48話 王様、帰還する
フラウハイム王国の謁見の間。
玉座に座るのは、ゴルドフィア・スタイン・フラウハイム。
フラウハイム王国のトップに立つ方だ。
手足は丸太のように太く、体は熊のように大きい。
ぴったり合う服がないらしく、筋肉があふれ出してしまいそうだった。
頬から目元にかけて大きな傷跡がある。
国王というよりは、歴戦の冒険者と言った方がピッタリくる。
失礼な感想かもしれないが、もっと細い人を想像していた。
ゴルドフィア王は、長く続く王家の歴史の中で、特に優れた知識を持つと言われていた。
事実、彼の代で王国は大きな発展を遂げた。
その大半がゴルドフィア王の手によるものだ。
だからこそ、賢者というような風貌、容姿を想像していたのだけど……
まさか真逆で来るなんて。
「父様、お帰りなさい」
「うむ。長い間、国を空けていてすまなかったな。そして、うまくまとめてくれていたようだ。よくやった、ブリジットよ」
「ありがとうございます」
ブリジット王女も、ゴルドフィア王の前ではかしこまっていた。
さすがに普段の調子でいるわけにはいかないのだろう。
プライベートな場ではわからないが。
「帝国の件など、すでに報告は受けている。サンライズ王国へ赴いてくれるか?」
「はい、おまかせください」
「うむ。期待しているぞ。それと……」
ゴルドフィア王の視線が、謁見の間の端で待機する俺に向けられた。
「聞けば、専属をつけたそうだな?」
「はい、紹介しますね。アルム、こちらへ」
「はっ」
前に出て、膝をついて頭を下げる。
「アルム・アステニアと申します」
「ふむ……お前がブリジットの専属か。色々な偉業を成し遂げたと聞いているが……そうだな、訓練場に移動しよう」
「はい」
なぜ?
と不思議に思ったものの、疑問や異論を唱えるわけにはいかない。
素直に頷いて、訓練場へ移動した。
その際、あちゃー、という感じでブリジット王女が頭を抱えているのが見えた。
なんだろう?
――――――――――
「儂と試合をしようではないか」
「はい?」
訓練場で木剣を突きつけられて、さすがに今度は我慢できず、間の抜けた疑問の声をこぼしてしまった。
「えっと……申しわけありません。なぜそうなるか、理解できないのですが……私の理解力が低く、申しわけありません」
「……アルム君が理解力低いってことになったら、ほとんどの人は低くなっちゃうよ」
そんなブリジット王女のつぶやきが聞こえてきた。
「なに。貴様の噂はよく聞いている。とんでもない強さを誇るらしいではないか。なればこそ、剣を交えてみたい。そして……」
「そして?」
「娘の専属にふさわしいか、確かめさせてもらおうか」
それが本音か。
ならば、俺は受けて立たないといけない。
ブリジット王女の専属を続けるために。
「わかりました」
「うむ。話がわかるヤツは嫌いではないぞ」
「ああもう……父様は、本当に脳筋なんだから……」
こうなるとわかっていたらしく、ブリジット王女はすでに疲れた様子だ。
もう止められないと理解しているらしく、おとなしく観戦席に移動した。
「では、ゆくぞ」
「はい、胸をお借りいたします」
ゴルドフィア王がコインを放り……
「むぅんっ!!!」
地面に落ちると同時に地面を蹴る。
地面に穴を開けるような、強烈な踏ん張りで、その加速力は凄まじい。
風のような突撃で、一瞬で目の前に迫る。
そして、その勢いを乗せた、重い重い斬撃を繰り出す。
ガァンッ!!!
足と腰に力を入れつつ、真正面から斬撃を受け止めた。
互いの木剣が折れて、刃の先が宙を舞う。
「おい、嘘だろ……訓練用の剣はとにかく頑丈に作られていて、頑丈さだけなら普通の剣より上なのに……」
「互いに折れるとか、どんな力をしているんだ……?」
「というか、王の一撃を受け止めるとか、ありえないだろ。こんなこと言うのもなんだけど、王の力はとんでもなくて、岩も叩き斬るのに……」
「それをしっかりと受け止めているよ。アルムさんはやっぱりすごいな……俺には真似できない」
観戦する騎士達がざわついた。
それを見て、ゴルドフィア王は構えを解く。
「なるほど。貴様は見事な剣士のようだ」
「いえ、執事です」
「ふむ? まあ、どちらでもよい。その力、気に入ったぞ! がははっ」
豪気に笑うゴルドフィア王は、バシバシと俺の背中を叩いた。
痛い。
これ、マジで痛いぞ。
なんていう力だ。
「飲むぞ。儂の部屋へ来い」
「えっ、今からですか!?」
「なにか問題が?」
「仕事が……」
「そのようなもの明日でよい」
「しかし、俺の一存では……」
「ブリジット、よいな!?」
「はい、どうぞ」
ブリジット王女!?
慌てて振り返ると、「ごめんね?」という感じで両手を合わせられてしまう。
『止めてください』
『無理』
『そこをなんとか』
『諦めて♪』
なんてやりとりをアイコンタクトで交わす。
「なにをしている、いくぞ」
「えっと……かしこまりました」
これはもうどうしようもない。
諦めてゴルドフィア王についていくことにした。
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