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96話 革命

「革命……?」

「ええ、その通りです」

「まさか、父様……王にケンカを売るつもり?」

「正解です」

「……」


 あっさりと肯定されてしまい、ブリジットは言葉を失い。

 ナカドの大胆すぎる構想に驚いたのではなくて、心底、呆れ果てたのだ。


 まさか、言葉通りの意味だったなんて。

 本気で革命を企んでいるなんて。


 アホなのだろうか?


 ブリジットは、なんとか表情を変えず、しかし、内心ではそんなことを思っていた。


 フラウハイム王国は鉄壁で完璧。

 絶対に国が崩れることはない……と、断言することはできない。

 むしろ、断言したら、そちらの方がアホだ。


 為政者が愚か者であれば、国は簡単に傾く。

 そうでなかったとしても、他国の介入で傾くことはある。

 思想の違いによる反発が生まれ、その結果、革命が起きることもある。


 どんな問題点が潜んでいるか、それを全て把握することは不可能だ。

 できることといえば、最大限の努力をして、健全な国家運営に尽くすのみ。


 だとしても、革命が起きる時は起きるが。


 しかし。

 しかし、だ。

 王女を人質に革命を突き進めようなど、愚策としか言いようがない。

 下の下。

 ドヘタなやり方だ。


 普通に考えて、卑怯者。

 民からの信頼を得ることはできない。

 信頼を得られなければ、すぐに次の革命が起きるだろう。


 ナカドは、そのことを理解しているのだろうか?

 ブリジットは怪訝そうにナカドを見る。


「王は、政治というものをまったく理解されていない。最近は、帝国に対して強気な姿勢を貫いていますが、それはいけない。とてもいけない。かの国とは、仲良くやっていかなくてはいけません」

「あなたは、帝国の横暴を忘れているのかしら?」

「大したことはされていないでしょう。辺境の村が襲われた? 犯罪者に加担した? それがどうしたというのですか。国と国の関係を維持するためには、多少のことには目をつむらなければなりません。相手が強大な帝国なら、尚更」

「それ……本気で言っているの?」

「もちろん」


 ダメだ、こいつ。

 本物のバカであり、同時に、その魂は腐っている。


 ブリジットは、さらに呆れを加速させた。


「私の理想を叶えるために、王女には協力していただきたい」

「……あなたの理想って?」

「大陸一の国を作ることですよ。私の元で、誰もが幸せを享受することができるでしょう」


 ブリジットは、だんだん頭が痛くなってきた。

 これ以上、頭の悪い会話をしていたら、こちらもおかしくなってしまいそうだ。


 そんなことを思いつつ……

 もう一つ、思考を走らせていた。


 こんなバカが、大陸最強の傭兵団をどうやって雇ったのか?

 暁は最強の傭兵団として名高いが、それだけに人気が高く、貴族だとしても簡単に雇えるものではない。


 直接、話をしてわかった。

 彼らにはプライドと誇りがある。

 金のためなら、ある程度の妥協はするかもしれないが……

 だからといって、ナカドのようなバカに味方するわけがない。


 プライドと誇りが許さないだろう。

 ついでに、手を組めば破滅してしまうかもしれない。


 それなのに、彼らはナカドに雇われている。


(仲介した人がいる? いったい誰が……?)


 仲介人は、ナカドのことをよく知っているのだろう。

 力を手にすれば簡単に暴走すると、予想していたのだろう。


 ナカドが暴走して喜ぶ者は?

 反体制派の者?

 いや、それはない。

 いくらなんでも、ここまで暴走したら自分達も被害を負うかもしれないからだ。


 だとしたら……

 王国外の者?

 もしかしたら……リシテア?


「……と、いうわけで、ぜひ協力を願いたいのですよ」


 ブリジットがあれこれと考えている間に、ナカドの崇高な演説が終わったようだ。


 彼は勝利を確信したような笑みを浮かべている。

 自分の演説に心動かされて、ブリジットが涙を流して改心しつつ、協力を申し出てくれると信じているのだろう。


 やはり、アホである。


 私、こんなアホに誘拐されたわけ……?


 ブリジットは、自分が情けないやら恥ずかしいやら、思わず頭を抱えて叫んでしまいそうになった。


 とはいえ、囚われの身になっているのは事実。

 それに、ナカドはアホではあるが……

 彼に雇われている暁は危険だ。


 ブリジットに武の心得はないものの、それでも、相対しただけでカインとセラフィーが危険な存在であるとわかった。

 恐怖に囚われてしまうほどに理解させられた。


 暁が動いたとしたら、あるいは……


(そんなこと、させるわけにはいかない)


 ナカドのような、欲にまみれた人間に国を渡すわけにはいかない。

 革命と称した、意味のない暴力を振るわせるわけにもいかない。


 結局、最終的に涙を流すのは民なのだ。

 王女として、それを止める責任がある。


(とはいえ、私には暁どころか、ナカドを止める力はない。真正面からぶつかるわけにはいかない。私にできることは……)


「……なるほど。あなたの言いたいことはわかったよ。とても素晴らしいことだと思う」

「ほう?」

「私にも協力させてくれないかな?」

「娘が父を裏切ると?」

「確かに、私と父様は親子関係。でも、私はそれ以前に王女。この国をよりよくするために動かないといけない。そして、それはあなたにしかできないこと」

「……ふむ。まあ、いいでしょう。しばらくは監視をつけることになりますが、これからは、良き同士として協力していきましょう」

「うん、よろしくね」


 ブリジットは笑顔でナカドと握手をした。


 そんな中、心配に思うことは一つ。


(時間稼ぎのためとはいえ、こんなこと……私の笑顔、引きつっていないかな?)

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― 新着の感想 ―
[一言] 馬鹿(ナカド)に馬鹿(腐れ帝女)が手練れ(暁)を紹介したと…。
[気になる点] 知能指数が20離れると言語が理解できないらしいですね [一言] 今話のバカを見る限り姫とは50以上は離れてそうですが……よくバカの思想理解できたな?姫すげえよ
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