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8話 治水工事

 フラウハイム王国の王都の近くには川が流れている。


 たくさんの魚が住んでいて、そして、その魚を目当てに鳥が集まり……

 フラウハイム王国に大きな恩恵をもたらしている。


 しかし、時に自然は牙を剥く。


 雨季に振る雨の量は多く、川はその全てを受け止めることができない。

 年に数回の頻度で氾濫を起こしていた。


 それを改善するために、現在、治水工事が行われているのだけど……


「これ、まずいですね」


 「アルム君なら私達が気づいていないことに気づくことができるかも」という理由で、ブリジット王女に工事の計画書の確認を求められた。


 ブリジット王女に気づけないことを、俺が気づくことができるわけないのだけど……

 一応、確認をしてみたら、とんでもない事実に気がついた。


「まずいって、どういうこと?」

「堤防を作る計画ですが、この計算だと盛土が足りません。それと、基礎になる石も足りていません。下手をしたら、工事の途中で決壊します」

「え……それ、本当に!?」

「俺、皇女の命令で治水工事に関わったことがあるので、わかります」

「アルム君って、なんでもやっているんだね……って、今は感心している場合じゃない! まずい!!!」

「どうしてそんなに慌てているんですか? 設計に不備があるのなら、工事を一時中止して、再計算をすれば問題ありません。無理に工事を進めなければ、まだ決壊が起きることは……」

「もうすぐ雨季だから、みんな、張り切って仕事をしているはずなのよ! 今、予定よりも大きく工程が進んでいて……」

「っ!? それじゃあ……」

「アルム君の言う通りなら、いつ決壊してもおかしくないよ」

「急ぎましょう!」




――――――――――




 馬を走らせて工事現場に駆けつけた。

 たくさんの人が河川に集まり、盛土や基礎に必要な石を運んでいる。


「よかった、まだ決壊していないみたいですね」

「うん。今のうちに工事の中止を教えて……」


 その時だった。


 ゴゴゴッ、という不吉な音が響く。

 地震が起きたかのように地面が揺れて、そして……


 ゴガァッ!!!


 無理に積まれた盛土と石のバランスが崩れて、作りかけの堤防が崩壊してしまう。


「うぁあああああ!?」

「な、なんでいきなり……あああ!?」


 たくさんの作業員が崩落に巻き込まれてしまう。


「みんな!!!」

「待ってください!」


 ブリジット王女が駆け出そうとして、慌てて制止した。


「まだ崩落が続くかもしれません」

「でも、みんなが!!!」

「それは俺に任せてください」


 この人に悲しい顔は似合わない。

 俺が笑顔に変えないといけないんだ。


「でも、アルム君だって危険じゃあ……」

「なら命じてください。みんなを助けて、それでいて、無事に戻ってくるように……と」

「それは……」

「俺はブリジット王女の専属です。あなたの願いを叶えることが俺の仕事です。だから……命じてください」


 ややあって、ブリジット王女は小さく頷いた。

 そして、まっすぐに俺を見つめる。


「王女として命令します。みんなを助けて、そして、自分自身も助けなさい!」

「オーダー、承りました」


 大丈夫。

 そう言うように頷いてみせて、俺は崩落現場に向けて駆け出した。


 すでに複数の作業員が土砂に飲み込まれている。

 一人ずつ救出していたら間に合わない。


 だから、まとめて助ける!


「土よ、我が意に従いその力を示せ。アースクリエイト!」


 右手で土属性魔法を使い、土砂と石を押し返して……


「風よ、我が意に従いその力を示せ。ウインドクリエイト!」


 左手で風属性魔法を使い、崩落に巻き込まれた人達を引き上げた。


「「「……」」」


 なぜか周囲の人達が目を丸くして驚いていた。

 ブリジット王女も驚いていた。


「なにあの威力……というか、二つの属性を使っている? 普通は一つのはずなのに? いやいや、それよりも同時詠唱とか超高等技術なのに……えぇ、えぇ?」

「ブリジット王女、ここに治癒師はいませんか!?」

「えっ……あ、うん! 大丈夫、いるよ! 作業中の怪我は多いから、数人は待機しているはず。だよね!?」

「は、はい!」


 ブリジット王女に声をかけられた作業員、慌てて治癒師を呼びに行った。


 その間に、俺は魔法を使い、負傷者達を安全な場所に移動させる。


「治癒師を呼んできたぜ!」

「怪我人はどこですか!?」

「ここにいる。どれくらいの傷なのか、俺じゃあ判断できない。後は任せてもいいか?」

「はい、わかりました。必ず助けてみせましょう、あなたの行いを無駄にしないためにも」

「……うん、頼んだ」


 これ以上、俺にできることはない。

 後ろへ下がる。


「ありがとう、アルム君。みんなを助けてくれて」

「いえ、まだまだです。光属性の魔法は苦手なので、治療ができず……」

「なに言っているの、みんなを土砂の中から救い出しただけでも十分だよ。というか、魔法が使えるなんてすごいね!」

「執事の嗜みです」

「いやいや、そんな嗜み聞いたことないからね? でも、本当にすごいと思うよ。魔法を使える時点で驚いたし、二属性の魔法を使えることを知った時は、ほんと、驚きすぎて心臓が止まるかと思ったわ」

「いえ。俺は、四属性の魔法を使えますよ」

「は?」


 再びブリジット王女の目が丸くなる。


「執事たるもの、魔法を使えるだけで満足してはいけない。最低でも四属性は使えないと話にならないですからね。その上で、同時詠唱も必須です」

「えっと……あれれ、おかしいな。私の常識とアルム君の常識に大きな違いがあるような気がするよ。普通は、執事は魔法を使えないからね?」

「必須と言われていたので」

「四属性を使える人なんて、世界で見ても数えるほどしかいないよ?」

「それくらいできて当たり前、どうしてできないわけ? 今すぐできるようになりなさい、と怒られてきたので、できるように努力しました」

「あー……うん。そっか、なるほど。あっはっは、無茶苦茶すぎる!」


 なぜかブリジット王女は笑う。

 でも、とても楽しそうだ。


「アルム君って、本当に規格外だね」

「そんなことは……」

「でも、だからこそ面白い♪」

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