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319話 小さな出会い

「……アレはどうしている?」


「申しわけありません。発見は未だ……」


「急げ。王国に対する切り札となる」


「はっ」


「帝国を打ち倒して、法国の暴走も止めてみせた……王国は、今や巨大な力を持つ。このまま放置すれば……」


「理解しているつもりです」


「なら、アレの重要性は理解しているな?」


「もちろんです」


「なら、次に取るべき行動も理解しているな?」


「迅速に回収いたします」


「期待する。私は、次の研究で忙しい」


「その研究が完成すれば……」


「そのためにもアレが必要なのだ。王国に対する切り札というだけではなくて、貴重なサンプルでもある」


「はい」


「任せた」


「必ずや」




――――――――――




「あ、アニキぃ……」


 へろへろになった様子のヒカリが現れた。

 その隣にはリットの姿が。


 確か、この時間はヒカリがリットの監視についているはずだったが……

 なぜ監視する側がこんなにも疲労困憊になっているんだ?


「どうしたんだ?」

「こ、この子、意外にワイルドっす……」

「?」


 指をさされたリットは、不思議そうに小首を傾げた。


「気がついたら、ぱっと消えているっす……もともと、めっちゃ存在というか気配が薄いから、なかなかわかりづらくて、めっちゃ監視しづらいっす」

「そうか? 確かに常人とは違う気配をまとっているが、見失うほどではないと思うが」

「それはアニキの探知能力が異常なだけっす……」

「正常だ。そもそも、執事として主のことはいついかなる時も気にかけておかなければいけない。故に、その対象が別人になったとしても、その気配を捉えることはできる」

「その理論でいくと、元暗殺者のぼくも、対象を見失うはずがないっすけど……はふぅん」


 かなり疲れている様子で、口から魂が抜けそうになっていた。


 ふむ?


 ヒカリが自身で言っていたように、彼女は元暗殺者だ。

 しかも最強と呼ばれているほど。


 そんなヒカリが見失うなんて……

 リットは何者なのだろう?

 謎だけが増えていく。


 とはいえ、現状、危険は感じられず……

 やはり、しばらくは手元に置いて監視を続けるしかないか。

 その間に調査を進める……それが正解だろう。


「?」


 ふと、リットが動いた。

 予備動作なんてまったくなくて、ものすごい自然体。

 本能で動く動物のよう。


 なるほど。

 ヒカリが苦労するの理由がわかったような気がした。


「ま、またなにかあったっすか……?」

「どうしたんだ?」

「……これはなに?」


 リットの視線の先。

 小さな毛玉があった。


 いや。

 毛玉ではなくて猫だ。

 ぐったりした様子でうずくまっている。


「?」


 リットは特に恐れることなく手を伸ばす。


 猫は逃げない。

 されるがまま、リットにつつかれていた。


 というか、つつくのか。

 こういう場合、撫でるんじゃないのか?

 リットが変わっている、というところを改めて認識させられた。


「これはなに?」


 再び問いかけてきた。


 なんで猫がぐったりしているの、というよりは。

 この生き物はなに? という意味合いらしい。


 猫を知らないなんてありえるのか?

 いったい、どんな人生を送ってきたのだろう。


「この子は猫だ」

「ねこ?」

「動物だよ。ペットとして飼われていることが多いけど……こいつは野良だな。どこからか入り込んできたんだろう」


 城の警備は厳重だが、さすがに猫の侵入を許すな、というのは無茶だ。


「……」


 興味を引いたらしい。

 リットは、じーっと猫を見つめていた。

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