表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

272/333

271話 伝説と呼ばれている魔物

 アカネイア同盟国には、伝説と呼ばれている魔物が存在する。


 フェンリル。


 地上で活動する魔物の最高峰と呼ばれている存在だ。

 音よりも速く地上を駆けて。

 鋭利な爪と牙は鋼鉄を切り裂いて。

 銀色の毛は鉄よりも硬い。


 もしも街が襲われたのならば、たったの一頭で壊滅するだろう、と言われている驚異的な存在だ。


 とはいえ、実際にそのような事件が起きたことはない。

 フェンリルは驚異的な力を持つものの、その性格は温厚で、自分から人間を襲うことはない。

 牙を向ける時は刃を向けられた時だけ。


 魔物でありながらも魔物らしくない、貴重な存在だ。


「というわけで……そのフェンリルをテイムしに行くぜ!」


 迷彩服やリュックなど、探索装備に身を包んだパルフェ王女が元気よく言う。

 その後ろで、俺とリセはため息をこぼす。


「どうして、このようなことに……」

「潜入の可能性を少しでも上げるため、より良い魔物を……フェンリルをテイムする必要があると、そうパルフェ王女がおっしゃったからでありますね……」

「作戦の前に、王女が最前線に……」

「王女でなければテイムは不可能ということなので、もう仕方ないかと……」


 ついでに言うと、護衛は俺とリセの二人だけ。

 本当はたくさんの騎士に同行願いたいのだけど……


 それではフェンリルを警戒させてしまうと、パルフェ王女が譲ってくれなかった。

 結果、護衛は俺達二人だけ。


 ……胃が痛い。


「まあ、こうなってしまってはもう仕方ない……本番の前の演習と思い、がんばりましょう」

「ええ、そうでありますね」

「おーい、二人共ー! なにのんびりしているんだい? 早く行くよ」

「はい、ただいま」


 俺達は、どこか楽しそうにするパルフェ王女の後をついていった。




――――――――――




 やってきた場所は、アカネイア同盟国の南にある森林地帯。


 抱負な木材資源を確保できる場所なのだけど、同時にいくつもの危険が潜んでいる。

 獣は魔物はもちろん……

 一番の問題は、天然の迷路となっているところだ。


 地図を持っていないと確実に迷うらしい。

 その地図も、植物の成長が異様に早いらしく、一月毎の更新が必要になるのだとか。


「このような場所にフェンリルが……天然の要塞ですから、そこで守りを固めているのでしょうか?」

「んー……ボクの考えはちょっと違うかな? フェンリルは、魔物にしては温厚で争いを好まない。だから、余計な争いを避けるために、わざわざこんなところに隠れているんじゃないかな?」

「なるほど」


 納得の理由だった。


 それにしても、パルフェ王女は魔物の生態に詳しいな。

 そういう研究をしているのだから当然かもしれないが……

 ここまでの知識を得るには、普通の努力では無理だろう。

 俺が想像できないような勉強と研究を重ねてきたはず。


 ……パルフェ王女は、なぜ、そこまで魔物の研究に熱心なのだろう?


 ふと、そんな疑問を抱く。


 楽しいとか。

 興味深いとか。

 そういう理由は聞いてきたのだけど……


 なぜ魔物の研究を始めて、今に至るまで続けているのか?

 その根源的な理由を聞いたことはない。


「質問をよろしいでありますか?」


 ふと、リセが口を開いた。

 その視線はパルフェ王女に向けられている。


「ん? なんだい?」

「このような発言は失礼であると、それは承知しているのありますが……」

「いいよ、いいよ。ボクは、そんな狭量なつもりはないからね。大抵のことは笑って済ませられると思うぜい」

「では……パルフェ王女は、あのフェンリルをテイムすることができるのですか?」


 ともすれば、その質問はパルフェ王女の力量を疑うものだ。

 侮辱と取られても仕方ない。


 ただ、パルフェ王女は怒ることなく。

 逆に、楽しそうに笑う。


「うんうん、もっともな質問だ。そういう疑問を持ち、きちんと言葉にすることは大事だねえ」

「失礼は承知でありますが、自分には、あのフェンリルをテイムできるとは……あ、いえ。パルフェ王女に限らず、そのようなことをできる人を知らない故」

「ま、伝説の魔物とか言われているからねー。物語なんかだと味方になってくれたりもするけど、実際にテイムしたっていう記録は、今のところないね。ボクが初めてになるのかな?」

「なんという自信……絶対に成功すると、そう確信しているのでありますね? さすがでありますよ」

「いや? あまり成功する自信はないかな」

「え?」

「ぶっちゃけ、成功率は10パーセントもあればいい方かな」


 パルフェ王女は、なんてことのないように、あっさりとそう言うのだった。


◆◇◆ お知らせ ◆◇◆

既存の作品を大幅に改稿して、リファイン版の新作を書いてみました。


『 娘に『パパうざい!』と追放された父親ですが、辺境でも全力で親ばかをします!』

https://ncode.syosetu.com/n3620km/


こちらも読んでいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ