97話 行動開始
「……だいたい、このようなところか」
砦の探索を終えて、脳内にマッピングを描く。
基本的な構造、通路、部屋の配置。
そのほとんどを理解することができた。
ただ一点。
どうしても調べることができない部屋があった。
砦の奥にある、客間と思われる場所だ。
空気孔があるため、そこまでの移動は可能。
しかし、獣のような、とてつもない気配を感じて、探索は断念した。
あれ以上進んでいたら、間違いなく気づかれていただろう。
よほどの猛者がいると思われる。
「たぶん、暁のメンバーだろうな。ただの構成員じゃなくて、幹部クラス……下手をしたらトップメンバークラスだな」
敵は戦闘のプロ。
真っ向勝負で敵うかどうか……
「アルム君なら普通に勝ちそう」
「アニキなら普通に勝ちそうっす」
おかしいな。
幻聴が聞こえてきたぞ?
それはともかく。
「戦闘になれば、ブリジット王女を巻き込んでしまう可能性もある……避難を最優先にしても、これほどの気配を持つ相手が素直に見逃してくれるかどうか」
まずは、ブリジット王女の安全を最優先に考えないといけない。
無事に救出して、安全圏まで退避。
それから、騎士団の応援を呼んで保護してもらう。
同時に、犯人を捕らえる。
どうする?
どうすればいい?
「……暁がどうしても邪魔だ。なら、排除するしかないか」
俺は決意をして。
それから、騎士団に連絡するための鳩を飛ばした。
――――――――――
ナカドよりも、暁の方が問題だ。
なので、まずは、暁をブリジット王女から引き離す。
そのためにはどうすればいいか?
答えは単純。
俺が囮となり、暁の目を引き付ければいい。
その間に、騎士団が別口から突入。
ブリジット王女を救出する。
「……本当は、ブリジット王女の安全を確保してからにしたかったけど」
それはとても難しい。
当初のプランを無理に進めようとしたら、逆に危険に晒してしまうかもしれない。
なので、プラン変更というわけだ。
「……ブリジット王女……」
彼女のことがとても心配だ。
できれば、この手で助けたい。
でも、それ以上に確率の高い方法があるのなら……
大丈夫。
騎士団のみんなはとても優秀だ。
俺がしっかりと役目をこなせば、きっと無事に救出してくれるはず。
それに、シロ王女とパルフェ王女もいる。
問題ない。
「すぅ……」
ゆっくり息を吸う。
乱れそうになる気持ちを整えて。
体の調子も整えて。
「……よし、いこう」
――――――――――
「なっ……貴様、いったいどこ、がっ!?」
砦に併設されている訓練場に移動して、そこにいた暁の団員を不意打ちで昏倒させた。
すでに、いつもつけている重りは外している。
100パーセントの力を発揮しているため、一撃で沈めることができた。
ただ、敵は一人じゃない。
「敵襲か!?」
「おい、連絡を送れ!」
他にも二人の団員がいた。
彼らは予想通り騒ぎ立てて、笛を鳴らして合図を送る。
いいぞ。
もっと騒いでくれ。
もっと増援を出してくれ。
きっと……
「その中に、ヒカリをあんな風にしたヤツもいるはずだからな」
ヒカリのこと、忘れていないからな?
ブリジット王女のことはもちろんではあるが……
それとは別に、ヒカリの件、落とし前をつけさせてもらう。




