49話 それはそれ、これはこれ
「酒は飲める方か?」
「ほどほどに」
酔いに対する訓練も行っていたため、泥酔することはない。
ただ、強い酒を飲めばほどほどに酔うことはできる。
あと、コントロールもある程度は可能なので、普段はかけているセーフティを解除すればいい。
……なんていう話を後日、ブリジット王女にしたところ、「え? アルム君って魔道具なの? 体の機能を任意にコントロールできるとか、ありえないよ……?」と、なぜか引かれてしまった。
「これは良い酒だぞ」
ゴルドフィア王、直々に酒を注いでもらう。
良い匂いだ。
きっと、とても上等な酒なのだろう。
心の安寧のために値段は聞かないでおいた。
「さて……わざわざ、こうして二人きりになったのは他でもない」
なにか大事な話があるのだろう。
でなければ、ここまで強引に事を進めない。
「感謝する」
「えっ」
いきなり頭を下げられてしまい、ぽかんとしてしまい……
次いで、慌てる。
「い、いきなりなにを……そのような真似、やめてください。誰かに見られたら……」
「儂は今、国王ではなくて一人の父親として感謝の念を伝えている」
「……」
「ブリジットを助けてくれてありがとう。深く、深く感謝する」
こうして、個人で礼を伝えたくて……
だから二人きりになったのか。
ゴルドフィア王の統率者としての能力はまだわからない。
でも、父親としては文句なしに合格だろう。
「それと、ブリジットを支えるだけではなくて、国のために色々と尽くしてくれたみたいだな。そちらについても感謝する」
「いえ。俺は王国にやってきて日が浅いですけど、でも、ここを新しい故郷だと思っています。なればこそ、故郷のために尽くすことは当たり前ですから」
「王国を故郷と言ってくれるか」
「ブリジット王女のおかげで、そう思うことができました」
彼女がいなければ、俺は今、ここにいない。
生きているかどうかも怪しい。
それだけのことをしてもらった、という恩を感じていた。
そして、笑顔にあふれる優しい街の人々。
彼らに受け入れてもらい、ますますここを故郷と思う気持ちが強くなった。
みんなのおかげなのだ。
「ふむ……貴様がブリジットのために尽くすのは、恩を感じているからか?」
「それは……」
「他にも理由があるのではないか?」
「そうですね……恩はもちろん感じています。ですがそれだけではなくて、王女の人柄に惹かれているところはあります。彼女の笑顔を見たい、そのためにがんばりたいと……そのように思っています」
「ふむ」
なぜかゴルドフィア王は深く考える。
俺は、なにか答えを間違えたのだろうか?
「人柄に惹かれているというのは、ライクか? それとも、ラブか?」
「えっ」
突然、なにを言っているんだ?
思わずマジマジと見返してしまうものの、ゴルドフィア王は至って真面目な顔だ。
「えっと……それは、どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味だ。貴様は、ブリジットに恋心を抱いているのではないか? だからこそ、娘のために尽くそうとするのではないか?」
「恋心、と言われても……」
ブリジット王女のことは好きか? 嫌いか?
その二択で考えるのなら、間違いなく前者だ。
しかし、それが恋心に直結するかというと迷う。
恩を感じている。
素敵な女性だとも思う。
だからといって、それを恋と決めつけていたら、世の中、恋する男女であふれかえっているだろう。
「正直、よくわからないのですが……」
「ふむ」
じっと見つめられた。
じーっと。
じぃぃぃっと。
「どうやら本心のようだな」
「はい」
「よかった。もしも恋と答えていたのならば、儂は貴様を殺さねばならぬところだった」
なんだろう。
今、とても物騒なことを言われたような……
「貴様は娘の恩人で、国に多大な貢献をしてくれている。しかし、それはそれ。これはこれ。ブリジットに結婚は元より、恋もまだまだ早い。娘をたぶらかすような者は、この儂の剣の錆にしてくれよう」
「はは……」
乾いた笑いしか出てこない。
この人、娘ばかだ。
かなり本気で言っているのがわかるから、とても困る。
ブリジット王女も子供ではないのに……
彼女の恋人、あるいは婚約者になる人は大変だろうな。
「……?」
ブリジット王女の隣に立つ者を想像して……
ふと、胸に小さな痛みが走った。
今のは、いったいなんだろう?
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