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299話 物思いに耽る執事

「……」


 与えられた自室で、俺はイスに座り、ぼーっとしていた。


 今日は休み。

 特に仕事はないし、今のうちに片付けておくべき仕事もない。

 ゆっくりすることができる。


 帝国にいた頃は、休日は半年。

 もしくは一年に一回あればいい方。


 その日は記念日のようなもの。

 とても貴重な日で、どう過ごすか考えるだけで妙な緊張を覚えていた。


 ただ、王国に来てから、その認識は一変されて……

 週に二日の休み。

 忙しい時は仕事になるものの、その分、後で休みが補填される。


 俺は騙されているのだろうか?

 休みと称して、なにかしら監視されているのでは?


 なんて、最初はそんなことを疑ったものだ。


 まあ、そんなことはないわけで。

 最近、ようやくフラウハイム王国のホワイトな環境に慣れてきた。

 そして、以前の帝国が恐ろしいほどのブラックな環境だということに気づいた。


 ……まあ、まだ、俺はおかしいとかズレているとか、言われることはあるが。


「しかし……休みと言われても、なにをすればいいんだろうな?」


 休みをもらう度に悩んでしまう。


 今までは、仕事、仕事、仕事。

 仕事が日常で、常に頭と身体を動かしているのが普通。


 でも、今は、週に二回は休めと言う。


 休みの過ごし方を知らない俺にとって、なかなかに難しい問題だ。

 それに……


「……姉さんのことが気になるんだよな」


 生き別れになっていた姉さん。

 なぜか、帝国の残党と行動を共にしていた。


 姉さんが帝国人だからなのか?

 それとも、俺と同じ様に、帝国の残党であるベルカに忠誠を捧げているのか?

 考えるものの、答えはわからない。


「……散歩に行くか」


 部屋にとじこもり、一人で考えても鬱屈とした気分になるだけ。


 そう思った俺は、着替えて外に出た。




――――――――――




「やはり、散歩はいいな」


 城内を歩いて、すれ違う人達と挨拶を交わす。

 たったそれだけなのだけど、心が晴れていく。


 外の新鮮な空気を吸い。

 人と接して。

 そうすることで、気持ちが上向いていくのがわかった。


「オンッ!」

「うん?」


 力強い鳴き声。

 見ると、フェンリルがこちらに駆けてきて、礼儀正しくおすわりをした。


 俺とパルフェ王女でテイムしたヤツだ。

 要塞攻略が終わったからさようなら、なんていうのは薄情すぎる。

 それに、パルフェ王女も面倒を見る気たっぷり。


 というわけで、こいつもフラウハイム王国まで連れてきた。


 最初は、城の兵士達を中心に驚かせてしまったものの……

 体は大きく、伝説の存在ということで威圧感はあるが。

 実は、意外と人懐っこい性格で。

 今では、メイド達も気軽に撫でたり餌をあげたりしていて、マスコット的な存在になっていた。


 伝説のフェンリルがマスコット扱い……それでいいのだろうか?

 ただ、本人……いや、本犬?

 は満足そうなので、よしとしておこう。


「どうした?」

「オフゥ……オンッ!」

「お、おい?」


 フェンリルは、俺の服の端をぱくっと咥えた。

 そのまま、ぐいぐいと引っ張る。


 こっち、こっち。

 そう言っているかのようで、どこかに連れていきたいみたいだ。


「わかった。自分の足で歩くから、場所を教えてくれ」

「オンッ!」


 フェンリルは、了解したとばかりに俺の服を離した。

 そして、その巨体を揺らしつつ、ゆっくりと歩いていく。

 着いてこい、ということだろう。


「いったい、誰がなんの用なのか」


 ……まあ。

 なんとなく、想像はつくのだけど。

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