前だが。君の名前は、『林健太』ということなので、異世界では、地球で言う、アメリカのように、苗字と名前を逆にするのが一般的だな。ホレ、『ケンタ=ハヤシ』。そして、愛称『ケン』という、文字が浮かび上がってきているだろ。」


 僕は確かに、これまでに、見たことの無い文字を使って、自分の名前が書ける。

 『ケンタ=ハヤシ』、そして、愛称『ケン』という内容で。


 僕は驚く。おお、これが読み書きか。


 「君の持っている、PCもこちらの文字に対応しておいた。」

 そう言われたので、僕は頷き、お礼を言う。


 「よし、履歴書を参考にスキルの振り分けが完了したぞ。残りは君の魔力として与えよう。最も君は【20階級特進】ということで、ほぼ無双できるだろう。よほどのことがない限り、戦いで、死ぬこともないだろう。」


 僕は老人の言葉に頷く。


 「それでは、最後の説明じゃ、袋から地図帳を出してくれ。」

 僕は老人の言われた通り地図帳を出す。

 そこには、日本ではなく、これから行く異世界の地図が記載されていた。


 いくつかの大陸がある。

 その中でも、老人は中央の大陸を指さす。一番大きな大陸だ。


 「これから君を、ここに、転送しようと思う。この大陸の名は名前の通り、中央大陸。

中央大陸は6つの巨大な王国と、20個以上あるいくつかの小国が混じっている。

この場所は、【フィルドランド王国】といって、6つの巨大な王国、通称、6大国の一つで、中央大陸の最も北にある。その他の6大国や地理の状況は、そちらの日記に書いておこう。」

 僕は頷く。


 「ここからの、儂の転送魔法は目立つので、町から少し離れた、森の中の洞穴に転送する。時間帯は朝方にしておく。転送した場所から、まっすぐ北に歩けば、2時間ほどで、街道にぶつかり、さらに2時間ほど街道に沿って、北に歩けば、【フィルドランド王国】の王都だ。

 まずは、その王都を拠点にして、いろいろ頑張ってみるとよい。ああ。そうだ、特別ボーナスの一環として、君の年齢を高校生くらいに若返らせておくからの。そして、君の財産も現地のお金に換金して、その袋には入れてある。何もしなくても、2年は持つじゃろう。まずは、王都で見分を深めるとよい。」

 老人の説明を一通り聞く。

 わからないこと、不明なことはとりあえずはないが。まあ、王都に付けば、誰かに声をかけるなり、ギルドに登録するなりして、いろいろと質問すればいいだろう。


 「あの、何から何まで、ありがとうございました。これで一応は大丈夫だと思います。」

 僕は老人に頭を下げた。


 「うん。そうじゃな。そしたら、最後に、今着ている、警察の制服じゃさすがに異世界では目立ちすぎる。何か希望の服装は無いかね?」

 ああ。確かにそうだ、これは流石に目立つ、異世界ならば兵士の格好だろうか?

 いや、それもそれで最初は鎧をきて動きにくそうだな。


 警察、警察。

 そうだ。と思った。


 確かにいやいや警察になったが、モチベーションはあった。

 刑事ドラマだ。

 刑事ドラマに出てくる刑事みたいな恰好は憧れた。


 「あの、刑事ドラマに出てくる、刑事みたいな恰好って、できますか?」

 僕は、具体的に服装を伝える、スーツに、コート、帽子、白色の手袋。


 「おお、大丈夫。大丈夫。生地や材質も、異世界でできているようなものにしておこう。」

 そうして、僕は刑事のような服装を手に入れた。

 黒のスーツに、黒のコート、帽子。少し異世界っぽい刺繍も施されていた。


 「あ、ありがとうございます。完璧です。」

 僕は老人と従者の女性にお礼を言う。


 「そうかそうか。それくらいお安い御用だよ。」

 老人は言った。


 そして、老人は深呼吸する。

 「それでは行くかの、君の未来に幸あれ!!元気で、楽しく頑張って、再び死ぬとき、また会おうぞ!!」

 老人は転送魔法をかける。

 僕は老人と従者に手を振った。

 彼らも、手を振り返した。




ご覧いただき、ありがとうございました。

まだまだプロローグの段階なので、どうなるかお楽しみに。

少しでも面白い、続きが気になると思った方は、是非ブックマーク登録と高評価、いいね、をお願いいたします。

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