324話 繋がっていく線と線
「……ふむ」
翌日。
私室でヒカリからの報告書を見る。
昨日、『ブラッディファング』という傭兵団を捕らえた。
その目的は……リットらしい。
意外な話でもあり、しかし、納得できる話でもあった。
ブリジット王女は気さくな性格をしてて、王女という立場ではあるが、わりと簡単に城下町に出る。
その行動力と、自分の目で街を見て、人々と目と目を合わせたいという想いが彼女の人気の源だろう。
皆に愛されて。
そして、正義を貫く。
故に、敵は多い。
だから、狙われるとしたらブリジット王女なのだけど……
ヒカリからの報告書によると、傭兵団はリットの誘拐を企んでいたという。
拷問……
もとい、尋問にはセラフィーも参加したらしいから、まず間違いない情報だろう。
なぜリットを狙うのか?
誘拐した後、どうするつもりだったのか?
そこが大きな問題だ。
リットを守るため、それらを知る必要があるというのはもちろんだが……
それだけではなくて、敵の目的を知ることで、それがリットの情報に繋がるかもしれない。
リットは何者なのか?
どこからやってきたのか?
それがわかるかもしれない。
「そして……ここで、ルーベンベルグの名前が出てくるか」
フラウハイム王国は平和な国だ。
優しい人が多い。
ただ、それでも影はあり……
よからぬことを企んでいる者もいる。
そのうちの一人が、男爵の爵位を持つ貴族、レーテ・ルーベンベルグ。
いくらかの黒い噂を持つ者。
放置をすることはよしとしないのだが……
しかし、致命的な問題がある、という証拠を得ることはできず、今は監視対象に留まっていた。
そんなきな臭い人物が今回の事件に関わっている可能性がある。
傭兵団は、彼が依頼主だと自白した。
契約書を交わしていたわけではないので、明確な証拠はない。
証言だけで貴族を処断することは難しい。
「ただ……監視だけではなくて、こちらから動いて探りを入れてみた方がいいかもしれないな」
リットについての情報を得られる機会。
ただ、厄介事の種が生えてきたらしく……
なかなか頭の痛い問題だ。
「どうぞ」
ふと、扉をノックする音が響いた。
返事をすると扉が開いて……
「お兄ちゃん♪」
シロ王女が姿を見せた。
タタタと駆け寄ってきて……
小動物がするような感じで抱きついてくる。
ふむ?
最近……というか、少し前からシロ王女のスキンシップが多くなったような気がする。
その内容も強くなっているような?
……シロ王女も、まだまだ誰かに甘えたい年頃なのだろう。
身近な男は俺しかいないため、男に甘えたい時は俺のところに来るのだろう。
「どうかされましたか?」
「なんとなくお兄ちゃんに会いたいなー、って」
「光栄です」
「それに、ちょくちょく顔を見せてアピールしておかないと、だよね!」
「?」
それはどういう意味なのだろう?
「そうだ」
シロ王女がここにやってきた理由は別として。
これはちょうどいい機会かもしれない。
「シロ王女、少しお願いしたいことがあるのですが」
「お願い?」
「ええ、シロ王女にしかできないことです」
「おー!」
シロ王女の目がキラキラと輝いた。
頼りにされることが嬉しいらしい。
とはいえ、これは本音だ。
たぶん、シロ王女以外の人にこなすことは難しい。
「ちょっとした道具を作っていただきたいのですが……」




