264話 応援しているよ
その後……
フライハイム王国の関係者で会議が開かれて。
議題は、フェリス様からもたされた元帝国の兵器強奪事件について。
詳細は不明ではあるが、恐ろしい兵器が何者かに強奪された。
もしも悪用されたら、どのような被害が出るかわからない。
同盟国だけではなくて、周辺国家にも被害が出るかもしれない。
故に力を貸してほしい。
……正直なところ、都合のいい話ではある。
帝国の問題は、主に同盟国が対処すべき。
兵器を見落としていたこと。
強奪されたこと。
その失態のツケをフライハイム王国が払う必要はまったくないのだけど……
とはいえ、放置することで被害が出ることは避けたい。
それに、同盟国とは友好的な関係を築き続けたい。
そのために、ある程度の無茶は聞くべきという展開になって……
ゴルドフィア王を始め、今回の件は力を貸すべき、という判断に。
――――――――――
「ふむ」
城内を移動しつつ、その様子を見る。
数日前から慌ただしく、誰もが忙しそうにしていた。
アカネイア同盟国からフェリス様達がやってきて、三日。
助力要請を正式に受けることとなり……
その準備で、城中が慌ただしくなっていた。
俺も色々な人の手伝いをしている。
仕事をして。
仕事をして。
仕事をして。
気がつけば徹夜が続いていた。
そのことがブリジット王女にバレてしまい、強制的な休暇を与えられることに。
俺一人、休むわけにはいかないのだけど……
ブリジット王女だけではなくて、城で働く人達にも心配をされてしまい、素直に休むことにした。
半日ほど寝て。
それから昼を食べて、散歩ついでに城内の様子を見ることに。
「……やはり、俺も仕事に復帰するべきでは?」
「キミは、本当にワーカーホリックだねぇ」
「パルフェ王女?」
聞き覚えのある声に振り返ると、パルフェ王女がいた。
いつもの白衣姿ではなくて、綺麗なドレスを身に着けている。
あまり派手にならない程度に。
それでいで本人に魅力を引き出すように、アクセサリーもセットしていた。
「……パルフェ王女???」
「今、ものすごく首を傾げたね」
やれやれとため息。
「ボクだって、おしゃれくらいするぜ?」
「……失礼しました」
「まあ、こんな窮屈なドレス、すぐに脱ぎ捨てたい、っていうのが本音だけどね」
やめてくださいね?
本当にやりかねないので恐ろしい。
「アカネイア同盟国の件で、ボクにも意見が求められてね。これから会議に出るところなのさ」
「そうだったのですね」
パルフェ王女は変わり者ではあるものの、その知識はとても広く深い。
頭の回転も早く、常人では思いつかないような発想を持つ。
彼女が会議に参加すれば、あるいは大きく前進するかもしれない。
「会議の結果にもよるけど、たぶん、姉さんが同盟国に赴くことになると思うんだよね」
「ブリジット王女が?」
「事件のこともそうだけど、これを機会に、両国間の友好をアピールしたいみたい」
「なるほど……」
「ってことは、キミも一緒に行くんだろう?」
「そうですね」
俺は、ブリジット王女の専属執事だ。
彼女の傍にあることが俺の仕事であり、使命だ。
「大丈夫?」
「え?」
「だって、同盟国に行くんだろう? 同盟国ってことになっているけど、元は帝国。キミは、色々と思うところがあるんじゃないかな?」
「それは……」
すぐに言葉を繋ぐことができない。
パルフェ王女の言う通りだ。
今は同盟国となっているけど、元は帝国。
そして帝国は俺の故郷で……
まさか、このような形で里帰りをすることになるとは思っていなかった。
「心配していただき、ありがとうございます。ですが、問題ありません」
「本当に?」
「ええ。気持ちの整理はもうついていますから」
「ふーん……ま、キミがそう言うのならそうなんだろうね。そういうことにしておくか」
パルフェ王女は、ニヤリと不敵に笑う。
心を見透かされているみたいで……
まいったな。
強がってみたものの、それはバレているみたいだ。
「はい、これ」
突然、パルフェ王女から親指くらいのサイズの綺麗な石を渡された。
「これは……?」
「綺麗でしょ? ボクの研究の過程で、偶然できた鉱石。特になんてことはないけど、まあ、お守り代わりにどうかな、って」
「偶然? ということは、けっこう貴重な品では……」
「いいのいいの。ボクは、けっこうキミのことを気に入っているからね。これくらいはさせてくれないかな?」
「……ありがとうございます」
パルフェ王女なりに、俺のことを心配してくれて。
そして、応援してくれているのだろう。
本当に、この国の人は優しい。
そんなところにいることができて、俺は幸せものだな。
「ボクを抱いてもいいんだぜ?」
「それは遠慮します」
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
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『悪役令嬢ものの悪役王子に転生してしまったので、改造コードを使ってバッドエンドを回避しようと思います』
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