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276話 おや? フェンリルの様子が……

「ぐるぅ……」


 さらなる戦闘に備えて、身構えていたのだけど……


 なぜか、フェンリルは戦闘を停止してしまう。

 警戒は解いていないが、向こうから襲ってくることはない。


 様子を見ているのか、じっとこちらに視線を送ってきていた。


「なんでしょう?」

「わかりませんが……なにが起きても対応できるよう、警戒は続けましょう」


 いつでも動けるようにしつつ。

 相手の動きを見逃さないように、しっかりと見る。


「……」

「……」


 五分くらい、にらみ合いを続けただろうか?

 さすがにおかしいと感じた時、


「おやおやおや……これはまた、すごいことになっているね」

「パルフェ王女!?」


 安全圏に退避したはずのパルフェ王女が姿を見せた。

 さすがに慌ててしまい、フェンリルから視線を逸らしてしまう。


 しまった……! と、焦るのだけど。

 ただ、フェンリルが襲ってくる様子はない。


 じっとこちらを見て、低く唸るだけだ。


「パルフェ王女、早く後方へ! まだ、戦いは終わっていません!」

「いや、終わっているよ」

「え?」


 パルフェ王女は、無警戒に、すたすたとフェンリルのところに歩み寄る。

 あまりにも自然に動くものだから、警告が遅れてしまう。


「なっ……早く逃げてください! そいつは……」

「ほら、終わっている」


 パルフェ王女は、フェンリルに攻撃されることはなくて。

 目の前まで歩み寄ると、フェンリルの頭をぽんぽんと撫でた。


 フェンリルは小さく唸っているものの、嫌がる様子も攻撃に出る気配もない。


 ……どういうことだ?


「……もしかして、パルフェ王女は、私達に理解できない方法で、すでにテイムに成功していたのですか?」

「なんと! それはまた、すごいでありますね。私は、なにをされたのか、まったくわかりませんでした」

「テイムには成功したよ。ただ、ボクはなにもしていないかな」

「え?」

「なにかしたのは……アルム君、キミだよ」

「……なんですって?」


 パルフェ王女の言葉の意味がわからず、ついつい聞き返してしまう。


 パルフェ王女は苦笑しつつ、フェンリルを撫でていた。


「フェンリルをテイムするから、とっておきの餌とか道具とか、色々と揃えてきたんだよね。それだけで、かなりの額……ぶっちゃけ、一年くらいは遊んで暮らせる額。そんなものを用意したんだけど、まさか、全部、無駄になるとはねぇ」

「えっと……すみません、話が見えてこないのですが」

「ボクじゃなくて、キミがこの子をテイムしたんだよ」

「私は、なにもしていませんが……」

「戦い、その力を見せつけただろう? それでこの子は、キミには敵わない、ボスとして従うべきだ……そう判断したんだよ」


 そんなばかな。


 そう否定したくなるのだけど、フェンリルが戦うのを止めたことは事実。

 それと、今気づいたのだけど、フェンリルは俺を見ていた。

 隣にいるリセのことは、まるで気にしていない。


 俺が右に動く、フェンリルの頭も右へ。

 左に動くと、左へ。


「マジですか……」


 さすがに驚いてしまい、執事らしからぬ言葉をこぼしてしまう。


「あはははっ、フェンリルをテイムした執事とか、世界初……というか、史上初じゃないかな? うんうん、やっぱりキミは面白い。どうだい? 今からでもボクを主として、研究に協力してくれないかな?」

「……申しわけありませんが」


 俺の主は、ブリジット王女、ただ一人だ。


 もちろん、パルフェ王女が嫌いということはない。

 王女というだけではなくて、一人の人として、好ましく思う。

 なにかあれば力になりたいと思うし、支えたいと思う。


 ただ、執事として全てを捧げられるかというと、違うわけで……


「残念、振られちゃったか」

「申しわけありません」

「別にいいよ。言ってみただけで、そこまで本気じゃないからね。姉さんを相手に、本気でケンカを挑むつもりはないよ。まあ、シロは本気っぽいけど」


 ものすごくコメントに困る。


「なにはともあれ、ミッションコンプリートだ。おつかれさま」

「……はい」


 当初と違う流れになったものの、最終的に、望む結果を得ることができた。

 それは喜ぶべきことなのだけど……


「……来るか?」

「うぉん!」


 手を差し出すと、フェンリルは嬉そうに鳴いて、こちらに歩いてきて頭を寄せてきた。

 さきほどまで警戒した様子を見せていたのは、受け入れられるかどうか不安に思っていたから……なのか?


「フェンリルを従える執事……アカネイアで伝説になるかもしれないね」

「やめてください……」


 その光景を想像して、げんなりしてしまうのだった。

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娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!

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