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36話 圧倒的な差

「コロスッ!!! はぁああああああ!!!」


 完全にキレたアルフレッドは、気合と共に魔力を迸らせた。

 それらを己の体に取り込み、身体能力の強化を図る。


「審判、あれは魔法を使っていることになるんじゃないか?」

「ええ、もちろん反則ですね。アルフレッド・イージス、あなたの負けです」

「うるさいっ、黙れ!」

「いえ、あなたは……」

「こんなところで終わってたまるか!!!」

「あー……」


 審判が困った顔に。


 いざとなれば実力行使に出るか?

 そんな迷いを見せて、腰の剣に手を伸ばす。


「このままで大丈夫ですよ」

「え? しかし……」

「大丈夫です。続行でお願いします」

「……わかりました。試合、続行です!」


 言ってもわからない相手には実力行使しかない。

 ただ、その役目は、今は俺が一番適任だろう。


「おおおおおぉっ、これで終わりだぁあああああ!!!」


 身体能力を強化したアルフレッドが突撃してきた。

 さきほどの倍は速い。


 剣を受け止めると、圧も増えていた。

 パワーも倍に増えた、というところか?


「す、すげえ……まさか、あのアルフレッドがこんな力を秘めていたなんて」

「俺、あの剣を10秒も受け止める自信ないぞ……」

「俺も……たぶん、一瞬で剣を持っていかれるよな。あんな攻撃に耐えられるなんて、世界中を探してもいるわけが……」

「そうだ! 本気を出した僕の剣を受け止められる者なんて、どこにもいない! そう、僕こそが世界で一番の剣士であり、騎士なのだよ!!!」


 さらに速度が増した。

 魔力で強化された肉体から繰り出される斬撃は、重く速く鋭く……

 今までの倍以上の力があるだろう。


 俺は冷静に木剣を操り、攻撃を防ぐ。


 受け止めて。

 あるいは流して。

 防御と回避に専念した。


「……なあ、俺の目、おかしくなってないか? すでに1分以上も防いでいるような気がするんだが」

「奇遇だな、俺も同じ光景が見えているよ」

「おい、見ろよ。アルフレッドは息が上がり始めているのに、アルム殿は平然としているぞ」


 騎士達が言うように、アルフレッドは息を切らし始めていた。

 本気モードは長く続かないのだろう。


 一方で俺は、特に変わりない。


「なぜだ!? なぜ、僕の剣が届かない!? 本気を出しているというのに!!!」

「なぜ、と言われても困る。ただ……」

「ただ……なんだ!?」

「稽古にはちょうどいいな」

「……」


 アルフレッドが絶句した。


「「「……」」」


 観戦する騎士達も絶句した。


「剣を使うのは久しぶりなんだ。だから、こうしているとちょうどいい。ようやく剣の使い方を思い出してきたところだ」

「なっ、あぁ……!?」


 アルフレッドは舌打ちしつつ、大きな一撃を繰り出してきた。

 もちろん、それも防ぐ。


 ただ、その間にアルフレッドは後ろへ跳んで距離を取る。


「はぁっ、はぁっ……な、なんなんだ、君は!? その力はいったい……何者なんだ!?」

「ただの執事だよ」

「僕の知っている執事と違いすぎる!!!?」


 アルフレッドの叫びに、観客席の騎士達……ブリジット王女まで、わかるぞ、という感じでうんうんと頷いていた。


 あれ、おかしいな?

 君達、俺の味方だよね?


「くっ……こ、こうなったら、さらに身体強化を!」


 アルフレッドは再び魔力を収束させて、


「ぐっ!? あああぁ……!」


 しかし、途中で顔を青くして、苦しそうな悲鳴をあげた。

 そのまま倒れて、ピクピクと痙攣する。


 二重で強化魔法を使おうなんて、いくらなんでも無茶だ。

 体内で魔力が暴走して意識を失う。

 最悪、死に至る。


「って、まずい!? 誰か手伝ってくれ! すぐに彼を医務室に運ばないと、最悪の事態もありえる!」

「な、なんだって!?」

「おいおい、自爆で負けるとか……」

「言ってる場合か! 急ぐぞ!」


 観客席にいた騎士達が慌てて飛び出してきた。

 審判も賄賂をもらっている場合じゃないと、手伝いを申し出てくれる。


 その後、協力してアルフレッドを医務室に運んだ。




――――――――――――




 医師の的確な治療により、アルフレッドは大事に至ることはなかった。

 その日のうちに意識を取り戻して、翌日、退院した。


 ただ……


「……おい、見ろよ。アルフレッドだぞ」

「……あいつ、騎士の魂と誇りをかけるとか言っておいて、賄賂やルール違反をしたんだろ?」

「……しかも、最後は無茶をしすぎて自爆だぜ? 情けなさすぎるよな」

「くっ……うううぅ」


 そうやってずっと笑いものになってしまうのだけど、それはもう俺の知るところではない。

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一般人を圧倒する素晴らしい戦闘センスだ、感動的だな だが無意味だ チャンバラがどれだけ上手でも無辜の民に剣を向ける蛮族に騎士は務まらない
[気になる点] え?お咎めなし?名誉が傷ついただけ?…闇の組織に加わって面倒臭い事になる前に殺らないと!
[一言] いやぁここまで差があると清々しくていいですなw しかし執事の定義とはいったい・・・?
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