53話 好き
シロの名前は、シロ・スタイン・フラウハイム。
フラウハイム王国の第三王女なんだよ、えっへん。
ブリジットお姉様は、『向日葵王女』って呼ばれている。
笑顔が夏の向日葵みたいに素敵だから。
うんうん、納得。
確かに、お姉様の笑顔は素敵♪
……怒ると怖いけどね。
対するシロは、『苺王女』って呼ばれている。
可愛いから、という理由みたい。
うんうん、納得。
確かにシロは可愛いからね♪
えっへん。
でも……
本当はこの呼び名は好きじゃない。
可愛いって呼ばれることは嬉しい。
でも、同時に複雑な気持ちになっちゃう。
お前は可愛い。
でも、それだけ。
他に取り柄なんてない。
……そんな風に聞こえてしまう。
私は、ブリジットお姉様のようなカリスマはない。
でも、代わりに発明が得意だ。
新しい魔法を開発したり、魔道具を開発したり。
王国に流通する半分くらいのものに私が関わっている。
私の自慢であり誇りだ。
でも、それを信じてくれる人は少ない。
私なんかにできるわけがない。
可愛いだけが取り柄の平凡な王女にできるわけがない。
家族を除いて、誰も信じてくれない。
酷い人になると、嘘を吐いている無能、と陰口を叩いている。
貴族とか、特にそんな人が多い。
そんなある日、お兄ちゃんと出会った。
アルム・アステニア。
元帝国の、そして今はブリジットお姉様の専属の執事。
ああ見えて、ブリジットお姉様はあまり人を信用していない。
守るべき民には心からの笑顔を向けるものの、貴族に対してはそうはいかない。
一応、笑顔は忘れないものの、心の中では鋭い表情を浮かべている。
身近にいる人は敵になることもある。
最初から敵だった、ということもある。
王族だからこそ、そういう経験をすることが多い。
だから、ブリジットお姉様は今まで専属をつけていない。
それなのに、お兄ちゃんはいきなり専属になることができた。
どんな人だろう?
興味が湧いて、観察をして……
ちょっとしたきっかけがあって、色々とお話をすることになった。
びっくりした。
お兄ちゃんは、私の言うことを信じてくれた。
家族以外誰も信じてくれない話を、迷うことなく、すぐに、欠片も疑うことなく受け入れてくれた。
嬉しい。
嬉しい。
嬉しい。
心に花が咲いたみたい。
背中に羽が生えて、どこまでも飛んでいけそうな気持ち。
たったの一言。
でも、私にとってはなによりも重く、深く、そして優しさにあふれた一言だった。
好き。
大好き。
愛している。
一瞬で心を奪われた。
我慢できなくて、勢い余って告白して求婚した。
でも……うん、大丈夫。
お兄ちゃんはブリジットお姉様の専属だけど、王女と執事の関係。
恋人とかじゃないから、私が求婚しても問題ないはず。
ただ……
ブリジットお姉様は、やたら怖い顔をしていた。
あと、偶然、その場で話を聞いていたお父さまも、やたら怖い顔をしていた。
なんで?
うーん……うーん?
よくわからない。
でもいいよね。
大丈夫。
「ふふっ、絶対にお兄ちゃんと結婚するんだから♪」
待っていてね、お兄ちゃん。
絶対に逃してあげないんだから。




