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292話 乱れる心、紡げない言葉

 ベルカには逃げられてしまったものの、ひとまず、旧帝国の野望を打ち砕くことはできた。


 まずは、そのことを喜び……

 簡単な祝勝会が開かれる。


 フェリス様が乾杯の音頭を取り。

 パルフェ王女だけではなくて、なぜか、俺も皆の前で称賛されてたり。


 それと、リセも重大な任務を成し遂げたことで、称号を得ていた。

 騎士としては最上級の名誉だ。

 彼女の目元はわずかに潤んでいた。


 ……その後は、笑顔のあふれる砕けたパーティーだ。


 みんなで美味しい料理を食べて。

 みんなで楽しく酒を飲んで。


 明るく賑やかな時間が続いていく。


「……ふぅ」


 ある程度、パーティーを楽しんだところで、俺は、そっと会場を後にした。

 中庭に移動して、酒で火照った体を冷ます。


「……」


 夜空を見上げると、あいにくの曇り空だった。


 夜の闇を流れる雲。

 それに月が隠されてしまい、灯りを手にすることはできない。


 ……その光景は、今の俺の心中を表しているかのようだ。


「やっ」

「パルフェ王女?」


 声をかけられて振り返ると、パルフェ王女がいた。


 にこやかに手を振りつつ、こちらにやってくる。

 そのまま隣に立ち、同じように夜空を見上げた。


「こんなところで、どうしたんだい?」

「……少し飲みすぎてしまったので、酔いを覚まそうと」

「執事君でも飲み過ぎるなんてこと、あるんだね」

「それは……」

「あのメイドさんのこと、考えていた?」

「……」


 パルフェ王女は我が道を行くような印象を受けるけれど。

 でも、きちんと周りを見ていて……


 こうして、俺のことも気にかけてくれているのだろう。


 その優しさを振り払うようなことをしてはいけない。

 俺は、素直に頷いた。


「そっかー……執事君のお姉さんなんだっけ?」

「そうですね……はい」

「なんで、曖昧な返事なの?」

「久しぶりに……本当に久しぶりに会ったので、少し確信の持てないところがありまして」

「じゃあ、あれはよく似た別人?」

「……いえ。姉だと思います」


 俺の知る姉さんは、小さい頃の記憶で止まっている。

 そこから先は知らない。


 でも、心が感じた。

 魂で理解した。


 この人は姉だ。

 俺の姉で……


 エリン・アステニアだ……と。


「どうして、ベルカに協力をしているか、それはわかりませんが……あれは、姉で間違いないと思います」

「そっか」

「……」

「……」


 沈黙。

 不思議に思い、尋ねる。


「聞かないんですか?」

「聞いてほしいのかい?」

「そう……ですね」


 どうなのだろう?

 俺は、姉のことを誰かに聞いてほしいのだろうか。

 話したいのだろうか。


 少し考えて、小さく頷いた。


「よければ、いいでしょうか?」

「ばっちこい」


 ちょっと失礼な感想ではあるのだけど……

 とても男前な王女だな、と思った。


 それと、もう一つ。

 なんとなく、ブリジット王女を連想して……

 やはり姉妹なのだな、とも思う。

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