317話 検査をしてみよう
「やあやあやあ、よく来たね」
パルフェ王女の研究室を尋ねると笑顔で迎えられた。
一緒に来たリットは、パルフェを見て俺の後ろにすっと移動した。
もしかして、人見知りしているのだろうか?
今まで、そんな様子はなかったのだけど……
成長しているのだろうか?
「執事君もリット君も、どうぞどうぞ。適当なところに座って」
「……ものがいっぱい」
「確か、つい先日、私が掃除をしたと思っていたのですが……記憶違いだったでしょうか?」
「いやー、ごめんごめん。ちょっと研究に夢中になっていたから、気がついたらこんな感じに。てへ♪」
「……パルフェ王女は、今後一週間、おやつ抜きですね」
「そんなぁ!?」
……そんなやり取りを交わしつつ、研究室の中へ。
今日、ここにやってきたのは、リットの身体検査をするためだ。
なんだかんだ、パルフェ王女の知識と技術はすさまじく……
人間と動物、魔物とは通じるものがあり……
身体検査をするのならパルフェ王女が一番、という結論に。
リットは謎の存在。
以前、シロ王女が言ったように、少しずつ知ればいい。
とはいえ、積極的に調査を進めない理由はないので……
パルフェ王女のところで身体検査をしよう、という話になった。
「それじゃあ、リット君。そこのベッドに寝てくれるかい?」
「うん」
言われるまま、リットはベッドに横になる。
パルフェ王女は慣れた様子で、ベッドの脇にある見たことのない魔道具をリットにつけていく。
「……ん」
「おや、痛いかい? そういうところは気をつけていたんだけど」
「くすぐったい」
「あー……ごめんよ。ちょっとだけ我慢できるかな?」
「うん」
リットはとても素直だった。
正体不明で、子供みたいだけど……
本当に素直でいい子なんだよな。
「30分くらい、そのまま寝ててくれないかな? 後は、こっちで全部やるから」
「寝てるだけ?」
「そそ」
「わかった」
「うんうん、いい子だね」
パルフェ王女は、子供をあやすような感じでリットの頭を撫でた。
少し意外だ。
子供の相手に慣れているような人だっただろうか?
失礼な感想ではあるが、引きこもりの研究者というイメージだったのだが……
色々な経験をして、パルフェ王女も成長しているのだろうか?
「じゃ、始めるよー。さっきも言ったけど、リット君は寝てるだけでいいから」
「うん」
「では、ぽちっとな」
パルフェ王女は、妙なかけ声と共に魔道具本体にあるスイッチを押した。
ふわりと、柔らかい光が広がる。
温かくて心地よくて。
春の木漏れ日のようだ。
それがリットを包み込む。
同時に、魔道具が静かな音を立てて作動する。
「これは……」
どういう仕組みなのだろう?
いくつか魔道具に関する知識は持つものの、見たことがない。
たぶん……
パルフェ王女とシロ王女の合作なのだろう。
そのような跡がところどころに感じられた。
「……」
俺はなにもすることがない。
サポートもできない。
くっ……!
執事として失格ではないか?
なんてもどかしい。
なんて情けない。
とはいえ、下手に口出しをして邪魔するわけにもいかない。
おとなしく結果が出るのを待った。
――――――――――
「……うん、こんなところかな?」
30分ほどしたところで、パルフェ王女はそう言い、魔道具を止めた。
優しい光が収まる。
リットは……
「すぅ……すぅ……」
あまりに心地よかったらしく寝ていた。
特に問題はなさそうだから、このまま寝かせておこう。
「パルフェ王女、結果はどうですか?」
「……んー」
問いかけると、パルフェ王女はなんともいえない表情に。




