64話 激戦
「俺が突っ込む! てめえらは援護に徹しろ!」
その巨体に似合わない速度でガンドスは駆けた。
風のように無駄なく動いて、巨大な棍棒を叩きつけてくる。
さすがにあれは真正面から受け止めることは難しい。
最小限の動きで回避すると同時に、前に踏み込む。
ほぼ同時に回し蹴り。
ワンテンポ、動作を必要とするが、その分、威力が跳ね上がる。
しかし、ガンドスは俺の蹴りを受けても無傷だ。
怯むことなく、反撃の棍棒を振り回す。
「ちっ、痛みがないのか?」
「蚊に刺されたようなものなんだよ!」
叫びつつ、ガンドスは棍棒を横に振る。
体勢を低くして回避。
反撃に……
「らぁっ!!!」
移るよりも先にガンドスが追撃をしかけてきた。
速い。
こちらの動きを先読みしているかのようだ。
「てめえが遅いんだよ!」
「執事に戦闘力を求められても困るな」
「てめえが執事って枠に入るか、ボケ!」
嵐のような乱打。
速いだけではなくて、一撃一撃が強烈だ。
かすっただけで木が倒れている。
もらったら厳しいな。
「これでも喰らえ!」
「やるぞっ」
団員達が矢を放つ。
こちらの回避のタイミングに合わせているわけじゃなくて、ただ、俺とガンドスが離れた時を狙っているだけ。
適当な狙いなので回避は簡単なのだけど……
「オラオラ、どこ見てやがる!」
「ちっ」
矢を回避しないといけないため、ガンドスとの戦いに集中することができない。
まずは団員を潰すべきか。
そう判断して、棍棒と矢を回避しつつ、石を拾う。
敵の攻撃を避けて……
その勢いを乗せて石を放つ。
「ぎゃ!?」
「ぐあっ」
一人、潰すことができた。
しかし、もう一人は軽傷だ。
このまま着実に数を減らしていけば……
「おいっ、こっちだ!」
「全員、援護に回れ!」
「……まだ、こんなにもいたのか」
次々と団員が駆けつけてきた。
思っていた以上に多い。
それにしても……
「ゴミ掃除にここまで手間取るなんて、執事失格だな」
「なんだと、てめえ!?」
ゴミと聞いたガンドスが激怒する。
「てめえ、しばらく会わないうちに、ずいぶんと生意気な口を叩くようになったなあ?」
「ゴミをゴミと言ってなにが悪い? 軍人としての誇りを忘れ、盗賊に身を落とした者なんてゴミだろう」
「てめえのような無能にはわからねえかもしれないけどな、これは立派な軍事作戦の一つなんだよ」
「軍事作戦? 綺麗な言葉で取り繕うな。お前が……帝国がやっていることは、ただの侵略だろう。恥を知れ、野蛮人め」
「殺すっ!!!」
挑発成功。
ガンドスは顔を赤くして棍棒を振り回す。
ただ、怒りのせいで精度が先程よりも落ちていた。
これなら回避は簡単だ。
「とはいえ……」
回避をしつつ、反撃の蹴撃を叩き込む。
しかし、ガンドスは止まらない。
猛牛のごとく突撃を繰り返してくる。
怒りのせいで痛みを感じていないのだろうか?
まさにバーサーカーだな。
「厄介だな」
ジーク王子達が到着する前に決着をつけないと。
こんなヤツが暴れたら、どれだけの被害が出るか。
とはいえ、決め手に欠けているのは確か。
どうする?
どうやってガンドスを倒す?
「……覚悟を決めるか」
少し考えて策を決めた。
軽い深呼吸をして息を整える。
そして、地面を蹴り、駆けた。
速度はこちらの方が上だ。
嵐のような攻撃をかいくぐり、ガンドスの背後に回り込む。
そして、首に向けて蹴りを……
「バカめ!」
ガンドスは棍棒をあっさりと手放すと、くるっと反転。
俺を視界に捉えて、その拳を繰り出してきた。
避けることはできず。
防ぐこともできず。
「ぐっ!?」
俺はガンドスの攻撃を受けて吹き飛ばされてしまう。




