表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

302/333

301話 指導はなかなか難しい

 ドガァッ!!!


 とある日の昼下がり。

 騎士団に書類を届けた帰り道、突然、轟音が聞こえてきた。


 周囲のメイド達は……


「あー、忙しい忙しい。嵐の後だから、庭が荒れてて大変だわ」

「えっと、今日のお買い物は……」


 特に慌てていない。


 ちらりと、音のした方に目を向けたものの……

 それだけ。

 すぐにいつもの日常に戻る。


 それは理由があって、みんな、なにが起きたか理解しているのだろう。

 俺も理解していた。


「今日も元気だな……」


 たまには様子を見に行くか。

 そう考えて、俺は、城内にある、騎士が使う訓練場に足を運んだ。




――――――――――




「オラオラオラァッ!!!」

「ふふーん、当たらないっすよ」


 自分の背丈ほどもあるハルバードを手にしたセラフィーが、ヒカリを相手に戦っていた。


 風を斬る音を響かせつつ、ハルバードを己の体の一部のように、自由自在に振り回す。

 それでいて、軌道は鋭く、フェイントも織り交ぜられていた。


 さすがというか……

 久しぶりにセラフィーの戦いを見たものの、すさまじい。

 戦闘技術だけならば、間違いなく、セラフィーは王国一だろう。


 ただ……


「ちっ、ちょこまか逃げるんじゃねえ!」

「おやおやー? すぐに終わらせてやるとか言ってたっすけど、ぜんぜん終わってないっすよ。もしかして、手加減してくれてるっすか? ありがとうっす!」

「ブッコロス!」


 ヒカリが煽り、セラフィーが怒る。


 ……ただの訓練だよな?

 セラフィーが、かなり本気で殺気立っているのだが。


「ヒカリ、セラフィー」

「あ、アニキ!」

「よぅ、アルムじゃねえか」


 放っておくとまずいような気がしたので、声をかけた。

 二人は戦闘を止めて、こちらにやってくる。


「訓練か?」

「はいっす! この身の程知らずが、自分は最強だー、なんて小生意気なことを言っていたので、鍛え直してやろうと思っていたっす!」

「このちびが、あたしよりも強いとか寝言をほざくものだから、ちと身の程をわきまえさせてやろうってな」

「……」

「……」

「「やるか!?」」

「落ち着け」


 この二人、息が合う時はぴたりと合うのだけど……

 合わない時はとことん合わない。


 ひとまず、ただのケンカはやめてほしい。

 この二人がまともに戦うと、怪我では済まない可能性があるし……

 あと、周囲にも被害が出るかもしれない。


「そうだ!」


 名案を思いついたという感じで、ヒカリが顔を輝かせた。


「アニキ、稽古をつけてくださいっす!」

「稽古を?」

「はい! 久しぶりに、アニキに稽古をつけてほしいっす。最近、ちょっと体がなまっているような気がするので」

「おっ、それいいな。あたしともやろうぜ」


 二人は乗り気のようだ。

 俺としても、ヒカリとセラフィーが今以上に強くなるというのなら、それは歓迎すべき話だ。


 それに……

 先の件で、俺も、色々と実力不足を実感したからな。

 ここらで一つ、しっかりと鍛えておいた方がいいかもしれない。


「わかった、やろうか」

「やったっす!」

「うし! じゃ、最初はあたしからな」

「あー、ずるいっす! 自分からっすよ!」

「いや。二人まとめて、同時にかかってこい」


 俺は、その場で軽くステップを踏んで。

 それから、手足を伸ばして体をほぐす。


「よし、いつでもこい」

「「……」」


 なぜか二人の視線が厳しくなる。


「自分達二人を同時に、とか……」

「はっ。アルムも調子に乗ってるみてえだな。おい、やるぞ」

「はいっす! アニキの鼻、へし折ってやるっす!」


 二人は闘志をみなぎらせていく。

 やる気があるのはいいことだ。


「じゃあ、始めようか」




――――――――――




 しばらくして……


「う、うううぅ……な、なんでまったく届かないっすか……」

「アルム、化け物すぎるだろ……」


 立ち上がれない様子のヒカリとセラフィー。

 一方の俺は、少し息が切れた程度。


 でも、ダメだ。

 これでは、まだまだ……姉さんには届かない。

 もっともっと強くならないと。


「よし。ヒカリ、セラフィー。続きをやろうか」

「「ひぃ!?」」

「まだ時間はある。たっぷりと鍛錬を積み重ねていこう」

「い、いや。自分はその、もういいかなー、なんて」

「あ、あたしもそろそろ休憩を……」

「そのようなことでは強くなれない。さあ、やるぞ」

「「鬼だあああああぁ!?」」


 訓練場に二人の悲鳴が響いて、それは城全体に聞こえるほどの声量だったとかなんとか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ