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89話 襲撃と、そして……

「ブリジット王女が誘拐された!?」


 その知らせが飛び込んできたのは、ブリジット王女の視察が終わり、城に戻る予定の日だった。


 暁が王国にやってきたこと。

 ユーバード家が動いているかもしれないこと。


 きな臭い情報を不安に思っていたけれど、今日までなにも起きることはなくて安心していたのだけど……

 油断した。

 まさか、このタイミングで手を出してくるとは!


「……っ……」


 感情に任せて机を叩きそうになるが、報告をしてくれた騎士の手前、ぐっと我慢した。


 彼らは俺を信頼してくれている。

 今回の件も、きっと大丈夫だと信じている。

 それなのに俺が情けない姿を見せるわけにはいかない。


「護衛についていた騎士達は?」

「……おそらく、全滅したのではないかと」

「っ……!」


 今回、ブリジット王女の護衛に赴いた騎士達の中には、仲の良い人がいた。

 一緒にごはんを食べて、飲んだ仲だ。


 拳を強く握る。


「……ヒカリは? ヒカリも護衛に加わっていたはずですが」

「それが、その……」


 騎士が暗い表情に。


「今回の襲撃の件はヒカリ殿が伝えてくれたのですが、その……かなり深い傷を負っていまして」

「ヒカリが……!?」

「我々に情報を残したところで、意識が……今は治療を受けています」

「……それを見ることは?」

「はい、こちらへ」


 騎士の案内で、手術室の隣の部屋に移動した。

 壁にガラスがハメこまれていて、中の様子が見えるようになっている。


「……ヒカリ……」


 ヒカリは……酷い有様だった。


 ヒカリは全身が血で赤くなっていた。

 それでも血を拭かないのは、最優先の治療があるから。

 きっと、命に関わるほどの怪我なのだろう。


「アルム殿、我々は……」

「……ただちに、ブリジット王女の捜索。及び救出をしなければいけません。そのための隊を編成してもらえますか? 俺は……少し考えをまとめたいと思います」

「はっ、了解です」

「1時間後に、会議室で合流しましょう」


 騎士と別れ、自分の部屋へ。


「……くそっ!!!」


 一人になったところで、どうしても我慢できずテーブルを叩いた。

 ビシリとヒビが入り、砕けてしまう。


 物に当たるなんて最低だ。

 でも今は、どうしても自分の気持ちを抑えることができない。


「ブリジット王女……!」


 大丈夫だろうか?

 酷い目に遭わされていないだろうか?


 王女という立場を考えると、すぐに殺されることはないだろう。

 なにかしらの要求が来るはずだ。

 それが成立するまで生かしておくはず。


 でも、危害を加えられていないとは限らない。

 生きてさえいれば、なんて考えの犯人かもしれない。


 ブリジット王女のことを考えると、どうしても焦りを覚えてしまう。

 こんな時こそ平静でいないといけないのに、心を鎮めることができない。


 そして、なによりも……


「どこのどいつか知らないが、よくもヒカリをあんな風にしてくれたな……!!!」


 ヒカリは、必死でブリジット王女を守ろうとしたのだろう。

 それこそ自分の命を賭けて戦ったのだろう。


 それでも、守り切ることはできないと判断して……

 一刻も早く、この情報を伝えるために、苦渋の決断で撤退を選んだはず。


 そんなヒカリの背中にも傷があった。

 襲撃者は逃げるヒカリにも攻撃を加えたのだ。


 ボロボロになって。

 血だらけになって。

 それでも、使命を果たして……


 そんなヒカリを誇らしく思うものの、でも。


「……ここまで無理をしなくていいんだよ」


 立場を考えると、仕方ないのかもしれないけど。


 でも。

 それでも、俺はヒカリに傷ついてほしくなかった。


 妹のように思っているから。


「……覚悟しろよ」


 どこの誰かわからないが、ヒカリを傷つけた代償を背負わせてやる。

 そして、ブリジット王女に手を出したことを後悔させてやる。


「絶対に……許さんっ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 誘拐するなんてこれは万死に値しますね
[一言] アルム君、犯人がブリジット王女に傷ひとつ付けたら 全ての骨を折って燃やして灰にしてやりましょう
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