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267話 国境を超えて

 旅に出て三日目。

 国境を超えて、アカネイア同盟国内に入る。


 天気は快晴。

 気持ちのいい青空が広がっている。


 そんな天気は、俺達の旅を示しているかのよう。

 今まで問題らしい問題が起きることはなくて、順調に旅の工程を消化していた。

 この調子でいけば、一日ほど時間を短縮できるかもしれない。


「アルム君、この辺りで合流だっけ?」

「はい、そうですね。同盟国から部隊が派遣されると聞いています」


 今は、足を止めて同盟国からの使者を待っているところだ。


 同盟国の領土に入って少ししたところで、向こうの部隊と合流。

 そのまま残りの道を進む……という予定が組まれていた。


 自国で起きた問題解決のため、他国から使者が……しかも王族がやってきてくれる。

 万が一でもなにかあってはいけないと、途中で、同盟国からの部隊も合流することになっていた。


 本当は、旅の始めから同行したかったらしいが……

 他国の軍隊がぞろぞろと、気軽に足を踏み入れるわけにはいかない。

 当事者同士では納得していても、事情を知らない民が見れば、なにが起きた? と不安になるかもしれないからだ。


 それならば説明をすればいいのでは? となるかもしれないが……

 そうなると、同盟国で起きた事件の説明もしなければならず。

 あるいはごまかす必要が出てくるため、それはあまり好ましくない。


 なので、アカネイア同盟国の領土内に入ったところで合流する手筈になっていた。


 なっていたのだけど……


「ちょっと遅いかも?」

「そうですね」


 合流予定時間は過ぎている。

 とはいえ、大幅な遅刻というわけではない。

 軍を動かすとなると、なにもかも計画通りに、というのはなかなか難しく……

 多少の誤差はやむをえない。


 ……とはいえ、少し気になるな。


 ただの誤差であればいいのだけど、少し嫌な予感がした。

 根拠はないが、こういう予感はバカにできない。

 勘というものは経験則が元になっているため、わりと的中するものだ。


「少し先の様子を見てきますね」

「うん、了解。それなら、いくらか騎士を連れて……」

「おっと。そういうことなら、ボクが行こうじゃないか」


 話を聞いていたらしく、パルフェ王女が自信たっぷりに言う。


「そんなこと許可できるわけないでしょう? どこの世界に斥候に出る王女がいるの?」

「物語の中に」

「あのね……」

「史実でもいるぜ? ほら。昔、西の方で栄えた国では、戦争では必ず最前線に立ち、自ら剣を振るう、修羅王女がいたっていう話があるだろう? あれ、実際にあったことって、たくさんの歴史学者が証明しているから」

「それとこれとは話は別! パルフェは、修羅王女なんかじゃないでしょう? 魔物の研究は得意だけど、戦闘は……というか、体を動かすことはからっきしじゃない」

「大丈夫、大丈夫。そこは、ボクの可愛い魔物達にがんばってもらうから」


 パルフェ王女は、ポケットから笛を取り出して、それを吹いた。

 狼型の魔物が忠犬のごとく駆けてきて、ビシッと綺麗に足を止める。


 パルフェ王女は、よしよしと彼らの頭を撫でつつ、一頭の背中に乗る。


「ライドオン! ほら、これならよし」

「よし、じゃなくて……」

「実際、ボクが動くのが適任だぜ? この子達なら馬よりも速く、なにが起きても柔軟に対応できるからね」

「……その子達を騎士に貸すことは?」

「乗りこなすには、しばらくの訓練が必要だねえ。ただ、執事君なら、訓練なしで乗りこなすことができそうだけど」

「そうですね。問題なさそうです」

「本当に乗りこなしていた!?」


 一頭の背中を借りて、合図を送る。

 魔物は俺に応えてくれて、軽く周囲を駆けた。


「……絶対に無茶はダメだからね? 興味本位で突っ込むのもダメ。好奇心を出して、藪をつつくようなマネもダメ。わかった?」

「オッケー」

「はあ……アルム君、お願いしてもいいかな?」

「はい、わかりました」


 ……こうして俺は、パルフェ王女と一緒に、少し先の様子を見に行くことになった。




――――――――――




「……たまに思うんだけど、執事君は予知能力でも持っているのかい?」

「そのようなものはありません。ただの経験則ですよ」


 パルフェ王女と一緒に先の様子を見に行って……

 そして、魔物と交戦するアカネイア同盟国の部隊を発見した。


「怯むな! 押し返すのでありますよ!」


 指揮を取るのは、リセだ。


 的確な指示を飛ばしつつ……

 己も剣を振るい、ゴブリンやトレントなどの魔物を蹴散らしていく。


 ただ、数の差が多い。

 倒しても倒してもキリがなくて……

 少しずつ押されていた。


 リセは臨機応変に動いている。

 対応が早く、そのおかげで粘っているものの……

 形勢逆転に繋がることはない。


 ふむ……?


 これだけの数の魔物が相手なら、優秀な騎士であるリセが押されても仕方ないと思う。

 むしろ、ここまで戦いを維持できていることに驚きだ。


 ただ……


 この数の魔物はどこから現れた?

 それだけじゃなくて、本来は無秩序に暴れ回るだけのはずなのに、俺達と同じように、意思統一がされているような……


「執事君、どうしたんだい?」

「……いえ、なんでもありません」


 疑問はある。

 でも、考えるのは後だ。

 今はやるべきことをやろう。


 そして、俺のやるべきことは……

◆◇◆ お知らせ ◆◇◆

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こちらも読んでいただけたら嬉しいです。

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