74話 王城の森
ライラとの最初の会談は無事に成功した。
後日の再会を約束して……
策の詳細を詰めるのはその時だ。
今は、コツコツと下準備を進めなければいけない。
そのためにやらないといけないことがある……と、俺は、ブリジット王女に呼び出された。
一歩後ろについて、城の廊下を歩く。
「ブリジット王女、今日はどちらへ?」
「んー……まあ、ここまできたらいいか」
ブリジット王女が足を止めて、こちらを振り返る。
「ここ、普段は来たことないでしょ?」
「そうですね。城の端の端……しかし、重要な場所と聞いています。許可なく立ち入ることは許されていない、と」
「実は、この先……ちょっと危険なんだ」
「危険……ですか?」
王城内にそんな場所が?
「あと、とても大事な場所」
「危険で大事……?」
意味がわからない。
ちょっと混乱してしまう。
そんな俺に、ブリジット王女は答えを提示するように言う。
「私は、第一王女。シロちゃんは、第三王女。さて、問題です。第二王女は?」
「それは気になっていましたが……もしかして」
「うん。この先に、第二王女の部屋があるんだ。部屋というか……うーん、小屋?」
ブリジット王女は再び歩みを再開した。
「小屋というのは?」
「そのまんまの意味。あの子、小屋で暮らしているの」
「……王女なのに?」
「私達、三姉妹の中でも一番の変わり者なんだ。特別な区画を与えられて、その中にある小屋で生活をしているの」
「えっと……すみません、よく意味がわかりません」
「だよねー。これで理解されたら、それはそれで怖いよ。まあ……説明するよりも、実際に見てもらった方がいいかな」
ほどなくして巨大な扉に行き着いた。
城門のように大きく、そして頑丈なものだ。
見張りの騎士もいる。
「ここ、通してくれる?」
「ブリジット王女? しかし、この先は危険でして……」
「大丈夫、それくらいわかっているよ。ほら、アルム君が一緒だから」
「なるほど。それなら大丈夫ですね」
騎士が扉を開けた。
その先に広がる光景は……
「……森?」
城内に森が作られていた。
位置を考えると、ここは城の裏手になる。
裏庭を改造している、と考えれば納得できるのだけど……
どうして森を作っているのか、という部分については納得できない。
「アルム君。ここ、魔物が出るから、いざという時はお願いね」
「は? ……魔物が?」
「うん。一応、ここを通るための携帯結界を持ってきているんだけど、万が一っていうことはあるから」
「……わかりました。ブリジット王女の身は、この命に賭けて守りましょう」
色々と疑問はあるものの、今は封じ込めておくことにした。
確かに魔物の気配がする。
ただ、ブリジット王女が持つという結界を気にしているのか、こちらに襲いかかってくる様子はない。
そのまま、ブリジット王女と二人で森の中を進む。
森といっても人工的に作られたものらしく、それほど広くない。
ほどなくして最深部に到着した。
小屋があった。
「あそこよ」
「魔物の気配がする森の中に小屋……? しかし、結界は設置されていないみたいですね。いったい、どうやってあんなところで……」
不思議に思いつつも、ブリジット王女の案内で小屋の前に移動する。
「パルフェ、いる?」
ブリジット王女は、扉をノックしつつ、そう呼びかけた。
瞬間、
ドサバサガサバサササァアアアッ!!!
小屋の中から、なにかが大量に崩れ落ちる音が聞こえてきた。
「ブリジット王女!?」
「んー? あ、大丈夫。わりといつものことだから」
慌てる俺と違い、ブリジット王女はひたすらに落ち着いていた。
そして、のんびりとした様子で扉を開ける。
「入るよ」
小屋の中は……
酷い有様だった。
あちらこちらに書物や、よくわからない物が積み重ねられている。
その一部が崩れたらしく、床に山ができていた。
よく見ると、手足が生えている。
「って、大変じゃないですか!」
慌てて引き出した。
「ふぅううう……誰か知らないけど、助かったよ。ありがとう」
「あなたは……」
「やあ、はじめまして。ボクは、パルフェっていうんだ。よろしくね」
ブリジット王女によく似た、そして、同じ色の髪を持つ女の子は、柔らかい笑顔と共にそう言った。




