37話 あの執事はおかしい
俺はフラウハイム王国に仕える騎士だ。
勤続年数は三年。
そこそこのベテランで、後輩も何人かいる。
指導者として。
また、道を切り開いていく者として、日々、精進している。
そんなある日、とんでもない事件が起きた。
ブリジット王女のお忍び外交の護衛に選ばれたのだ。
大変名誉あることだ。
俺は張り切り、絶対に成し遂げてみせると気合を入れた。
しかし、帰り道に、あの悪名高い『漆黒の牙』に襲われてしまうという最悪のトラブルに襲われてしまう。
血も涙もない、悪魔のような盗賊団だ。
連中の戦闘能力は異常で、ベテランの騎士でも討伐は難しいと言われている。
噂によると、街を一つ、落としたことがあるとか。
俺は死を覚悟した。
ただ、ブリジット王女を殺させるわけにはいかない。
絶対に。
俺の体を盾にして。
命を燃料にして、ブリジット王女をどうにか安全な場所に避難させる。
そう決意した時……
どこからともなく、アルム殿がふらりと現れた。
正直なところを告白しよう。
最初は、彼の正気を疑った。
アルム殿は、最凶最悪の盗賊団に対して、ペン一つで立ち向かったのだ。
そう、文字を書く、あのペンだ。
ありえないことなのだけど、アルム殿はペンで盗賊団を撃退してみせた。
しかも圧勝。
無茶苦茶すぎる。
剣を極めた剣聖でさえ、ペン一つで盗賊団を相手にすることはできないだろう。
驚きはそれで終わらない。
彼は名のある冒険者ではなくて、ただの執事だった。
そして、そのただの執事がグレートビッグボアを狩り。
スタンピードで大量発生した魔物を一人で壊滅してみせて。
1000の帝国軍を数十で打ち破る策を考えてみせた。
話を盛りすぎ?
物語でも、もう少し自重する?
わかる。
言いたいことはすごくよくわかる。
でも、これは全て真実だ。
実際に起きたことなのだ。
あの執事はおかしい。
「ものすごく、っていう言葉では足りないくらい驚いたが、まあ……味方になったことは嬉しいな」
何度、彼に助けられたことか。
何度、命を救われたことか。
冗談ではなくて、アルム殿は王国の救世主だと思う。
執事ではなくて勇者をやるべきだ。
なんて話を以前、ブリジット王女を通して本人にしたことがあるのだけど……
「俺が勇者? はは、冗談はやめてください。俺はただの執事です。俺なんかに勇者が務まるわけないでしょう」
と、冗談と思われてしまったみたい。
いやいや。
ありえないから。
アルム殿で力量不足だとしたら、他の誰も勇者になることができない。
力、知識、心……その全てが最高峰に達しているのだから。
「まあ、だからこそアルム殿らしいと言えるのだが」
自分が表舞台に立つのではなくて、サポートに徹する。
活躍するのは主のブリジット王女だけでいい。
そうやって、彼はあくまでも執事であろうとしていた。
正直、執事のことはよくわからないが……
徹底的に自分を殺して、主のために全てを捧げる。
その魂はとても素晴らしいと思う。
彼の心を体現しているかのようだ。
「俺も、いつか彼のようになりたい」
執事ではなくて。
彼のような力を持ち、その高潔な魂を持ちたいと願う。
「アルム殿、これからもよろしくお願いします。あなたと共にブリジット王女のために歩けること、誇りに思いますよ」
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