表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

264/283

263話 事件と噂と兵器と

 表に出ていないものの、アカネイア同盟国を束ねる者……フェリス。

 その補佐を務めるライラと、護衛の騎士のリセ。


 フラウハイム王国にやってきた彼女達は、わりと、とんでもない情報をもたらしてくれた。


「最悪の兵器……?」


 いくらかの話を重ねて。

 その後、フェリス様の口から語られたのは、とある兵器の話だった。


「悪いけど、詳細は知らないの。ただ、その兵器を所持するものは、どのような敵であれ打ち砕くことができる、って言われているわ」

「その兵器が何者かに強奪された……?」

「そういうこと」


 ブリジット王女の問いかけに、フェリス様は淡々と頷いてみせた。


 もっと焦るような問題なのだけど……

 そのようなことをしても意味はないと、割り切っているのかもしれない。


「失礼。質問をよろしいですか?」


 どうしても疑問に思い、口を挟む。

 本来なら執事が口を挟めるようなことではないのだけど……


 事前にブリジット王女から、なにか思ったことがあれば好きに話をしてもよい、と許可をもらっている。


 本当に好きに話をするつもりはないのだけど……

 ただ、聞き流せない疑問がある時は別だ。


「強奪の経緯や詳細の話をする前に、一つ、確認しておきたいのですが……」

「ええ、どうぞ」


 フェリス様は特に不快そうな感情を見せるわけではなくて、耳を傾けてくれた。

 器の広い人なのかもしれない。


「そのような兵器を、どうして今まで放置されていたのでしょう?」

「あー……そうよね、やっぱり、そこが気になるわよね」


 大きなため息。

 痛いところを突いてしまったようだ。


「そこは、あたし達の責任よ」

「と、いうと……」

「言い訳になるけど、帝国の闇って思っていたよりも深くて……革命後、色々と調査を進めていたんだけど、なかなかかつての暗部の全容を暴くことができなくて」

「なるほど……兵器の存在を知ったのも、つい最近、というわけなのですね?」

「そういうこと。あー……口にしておいて、これ、本当に情けない話ね」


 フェリス様は眉を寄せて、難しい表情を作る。


 本当なら彼女の責任ではない。

 全ての元凶は帝国で……

 彼女は後始末を任されただけ。


 それでも、自分の責任と迷うことなく口にすることができる。


 ……こういう人は信用できそうだ。


「前々から噂は聞いていたの」


 ライラ様が補足をする。


「とんでもない兵器が存在する、って。まだ帝国があった頃、私もそういう噂を聞いていたわ。でも、あくまでも噂は噂。そんな圧倒的なものがあるはずがないと……あるのなら、革命時に投入されているだろうと、あまり真剣に捉えていなかったのよ。責任は、私にもあるわ」

「あの……自分も、そういう噂を聞いたことがあります。しかし、噂だろうとまともに捉えることをせず……今思うと、とても恥ずかしく、無責任なことをしたと反省しております」


 リセも援護をする。

 フェリス様は、二人にとても慕われているのだろう。


 ライラ様とリセに慕われている。

 それだけで、フェリス様の人柄をそこそこ理解できたような気がした。


「なるほど……了解いたしました。不躾な質問に答えていただき、ありがとうございます」

「いいの、気にしていないわ。あなたの疑問はもっともだもの」


 やれやれ、ともう一度ため息をこぼしてから、フェリス様は続ける。


「それで……情けない話だけど、今回の件、私達の手に余っていて……」

「ふんふん……王国に手を貸してほしい、っていうわけだね?」

「正解よ」


 ちょっと苦い表情をしつつ、フェリス様は頷いた。


 自分達だけで解決することができない。

 そのことを大きな問題と捉えているようだ。


 ただ、のんびり手をこまねいているわけにはいかない。

 解決のために打てる手は全て打つ。

 そう考えて、フラウハイム王国にやってきたのだろう。


「……うん。話は理解しました。ただ、少し話し合う時間をくれないかな? 内容が内容だから、私達だけで決めるわけにはいかなくて」

「ええ、それで問題ないわ。良い返事を期待しても?」

「もちろん」


 フェリス様は不敵に笑い。

 ブリジット王女も笑顔を見せる。


 まだ協力関係を結んだわけではないのだけど……

 この二人、気が合うのかもしれない。

 すでに仲が良さそうだ。


「あなたも、握手をいいかしら?」


 ふと、フェリス様がこちらを見た。


「ええ、もちろんです」

「よろしくね」


 フェリス様と握手を交わして……


「ふふ♪」


 なぜか、じーっと見つめられてしまう。

 なんだろう?


◆◇◆ お知らせ ◆◇◆

短編を二つ、書いてみました。


『婚約破棄代行ブッタギル ※会社名です』

https://ncode.syosetu.com/n7374ki/


『唸れ聖女の鉄拳!~異世界を救った聖女ですが、日本に戻ったらゾンビがあふれる世界になっていました~』

https://ncode.syosetu.com/n7371ki/


こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇◆◇ 新作はじめました ◇◆◇
『追放された回復役、なぜか最前線で拳を振るいます』

――口の悪さで追放されたヒーラー。
でも実は、拳ひとつで魔物を吹き飛ばす最強だった!?

ざまぁ・スカッと・無双好きの方にオススメです!

https://ncode.syosetu.com/n8290ko/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ