29話 執事ですが
最後に大事なお知らせがあるので、そちらも見ていただけると嬉しいです。
※4月8日 お知らせ追記しました。
「ふんふーん♪」
仕事を終わらせたブリジット王女は、鼻歌を歌いつつ本を読む。
最近、王都で流行っている恋愛小説だ。
琴線に触れるものがあるらしく、時折、きゃーとか黄色い悲鳴を上げている。
かと思えば、「うわうわ、そこまでいくの……?」とか驚いている。
それはいい。
それはいいのだけど……
「あの……ブリジット王女?」
「んー、なに?」
「どうして俺が膝枕をしているんですか?」
ブリジット王女は俺の膝に頭を乗せて、その状態で本を読んでいた。
ニヤニヤとした視線がこちらを捉える。
「なになに? 恥ずかしい? 照れちゃっている?」
「いえ、別に」
「即答……私、悲しい……」
「それで、どうしてなんですか?」
「今日は、アルム君が私を甘やかす日なのー。だから、王女様の命令は絶対!」
「絶対ですか。なら、仕方ないですね」
「そうそう、仕方ないの。だから、私をとことん甘やかしてね♪」
命令とあれば仕方ない。
膝枕をしつつ、そっとブリジット王女の頭を撫でる。
「うひゃ」
「なんで悲鳴をあげるんですか?」
「いやー、本当に甘やかされるとは思っていなくて。やるね、アルム君」
「ブリジット王女に鍛えられましたからね」
「アルム君は私が鍛えた、ドヤッ」
そこで得意そうにされても。
「その指輪、よく似合っているね」
「これ、本当にいただいてもよろしいのでしょうか?」
リシテアと戦う前にお守りとして預かった指輪。
戦いの後に返そうとしたら、「あげる♪」と言われてしまった。
「いいよいいよー」
「しかし、大事なものなのでは?」
「そうだね。でも、アルム君の方が大事だから」
「……ブリジット王女……」
「それと、マーキングのようなものかな? ほら。私の指輪をつけていることで、アルム君は私のもの、っていう感じ」
「言いたいことはわかりますが、マーキングという言葉はちょっと……」
犬を連想してしまうので勘弁してほしい。
「ねえねえ、アルム君。もっと撫でて?」
「こうですか?」
「んー……もうちょっと、愛情を込めて」
「愛情と言われても……」
「私のこと嫌い?」
「そんなことは絶対にないです」
「なら好き?」
「……よくわかりません」
俺の初恋は少し前に完全に終わったばかりなのだ。
すぐに次の恋に、というわけにはいかないだろう。
「そっか。ならよし」
「いいんですか?」
「わからないなら、私にもまだチャンスはあるっていうことだからね。そのうち振り向かせてみせるよ?」
「ポジティブシンキングですね。というか、そういう口ぶりだと、まるで俺のこと……」
「ふっふっっふ、さて、どうでしょう?」
ブリジット王女はニヤニヤと笑う。
こちらの反応を見て楽しんでいるのか、あるいは……
「……でもさ」
ふと、ブリジット王女が憂いのある顔になる。
そっと窺うようにこちらを見た。
その瞳はどこか幼い。
いたずらをした子供が親に怒られるのを恐れているかのようだ。
どうしてそんな顔をするのだろう?
「アルム君はこれでよかった?」
「え?」
「本当にこれでよかった? 私のところで……王国に来てよかったと思う? あるいは、帝国に戻りたいとか思っていない?」
「そんなことは……」
「……ごめんね。私がアルム君を連れてきたのに、こんな質問をして」
ブリジット王女は立ち上がり、俺に背中を見せた。
その表情はわからない。
ただ、不安そうに声が揺れている。
「なんだかんだ、アルム君の故郷は帝国だから。そこから引き剥がすようなことをして、本当によかったのかな、ってたまに迷っちゃうんだ」
「ブリジット王女でも迷うんですね」
「迷うよ、もちろん。私だって、女の子なんだよ?」
「十分に理解しています」
「むー、本当かな?」
「それと……少しの間、失礼を許してください」
「え? ……ひゃっ」
ブリジット王女を後ろから抱きしめた。
びくんと震えるものの、抵抗することはない。
俺を受け入れるかのように、そっと手を重ねてくる。
「俺、なにも気にしていません。というか、ブリジット王女には感謝しかありません」
「本当に……?」
「本当ですよ」
証拠を示すかのように、そのままブリジット王女を抱きしめる。
「俺、王国に来られてよかったです。ブリジット王女に出会うことができて、本当によかったです。あのまま帝国にいたら、きっとおかしくなっていた。あなたに助けてもらった。いや……」
恩を感じているものの、でも、それだけじゃない。
他にも抱えているものがある。
それを知ってもらいたいと思い、途中で台詞を変えた。
「俺は今、生きがいを感じているんです」
「生きがい……?」
「はい。あなたに出会うことができて、最高の主を見つけることができて。帝国にいた頃には、こんな気持ちになることはできませんでした」
「……アルム君……」
「だから、ブリジット王女に出会うことができた運命に感謝しています。あなたの隣にいることが俺の幸せです」
「……もう」
ブリジット王女はそっと俺を振り返る。
笑顔だった。
向日葵のように、明るく綺麗な笑顔だ。
ずっとこの笑顔を守りたい。
隣で見ていたいと、心の底から思う。
「それ、殺し文句っていうやつだね」
「そうでしょうか……?」
「そうだよ。キュンってきちゃったもの。まったく」
ブリジット王女は苦笑して……
それから、そっと俺の頬に手を伸ばす。
「これからも一緒にいてくれる?」
「もちろん」
「よかった。その返事を聞くことができて、ものすごく満足。それにしても……」
じっと見つめられてしまう。
「アルム君のおかげで、私も変わることができたかも。一国の王女を変えちゃうなんて、アルム君は本当に規格外だね。いったい何者なのかなー?」
「それはもちろん、決まっています」
答えは一つだ。
「執事ですが、なにか?」
【作者からのお願い】
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
感想や評価などなど、応援していただきとても嬉しいです。
当初の予定では、ここで終わりにしようと思っていたのですが……
少し悩んでいます。
なので、この後の反響を判断材料にさせてください。
『まだ読みたい』『もっと続いてほしい』など思っていただけたなら、
ブックマークや☆評価で応援していただけると嬉しいです。
ストレートな話ですが、ポイントをいただけるとモチベーションが上がり、
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率直な評価で構わないので、
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逆にここまででいい、と思った場合はブックマークなどを外してもらっても大丈夫です。
素直な感想、評価をよろしくお願いします。
(続けるかどうかは数日以内に答えを出します)
※4月7日追記 もう数日だけ考えさせてください、すみません><
※4月8日追記 たくさん応援していただき、ありがとうございます!
読んでいただけているんだなあ、と思うことができまして……
ここで終わりにしないで、続きを書いてみようと思います!
楽しんでいただけるようにがんばるので、
またブックマークや評価、感想などで応援していただけると嬉しいです。
続きは来週の月曜(10日)から、
月・水・金の週三回更新を考えています。
またお付き合いいただけると嬉しいです。




