261話 動乱の兆候
「先日、アカネイア同盟国から、ちょっとした情報がもたらされたんだ」
ブリジット王女の話によると……
フラウハイム王国と、帝国改め、アカネイア同盟国は順調に交流を重ねていた。
かつては敵対国として色々とあったものの……
今では、サンライズ王国に次ぐ友好国として共に歩みを進めている。
そんな中、アカネイア同盟国でとある事件が起きたという。
「最近、アカネイア同盟国内で不穏な動きがあるらしいの」
「不穏な動きですか?」
「お姉様、それは悪い人? それとも、もっともっと悪い人?」
たぶん、シロ王女は盗賊の類なのか。
それとも、かつてのリシテアのような存在なのか。
そういうラインを聞いているのだろう。
「うーん……断言はできないんだけど、もしかしたら、もっともっと悪い人かもしれないかな」
「それは……」
思っていた以上に大変な話なのかもしれない。
自然と気が引き締まる。
「暴走していた帝国は消えて、同盟国として生まれ変わった。でも、帝国派の全てを捕まえたわけじゃなくて、まだまだ残党が残っているの。その人達は帝国を蘇らせようとしていて……」
「……もしかして、クーデターを企んでいる?」
「そこまではまだわからないけど、それに近いことは起きるかもしれない」
さらなる説明を聞くと……
先日、アカネイア同盟国の軍事施設が襲撃を受けたらしい。
といっても、砦が落とされたとか、そういうことではなくて……
保管されていた軍事物資が奪われてしまったという。
「その軍事物資の内容は?」
「ごめん。そこはまだ、教えてもらっていないんだ。ただ、話を聞いた感じからすると、けっこう大変なものらしいけど……」
「ふむ」
「アカネイア同盟国で、これから、なにか大きな問題、事件が起きるかもしれない。今は友好国だから、なにか起きた場合は放っておけないし……それに、フラウハイムもターゲットにされるかもしれない」
帝国が崩壊したことに、フラウハイム王国はある程度関わっている。
それを逆恨みされているかもしれない、ということか。
「予測だけど、これから色々な問題が起きるかもしれないの。だから、二人には色々と心構えというか、いざという時のために備えておいてほしくて」
「はい、わかりました」
「うん! シロ、お姉様のためにがんばるよー!」
「ふふ。ありがとう、シロちゃん。シロちゃんが手伝ってくれたら百人力だよ」
「えへへー♪」
ブリジット王女に頭を撫でられて、シロ王女は猫のように嬉しそうにした。
まだ幼いものの、シロ王女は賢い。
それに、彼女が開発する発明品も優れている。
なにか起きた時、大きな力となるだろう。
「アルム君も、よろしくね」
「はい、もちろんです」
俺は、俺にできることを常に全力でするだけだ。
ブリジット王女を支える。
それは、恋人だからという理由ではなくて……
彼女こそが俺の仕えるべき主なのだから。
なにが起きたとしても、守り、戦い抜いてみせる。
そう決意を固くした。
そして……
数日後。
アカネイア同盟国の騎士、リセ・エンゲージがフラウハイム王国にやってきた。
――――――――――
「お久しぶりであります」
ブリジット王女の執務室にリセを迎えて……
彼女は敬礼をした後、笑顔を見せてくれた。
それと、もう一人。
「久しぶりね」
ライラ・アルフィネス・ベルグラード。
継承権は持たないものの、元帝国皇族の血を引いていて……
そのような立場でありながら、国の未来を憂い、国を変えるために革命を起こした人だ。
……そして、もう一人。
「はじめまして」
歳は、ブリジット王女と同じくらいだろうか?
とても優雅な仕草で、完成された挨拶をしてみせる。
「あたしは、フェリス・エルネスト・アカネイア。現状、同盟国を束ねている立場にあるわ」
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