81話 むううう
パルフェ王女との契約の3日間が終わり、俺はブリジット王女の専属に戻った。
「おかえり、アルム君♪」
「ただいま戻りました」
「変なことされなかった? 変なこと言われなかった? 変なところ触られなかった?」
最後の質問は、どういう意味だろう……・
「問題ありません」
「そっか、よかった。パルフェって、研究のことになると周りが見えなくなるから。アルム君に迷惑かけちゃったかなあ、って心配だったんだ」
「その気持ちは嬉しいですが、俺をパルフェ王女につかせることに、わりと簡単に了承していましたよね?」
「ひゅーひゅー」
ブリジット王女は微妙な口笛を吹いてごまかそうとしていた。
それから、しゅんとした感じでうなだれる。
「うぅ……ごめんね。私、アルム君を利用しちゃった……」
「いえ、気にしないでください。俺はブリジット王女の専属なので、あなたの命令には従うまでです」
「アルム君の優しさが、逆に心に痛い……」
本当に気にしないでほしいのだが。
「でも、どうしてもパルフェに協力してもらいたくて」
「そうですね、それは理解できます」
魔物を調教して、自由に動いてもらうことができる。
これほど強力で便利な力はない。
帝国の体制を崩すために、大きく影響してくるだろう。
そういった目でパルフェ王女を見ている以上、俺も同罪のようなものだ。
「なにはともあれ、3日間、ご苦労さまでした! 今日からまた、よろしくね♪」
「はい。こちらこそ、全力でお仕えさせていただきます」
ブリジット王女と笑顔を交わす。
?
おかしいな。
こんなことは今までに何度もあったのだけど、今日はどこか違うような気がした。
いつも以上にキラキラと輝いているというか。
なぜか目を惹きつけられるというか。
うーん……なぜだろう?
「ねえ、アルム君は……」
「やっほー!」
バン、と勢いよく扉が開いて、パルフェ王女が姿を見せた。
「「えっ」」
ブリジット王女と二人、驚いてしまう。
だって、パルフェ王女は城の端に引きこもって研究をしているはずだ。
城内に戻ってきたことなんて、今までに数えるほどしかないと聞いている。
「ぱ、パルフェ? えっと……どうしたの? 私になにか用?」
「ううん、ブリジット姉さんじゃなくて……アルム!」
「えっ」
パルフェ王女が笑顔で抱きついてきた。
そのまま腕を組む。
「今日も研究に付き合ってくれないかな? キミが一緒にいると、色々なことがはかどる気がするんだ」
「えっと……申しわけありません。ブリジット王女の専属としての仕事があるため、それは難しく……」
「えー、いいじゃん、いいじゃん。ブリジット姉さんはわりと完璧だから、アルムがいなくても大丈夫だって。それよりも、ちょっとドジなボクの方を手伝ってほしいな? ね? ね?」
「えっと……」
なぜか、ものすごく心を開いていただけたみたいだ。
それはとても光栄なのだけど……
「がるるるっ……!」
ブリジット王女が大変なことに。
魔物も真っ青の迫力でパルフェ王女を睨みつけている。
そして、俺の反対側の腕に抱きついた。
「アルム君の貸出期間は終わり! アルム君は私の専属なんだから、パルフェは帰って」
「えー、ちょっとくらいいいじゃん。今まで、ブリジット姉さんが独り占めしていたんだから」
「ダメですぅー。パルフェは一人で研究してて。私は、アルム君と一緒にお仕事するから」
「ブリジット姉さんこそ、一人で仕事をすればいいんじゃないかな? ボクがアルムと一緒にいるよ」
「むっ」
「むっ」
睨み合い、バチバチと火花を散らす姉妹。
なんか不穏な感じが……
「アルム君は私と一緒にいるの!」
「いーや、ボクだね!」
「私!」
「ボク!」
「「がるるるっ!!!」」
「いたたた!?」
ブリジット王女とパルフェ王女が、それぞれ左右から俺を引っ張る。
わりと全力で。
たかが女性の力と侮ることなかれ。
体重もかけているため、かなり痛い。
「ふ、二人共落ち着いてください。これは、さすがに……!?」
「あっ、お兄ちゃん達だ!」
そこにシロ王女が姿を見せた。
「よ、よかった。シロ王女、お二人を止めて……」
「シロも遊ぶー!」
「えっ!?」
色々と限界なところにシロ王女が飛び込んできて……
とりあえず、俺の悲鳴が城中に響いたとかなんとか。




