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262話 未来の女王

「あたしは、フェリス・エルネスト・アカネイア。現状、同盟国を束ねている立場にあるわ」


 彼女の挨拶を耳にして、俺は、疑問は表情に出さず、内心で、はて? と首を傾げた。


 アカネイア同盟国は、現在、とても特殊な形の『国』となっている。


 元々は、帝国に属していた複数の国家で形勢されている。


 『帝国』という存在が崩壊して……

 新しい国となるはずのところ、また帝国と同じような道を歩くわけにはいかないと、まずは、同盟を結ぶ国同士が結束した。

 故に、同盟国。

 今までにない形態の国が発足された、というわけだ。


 共和国と似ている。


 なので、現状、王のように国を束ねる者は存在しないはずなのだけど……


「これは秘密なのだけど」


 俺達の疑問を感じたらしく、フェリス様は苦笑した。


「もう少ししたら、アカネイア同盟国はなくなるわ」

「「えっ」」


 ブリジット王女とシロ王女の驚きの声。

 下手をしたら、俺も声をあげていた。


 それほどまでに衝撃的な話だ。


「同盟国、なんて本来はない形態で国を動かしていくなんて、無茶な話だと思わない?」

「それは……そうですね」


 ブリジット王女が頷いた。


「同盟国と名乗っていたのは、とにかく、帝国の影を払拭するため。私達は生まれ変わりました、っていう周辺国にアピールするため。まあ、それなら共和国でもよかったんだけど……今まで、帝国が全ての舵取りをしてきた。それに慣れちゃっているせいか、自分の手で国を動かすっていうのが、なかなか」

「なるほど……うん、そういうことか」

「お姉様、わかったの?」

「まあ……ちょっと世知辛い事情だから、すぐに理解はしたくなかったけどね」


 ブリジット王女の隣に椅子を持ってきて、ちょこんと座るシロ王女は不思議そうにした。


 ブリジット王女の苦笑の意味は俺も理解した。


 要するに……

 『帝国』が解体されて共和国になろうとした時、それを拒む……あるいは、戸惑う人が出てきたのだろう。


 望んでいたものではないとはいえ、今まで、全てを帝国が動かしてきた。

 それなのに、いきなり一人で動くことは難しい……と。


 故に、上に立つ者が求められたようだ。


 帝国の支配から抜け出すことを目的としていたのだけど。

 結局のところ、誰かの下につく。

 今までの行動の意味を考えてしまいそうになる。


 とはいえ、フェリス様が暴君として君臨することはできない。

 舵取りは彼女に任されているものの、いざという時は弾劾することが可能というシステムが組み込まれている。

 他にも、帝国と同じ道を辿らないようなセーフティシステムが構築されているらしい。


「で……そうやって同盟国を続けてきたんだけど、やっぱり、今までにない形態だから、ちょっと曖昧なところが多いでしょう? だから、近々、同盟国をやめて普通の国になるつもり」

「けっこう、思い切った決断ですね」

「まあ、色々と……ね」


 ブリジット王女の感想に、フェリス様は苦笑で返した。

 口には出せない、色々なことがあったのだろう。


「まあ、まだ決定したわけじゃないから、土壇場で覆る可能性はあるけどね」

「……その覆る可能性っていうところに、先日起きた問題が絡んでくる?」

「正解♪」


 ブリジット王女の推理に、フェリス様はどこか嬉しそうに頷いた。


 すぐに話を理解してくれたことを喜んでいるのか。

 すぐにその話に移りたかったのか。


「ちょっと、厄介な……すごく厄介な問題が起きていて。それをなんとかしたいんだけど、うちは、ちょっと……かなり人手不足で。そこで」


 フェリス様がこちらを見た。


「先の革命で、大きな貢献をしてくれたフラウハイム王国と、そこに所属する執事さんの力を借りたいな、ってね」

「自分……ですか?」

「ライラから聞いているわ。とても優秀で、先の革命も、あなたがいなければ成し遂げられなかっただろう、って」


 余計なことを。

 あと、誇張がすぎる。


 ライラ様をこっそりと睨むものの、笑顔でスルーされてしまう。

 強い。


「と、いうわけで……」


 フェリス様は、にっこりと手を差し出してきた。


「あなたの名前は?」

「……アルム・アステニアと申します」

「アルムね……いい名前だわ。よろしくね、アルム」


 笑顔で挨拶をされて。


「むぅ……」


 一方で、ブリジット王女は、少し面白くなさそうな様子で頬を膨らませていた。


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